社会の時間に覚えたコモンセンスbyトマス・ペイン。内容はよく知らない。丸暗記しただけです。本屋で完全版というのを見つけて読んでみました。
1776年7月4日アメリカは独立します。その契機になった一冊。歴史を動かした一冊です。当時アメリカはイギリスの植民地でした。重税を課せられたりして不満が募ってた。だけど1776年1月の段階でも、独立を積極的に主張するアメリカ人は少数派でした。イギリスに不満はある。けれど戦争に訴えてでも独立をめざすのは行き過ぎではないか。
「コモンセンス」はこの状況を一変させました。イギリスの圧政を糾弾、断固とした口調で独立を叫んだ同書は、刊行されたとたんベストセラーになり、新大陸の世論を戦争支持へまとめあげます。当時アメリカの人口は250万人。50万部売れたという説もあり、発行部数と人口の比率で計算する限り、「コモンセンス」以上に売れた本はアメリカの歴史に存在しないと言われています。聖書は例外です。
「本書の著者が誰かは、読者にとってまったく知る必要のない事柄に属する。注目されるべきは、ここに盛り込まれた主張であり、書いた人物ではない」本書でそう言い切るトマス・ペインは、印税を創設されたばかりのアメリカ軍に全額寄付します。別に資産家というわけではなく、晩年はいろいろと不遇でした。
本書には2つの特徴があります。1つは文体がポップ。超訳というか現代語訳です。SPAか週刊プレーボーイの記事を読んでるような感覚で、古典が読めます。
2つ目は憲法9条とのからみです。コモンセンスといえば岩波文庫版。これには「クエーカーのパンフレットに対する反論」が収録されていません。英語版ではほぼすべてのコモンセンスのバージョンに収められています。岩波文庫の訳者小松氏はあえて省いている。※クエーカー:平和主義を厳格に守る宗教団体。
なぜか?トマスペインは「クエーカーのパンフレットに対する反論」で、憲法9条的な思想を徹底的に批判しているからです。これが翻訳者の小松には都合が悪かった。理由は本書にて。
で、今回の完全版には省いている部分が追記されています。これまで読めなかった部分が読めます。
目次
コモンセンス各章の要約
1章:政府はなぜ、何のために生まれたか?
安全の確保。これこそ政府が生まれた根本的な理由であり、政府が達成すべき根本的な目標だ。望ましい政府は、安全をちゃんと保障し、人々にかける負担が最も少なく、提供できる福利が最も多い政府。
2章:王権や世襲制を批判する
王政と世襲支配は、いつでも流血と破壊をもたらしてきた。歴史や聖書からの引用などで、王に価値はないし、ましてや世襲などもっての外と言い切る。
3章:アメリカをめぐる情勢について
イギリスの横暴や、島国が大陸を支配するナンセンスを説く。ここまで来たら和解は不可能で戦うべきだと徹底的にアジる。
「イギリスと和解したがるのは、目先のことしか考えないご都合主義。問題は必ず再燃し、より悲劇的な事態が生じる。ひどい仕打ちをした相手をあえて許すのが人の道だ、そう言い張るものに聞きたい。君は家を焼かれたことがあるか?目の前で財産を破壊されたことがあるか?妻や子供を助けてやれなかったことは?親や子をイギリス人に殺されたあげく、自分もあらゆるものを奪われ、生き残りこそしたが、絶望の淵に立たされたことは?
アメリカ人の中には、こういう経験をしたものがいるのだ。そんな目にあったこともなく、安穏と暮らしてきた者が、彼らの怒りや憎しみについて何を意見するというのか。逆に君が、これらの仕打ちを受けて、なおイギリス人の人殺したちと握手できるとしよう。君に夫と呼ばれる資格はない。父と呼ばれる資格も、友と呼ばれる資格も、最愛の人と呼ばれる資格もない。地位や肩書など知ったことか。君は骨の髄まで卑怯者であり、太鼓持ち以外は何も務まらないロクデナシである」
4章:我々には独立する力がある
イギリスの軍事力との比較で、アメリカ優位を説く。またタイミングについて以下のように述べる。「植民地のどの州も、自力で独立を果たすのは無理だ。だが13州が連帯すれば、偉業達成は可能だ。これぞ潮時と言える。国力が現在のレベルに達する前に独立を試みても、イギリスには勝てない。現在のレベルを上回ったあとで独立を試みるのは、主導権をめぐる内紛が生じかねない。植民地諸州が連帯の必要性を感じなくなるからだ。いつ独立する?今でしょ」
5章:あらためて独立反対論を排す、クエーカーのパンフレットに対する反論
武器を取ることがあらゆる罪の根源?アホか。アメリカは平和のために戦う。相手が武器を持って攻めてきている。こちらだけ非武装無抵抗だとどうなるのか。イギリスに行って同じことを言ってこい。
隷従は戦争よりも恐ろしい
いかなる物理的破壊よりも恐るべきは、隷従に甘んじることが人間の精神に及ぼす破壊的影響だ。戦争の惨禍は一時的なものだ。ひきかえ隷従に甘んじることの影響は、社会のあり方の隅々に及ぶうえ、末代まで根深く残る。
政治家の腕の見せどころ
政治家の腕の見せどころは、幸福と自由の調和を実現させることに尽きる。できるかぎり多くの人間が、幸せに生きられる世の中をつくるのだ。それもできるかぎり少ないコストで。そんな政府のあり方を考案できた者は、賞賛と感謝を浴びつつ、歴史に名を残すだろう。 by1765年 ジャシント・ドラゴネッティ
八紘一宇とは
太平洋戦争に際し、日本は八紘一宇という目標を掲げた。八紘とは天下の四方と四隅、つまり全世界のことであり、一宇は同じ屋根の下にまとめることを意味する。すなわち日本が、「人類全体のための世界国家」になるということなのだ。
絶対王政の見るべき点
絶対王政は、人間性を冒涜するものに違いないとしても、見るべき点を1つ持っている。政府のあり方として単純なのだ。専制のもとで苦しむ人にとって、苦難の元凶が何かハッキリしているし、対処の方法も自明である。
モンロー主義
トマス・ペインをフランスの監獄から救ったジェームズ・モンローもアメリカ大統領となったあとは、ヨーロッパとの相互不干渉を骨子とする「モンロー主義」を提唱した。
⇒モンロー主義の語源は、ジェームズ・モンローだったのか。知らなかった。
ジェームズ・ブラウンでLiving in America ♪
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