菅沼光弘氏の地政学本。
面白かったので3点のメモを箇条書きで残します。
菅沼氏は1959年東大法学部卒、公安調査庁入庁。ドイツ連邦情報局に派遣、帰国後は対外情報活動を中心に、ソ連、朝鮮、中国の情報収集。対外情報の総責任者を最後に95年に退官。現在は評論家活動など。
本書の前書きには「この本で私は決して陰謀論的な議論を展開しません」とあり、いわゆる事実が淡々と書かれています
統一教会とは何か?まとめ
・1954年5月、文鮮明が韓国で「統一教会」設立。1959年には「日本統一教会」設立。
・当時は朝鮮戦争で大変。韓国が北朝鮮に飲み込まれて共産党の国になってしまう。米国はこれを阻止したい。
・李承晩は主権を放棄して指揮権を米軍に譲渡。米軍が韓国の主権を持っていて、宗主国であるアメリカがなんとか援助しないといけなかった。
・アメリカ自身も朝鮮戦争でものすごい出費をしてる。お金がない。今のウクライナと同じような状況。
・その時アメリカが目をつけたのが日本。韓国民の怒りの矛先を米国から日本に向けさせた。朝鮮戦争特需で日本は儲かっていると。
・アメリカはキリスト教を韓国に推奨。あらゆる宗派の宣教師を韓国に送り込む。儒教の国からキリスト教の国ができた。その1つとして統一教会ができた。
・1963年パクチョンヒ(朴正煕)大統領。彼は様々な形で文鮮明の動きを支援した。
・文鮮明のナンバー2にパクポヒという人がいた。彼は韓国のアメリカ駐在武官。パクチョンヒ大統領は彼を呼び戻して統一教会に入れ、パクポヒを中心に対米政治工作をさせた。
・彼らの考え方。まず統一教会の日本信者から金を奪う。これはアメリカの意向でもあった。日本から取った金を韓国で運用するだけでなく、アメリカにものすごく貢いだ。
・今でもアメリカの名のある国会議員、大統領候補、トランプも含めてほとんどみんな統一教会の手先。
・直近は年間200億円に減っているが(フィナンシャルタイムスによる)、毎年600億円のお金が日本の統一教会から韓国に貢がれた。そのお金は主として韓国政権とKCIAを通してアメリカに還流した。
・統一教会からアメリカに流れたお金は経済上の収支のお金ではない。濡れ手に粟のカネ。共和党を中心とするアメリカの政財界、あらゆるところに浸透した。
・統一教会はアメリカで「ワシントンタイムズ」という新聞まで作った。かつてレーガンは「わたしはワシントンタイムズしか読まない」と言ったことがある。これは一種のペンタゴンの機関誌みたいになっている。
・ペンタゴンはこの新聞を使って軍事情報を外にリークする。
・文鮮明いわく「韓国はアダムで日本はイブである」。アダムを堕落させたイブがアダムに貢ぐのは当然だと。
・「勝共連合」というのは文鮮明が1968年に設立した。日本にもすぐに同じ組織ができた。久保木修己を会長に笹川良一など右派の有名人が顧問になった。ここに岸信介元首相がしばしば顔を出した。
・勝共とはいうまでもなく「共産主義に勝つ」ということ。
・朝鮮戦争の経験が大きい。アメリカを中心とした西側が「反共」で結束して戦った。それに岸信介は目をつけた。
・その背景は日本の60年安保。いわゆる反米運動。日米安保は条文を読めば日本に有利。反対するようなものではない。しかし米国憎しで日本全国で「岸を倒せ」の大合唱となった。
・これは日本も大変な状況だとアメリカも思った。勝共連合を日本に入れて日本を反共国家にしなければいけないと。
・アメリカでの人脈紹介にも統一教会は役に立つ。岸信介-安倍総理もそうだが、もっと関係が深かったのが中曽根康弘。統一教会のさまざまな集会で講演をしていた。
・日本の保守派の人は、新聞記者も含めてみんな何かで統一教会と関わり合いがある。お金をもらっているかどうかは別として。
・統一教会のことはアメリカがバックアップしている。アメリカは日本の防衛費をGDP2%にして日本からお金を出さそうと圧力をかけている。
・それと同じように統一教会への献金という形で、日本のお金をどんどん韓国につぎ込ませる。そして韓国の安全を守る。これがアメリカの政策。その隠れ蓑として教会を利用している。韓国をキリスト教の国にするというのもアメリカの政策。
・統一教会の悪徳商法。なぜ規制できないのか?憲法20条「信教の自由」のせいだ。これは国家神道が日本を支配する、それをやめさせるための規定。この憲法のせいで、宗教団体が何をやっても国家権力は何も規制できない。
・明治憲法にも「信教の自由」はあった。しかし「公共の福祉に反するものはダメ」という縛りがあった。これが戦後日本国憲法によって全く自由になってしまった。
・統一教会の様々な事業。一番力をいれているのは兵器産業。韓国は新しい兵器をどんどんつくり、外国に輸出している。最近はポーランドにものすごく売っている。K2戦車、K2自走砲、FA50軽攻撃機など、統一産業が生産しているのは迫撃砲以下の小火器だがこれもどんどん輸出している。
・統一教会が世界展開している事業スケールは大きい。
・いま日本の統一教会が一番力をいれているのは日韓トンネル。
・統一教会の水産業。ジブラルタル海峡にマグロを始めとする魚の広大な養殖場をつくり、そこで育てた魚を日本の豊洲市場の状況をみながら出荷する。
・マグロ、カツオなどの遠洋漁業。世界中に安く売りさばいている。この漁船にのっているのは統一教会の信者たち。相当きつい仕事。これに耐えられるのは日本の統一教会信者しかいないという。これらは日本の統一教会の大きな収入となっている。
・ニューヨークやカナダの寿司屋のネタはみんな統一教会系の卸業者が扱った魚。北大西洋産マグロといっても統一教会のマグロだ。
・統一教会はブラジルに広大な農場を持っている。そこへ放り込まれて何年も修行している日本の統一教会信者がたくさんいる。
・いま日本で統一教会に入信すると何をさせられるか?ブラジルに送られるかマグロ漁船に乗せられるかというケースが多い。もちろん男性だけ。
・合同結婚式とは何か?基本的には日本女性と韓国人男性を結婚させる。文鮮明の教義の根本的な考えに、韓国はアダムで日本はイブだという考えがある。イブはアダムに仕える。
・むかしは韓国の田舎の結婚できない男性に、統一教会が日本女性をあてがった。韓国の田舎の農民の多くが統一教会に入った。
・日本の統一教会の幹部の男性はみんな日本国籍の男性。能力的にも優秀な人が多い。彼らは世界中あちこちへ行って活動している。統一教会がやってる活動で、商売の肝心要なところは、ほとんどすべて日本人がやっている。韓国人の名目でやっている商売でもそう。
・韓国では平和自動車は韓国人が経営していることになっているが、実質的には日本人が経営している。そういう状況。
なぜアメリカは日朝関係が良くなるのを嫌うのか?
・朝鮮半島が日本の経済圏に入る可能性があり、そうなると戦前と同じように日本が海外に大きな権益を持つことになるから。
・戦前、日本は朝鮮銀行という銀行を持っていた。朝鮮銀行は発券銀行だった。また国債も発行していた。
・日中戦争をなぜ何年も継続できたか?戦争を続ければ確実にインフレになる。しかし当時の日本はまったく物価が上がっていない。これは朝鮮銀行が国債を発行して吸収していたから。
・南方の作戦は台湾銀行のお金でやっていた。
・大陸に進出するにはカネがかかる。そのお金をどこでつくるか?発券銀行である朝鮮銀行、台湾銀行でつくる。最盛期、朝鮮銀行の支店は南は南京、北はシベリアにまであった。
・アメリカにはディープステイトがある。構成してるのは軍産複合体、国際金融資本、グローバル企業。国際金融資本は表向きはウォールストリートだけどその背後はロンドンのシティ。
・アメリカを動かしている軍産複合体を儲けさせるために戦争を起こさせ、国際金融資本は世界中の金融を統制支配し、グローバル企業(メディアを支配する巨大IT企業)が、ディープステイトの中心にいる。バイデンは単に装置の上で動いているだけ。
・今度のウクライナ戦争はなかなか終わらない。みんなこの戦争をやめたい。やめさせないのはイギリスとアメリカ。
ウクライナ問題の真実
・根底にあるのはブレジンスキー(2017年没)の世界戦略。いまの国務省その他はみんなブレジンスキーの弟子たちばかり。
・ブレジンスキーのロシアに対する見解。「神はロシアに対して非常に不平等な富を与えた」
・ロシアは食料を自給できる。エネルギーもある、希少金属もある。こんな不平等なことはない。だから我々はこの国を3分割しよう。1つは欧州ロシア、1つはシベリア、もう1つは極東ロシア。これが我々の基本戦略だ。とブレジンスキーは書いている。
・今回ブレジンスキーの意を受けたネオコンがウクライナ侵攻の理論的な基礎をつくった。
・ネオコンの人たちはもともとトロツキストと呼ばれた。ロシア革命のときのトロツキーらユダヤ人左翼の仲間だった人たち。
・それまでロシアもユダヤ人を徹底的にいじめていた。いまのウクライナ人とロシア人はユダヤ人をいじめまくった。その答えがロシア革命だった。
・レーニン、トロツキーはロシアという帝政国家をぶっ壊してしまった。しかしその後スターリンとの間で革命路線の違いで対立が生じる。
・スターリンは一国社会主義、トロツキーは永続革命。結局トロツキーは同志と共にメキシコに逃げた。
・しかしスターリンはメキシコまで刺客を送ってトロツキーを殺した。残ったトロツキーの同志たちはアメリカに亡命した。
・このトロツキーのかつての同志たちがアメリカの民主党に入った。
・この民主党に入ったトロツキストたちにとって、一国社会主義のソ連は敵だった。ところがケネディ(この人も民主党)が、ソ連と平和共存を始めたので民主党を離れて、共和党に移っっていった。
・今日この人たちは何を考えているのか?「自由と民主主義と共通の価値観、これで世界政府をつくろう」という考え。
・これをまさに実現しようとして、ネオコンの人たちはウクライナで戦争をしている。それはプーチンをぶっ潰せ、ということ。
・プーチンは「新ユーラシア主義」。ロシアの民族主義とか、ロシア帝国の復活とかに強いこだわりがある。
・こういう民族とか国家という存在が、ユダヤ人の迫害をもたらした。なぜならユダヤ人には国家がなかったから。もちろんイスラエルはできたがこんな小さな国では話にならない。
・世界に統一政府をつくって国家をすべて消滅させる。その手始めにプーチンを打倒しよう。
・これがウクライナ戦争を遂行しているネオコンの人たちの理論的なバックボーン。
・ブレジンスキーはソ連解体後もさまざまな策略を練った。東欧諸国の分離独立など。
・ブレジンスキーはポーランドの貴族だった。じつは彼の家の領地はいまのウクライナにあった。だからウクライナに対してはものすごく思い入れが強い。
・2014年のウクライナ政府(親ロ派)と反政府派の協定、ぶっつぶしたのはオバマ政権国務次官補のヴィクトリア・ヌーランド。この女性はユダヤ人。
・ウクライナという国はゴルダ・メイアなど歴代のイスラエル首相を輩出した国。ウクライナにはかつてものすごく多くのユダヤ人が住んでいた。その人たちが第二次大戦後イスラエルに帰って政界に出たりした。なのでウクライナとイスラエルの間にはものすごく深い政治的、経済的関係がある。
・もちろんユダヤ人ルートを通じて、ウクライナとアメリカのつながりも強い。
・このヴィクトリア・ヌーランドは現在「国務次官」に出世している。このヌーランドがユダヤコネクションをいろいろ画策して、ロシアに先に手を出させるよう仕向けた。
お姉さんが熱心な信者でその影響で入信したようです。
サンタモニカの風、追いかけてヨコハマ、わたしの青い鳥♪ ヒット曲満載やね。
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