【世界を変えた10冊の本・池上彰】あらすじ

素晴らしい一冊。歴史的名著10冊が、池上氏のわかりやすい要約で読めます。

どうせたくさん本を読んでも、1ヶ月後には内容を忘れています。1週間前に見たテレビの内容を、ほとんど忘れてるのと同じように。

ということは醍醐味だけを提示してもらえば、大幅な時間の節約になります。とくに超訳系は、理解するという苦行のような時間を取り除いてくれます。(苦行がいいのかもしれませんが…)

この本を手元において、繰り返しよめば世界の動きの背景が見通せます。三大宗教、進化論と宗教、大きな政府と小さな政府の対比、予言者マルクスetc.

むかし読んだことのある人にも池上解説は見ものです。自読したときに見えなかったものが見えるかもしれません。

この1~2年で、佐藤優、内田樹、宮崎哲弥などの書評本を読みましたが、本著がピカイチです。他の選者は、どうしても自我が強すぎます。池上氏は自分を押しころして、読む人にひたすらわかりやすく本のことのみを語りかけます。

オレがオレがの経験談がないということは、これほどまでに爽快なことなのか。ぼくも気をつけたいです。なかなか難しいですけど…。

この本で紹介されてる本は以下の10冊。260p程なので平均26p/冊です。完璧な要約をさらに要約するのは困難なので、図書館で一読されることをお薦めします。



アンネの日記:アンネフランク 1947年オランダ

「弱いものは狙われます。けれども強いものは生き残り、決して負けることはないのです」

・一人の少女の日記が、国際社会を動かした。中東問題の行方に影響力を持つ
・ユダヤ人虐殺の象徴として、この本があるから世界はイスラエルにモノを言えない
・アラブ諸国ではあまり知られてない
・日記の一部が父親に削除されて出版(母親との葛藤や性的な部分)
・親愛なるキティーと呼ばれた日記帳

聖書

「罪が赦されるように、多くの人のために流されるわたしの血、契約の血」

・欧米文化の基礎を築いた
・聖書には新約と旧約の2種類がある。旧約はユダヤ教徒の聖典。
・旧約は全39巻。アダムとイブの創世記を含むモーセ五書、文学書、歴史書、預言書など
・新約は全27巻。大別して5つ。4つの福音書、使途言行録、パウロの手紙、公開書簡、ヨハネの黙示録。4つの福音書はマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ
・その他の福音書は、ペテロ、トマス、ユダがある。

コーラン

「汝らに戦いを挑むものがあれば、アッラーの道において堂々とこれを迎え撃つがよい。だがこちらから不義をしかけてはならぬ。アッラーは不義なす者どもをお好きにならぬ」

・穏やかな経典だが過激派も生んだ
・3つの一神教の神は同じ
・新約、旧約にコーランを加え大事な経典としたが、コーランが一番大事とした。モーセ、ノア、イエスなどの預言者によっても人間は神の言いつけを守らない。最後のチャンスがムハマンドへの預言との位置づけ(予言者じゃなくて神の言葉の預言者)
・イスラムでもヨハネの黙示録のように、やがて世界の終わりが来ると信じられている
・コーランは利子を取ることを禁じているので、独自手法のイスラム金融が生まれた

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神:マックスウェーバー 1905年ドイツ

「労働者は労働を神が望まれた生活の目的と考えて、熱心に働くのだった」

・社会学の分野の通称「プロ倫」
・宗教と経済の意外な関係を分析
・プロテスタントの国で資本主義が発達した
・厳しい禁欲を守るプロテスタントこそが、職業倫理を守ることで資本主義経済で成功する
・カトリックは現世で善行をつめば天国にいける
・プロテスタントのカルヴァン派は、人間は神のために存在するので、運命が決まっていて(予定説)、現世で善行をつんでも天国にいける保証がない
・自分が神から選ばれた存在であるとの確証をえるために、必死で仕事する
・ただアメリカにわたると、宗教色がうすれてスポーツのようになった

資本論:カールマルクス 1867年イギリス(ドイツ語)

「資本制的私的所有の終わりを告げる鐘が鳴る。収奪者たちの私的財産が収奪される」

・経済格差、金融危機を予測していた
・人間の労働があらゆる富の源泉であるという「労働価値説」
・商品には使用価値(使って便利)と交換価値(りんごとみかんの交換)がある
・交換価値は労働価値(労働時間)で測られる
・商品から貨幣が生まれ、貨幣が資本になる
・労働力も商品だ。資本家が労働力を労働者から買う(雇う)
・労働者は搾取される(給料以上に価値あるものを作る、その部分を搾取)
・資本主義社会は商品価格を安くして労働力を安くする(ユニクロ、牛丼で生活費を安くし、給料を切り下げることが可能になる)
・資本主義が発展すると資本が蓄積され格差社会に
・かくして資本主義は崩壊する。冒頭のマルクスの言葉



イスラム原理主義の「道しるべ」:サイイドクトゥップ 1964年エジプト

「イスラムが全人類を導く役割を果たすためには、イスラム共同体が原初の形でよみがえらなければならない」

・オサマビンラディンの教本
・原理主義のジハードは防衛だけではない。世界をイスラムで統一するまで続く。

沈黙の春:レイチェルカーソン 1962年アメリカ

「私たちはだまされているのだ。その行きつく先は禍であり破滅だ」

・世界が環境問題に取り組むきっかけに
・農薬が人体や自然環境に及ぼす悪影響を訴え、これ以降世界は農薬の使用を再考した

種の起源:チャールズダーウィン 1859年イギリス

「われわれの知識は浅いのに、思い込みだけは、はなはだしい」

・ガラパゴスの生物たちがインスピレーション
・キリスト教社会の根底を揺るがした
・神がすべての生物を創造した、に対して生き物は進化した、は受け入れられない
・劣った生き物は淘汰されるというのを人間にもあてはめ、ナチスが実践
・父親は裕福な開業医で、母親は有名な製陶会社ウェッジウッドの創業者の娘。
・USAに多いキリスト教原理主義者は「神の設計図に従い生き物は進化している」「インテリジェントデザイン」説を進化論と同時間教育すべきという運動が根強い。もっと古い創造説を教えるべきとする家庭は100万世帯ほど。

雇用、利子および貨幣の一般理論:ジョンMケインズ 1936年イギリス

「われわれが生活している経済社会の際立った欠陥は、それが完全雇用を与えることができないこと、そして富と所得の分配が恣意的で不公平なこと」

・経済不況を救う処方箋となった。大きな政府。デフレ時の経済政策に有効
・経済学者では珍しく自身も金儲けで成功した。ロシアの美貌のバレリーナに恋したため
・ケインズに確立された乗数効果を管首相は知らなかった
・株式市場を美人コンテストに例えた(自分の好みでなくみんなが美人と思う人に投票)
・累進課税で所得の低い層にカネをまわす、そこは貯蓄率が低いので消費が拡大する

資本主義と自由:ミルトンフリードマン 1962年アメリカ

「政府の仕事は、個人の自由を国外の敵や同国民による侵害から守ることに限るべきだ」

・異端から常識となった自由至上主義。小さな政府。インフレ時の経済政策に有効
・シカゴ大学の教授になり、以降シカゴ学派は自由主義の指導者的役割をになう
・景気対策には通貨供給の重視(マネタリズム)
・為替の変動相場制をニクソンショックの21年前の1950年に提唱
・学校選択の自由を提言(教育クーポンで選択を自由に)
・累進課税に反対。毎年の所得にかかるので既に財産をもってる裕福な人には関係ない
・年金事業にも反対
・政府の権力は州や市に分散されるべき
・ボストンのティーパーティ(小さな政府を求める)の思想。植民地時代のアメリカがイギリスの重税に怒り、ボストン湾の船舶に忍び込み、輸入された紅茶をボストン湾に投げ込み、茶会としゃれこんだ故事にならう

ボストンでパーティ♪

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