【北朝鮮 核の資金源 国連捜査秘録】書評と要約

著者はじめての単著本。国連安保理・北朝鮮制裁委員会・専門家パネル元委員。

2011年から2016年の5年間、著者は国連安保理の「専門家パネル」で働く。北朝鮮情勢が緊迫化する中で、最前線で捜査や情報収集を行っていました。

専門家パネルは、国連の中でどこにも属さない組織。専門家は事務総長から任命され、独立した立場から制裁違反事件の捜査を行う。

そして捜査に基づき、制裁対象に加えるべき団体や個人、並びに制裁強化策について、安保理や北朝鮮制裁委員会、国連加盟国に対して勧告する。

同パネルのメンバーは8名。常任理事国から5名、日本と韓国と南半球からそれぞれ1名。

専門家パネルという組織も、そこで働く専門家も、任期は1年。任期の更新には安保理での決議が必要。中国やロシアが反対すればパネルは解散。専門家はお役御免となる。そこには国際政治が色濃く影を落とす。

人間模様が面白いです。中国やロシアはいつも反対。イギリス人は無能。韓国人もサボタージュ。著者は孤軍奮闘し、組織を引っ張り、「安保理の中のベストパネル」として高い評価を受けるようになる。

著者曰く、「プロ」と呼べる人間は3名しかいなかった。まともに仕事する同僚があと1人いたら、北朝鮮の非合法ネットワークをあと2つ潰せていたと。

著者の5年間の仕事録です。463pと分厚い。まるでスパイ小説のようなところもあって、読ませます。身を削り、時には危険な目にあい、必死になって仕事をするさまはかっこいい。

以下に読書メモを。



北朝鮮はどうやって儲けているのか?

基本的に武器ビジネスで儲けている。もちろん密輸で、中国やロシアを始め世界中に協力者がいる。協力者は政治思想というより、カネのために北朝鮮に協力している。

たとえばシリアも北朝鮮の顧客。サリンおよび運搬手段を開発・製造したのは北朝鮮の顧客、シリア科学調査研究センター。

ベトナム海軍やアンゴラも顧客。オーストリアのシュワルツという会社は、北朝鮮の「青松連合」の委託を受け、製品や資機材をアメリカや欧州から調達する。オーストリアからわざわざ中国経由でベトナムとアンゴラに輸送する。制裁網をかいくぐる迂回ルート。

北朝鮮組織の中の「青松連合」。

アンゴラへの輸出は哨戒艇に使用するジャイロコンパスや自動操縦装置など。個々の製品は市販品で禁輸品目リストに該当しないもの。

摘発がむずかしいのは、カネと貨物の動きが違う事こと。
貨物はオーストリア⇒中国⇒アンゴラ。
カネはアンゴラ⇒アメリカ⇒中国。

いかにアメリカが厳しい輸出管理や金融規制を敷いても、欧州や中国に「協力者」がいれば、北朝鮮は規制物資を調達できる。

また中東やアフリカを、北朝鮮の「旧式武器」が席巻している。たとえばコンゴの反政府武装勢力は、北朝鮮製の兵器を使っている。彼らはソ連製のかなり古い兵器を使う。あまりにも古く部品の交換も修理もできない。そこに救いの手を差し伸べたのが北朝鮮。北朝鮮は技術者もセットで輸出する。アフターケアもする。コンゴは氷山の一角。タンザニア、エチオピア、ウガンダ、スーダン・・

⇒そのほかドル偽札、麻薬、友好国への労働者派遣、等も外貨獲得手段。

朝日新聞の妨害

北朝鮮船や組織の捜査を計画する。なぜかいつも日本の報道機関から情報が洩れる。

国連のオフィスは盗聴されているので、重要な情報は慎重に扱っているが、極秘の捜査情報が、朝日新聞から数回、共同通信やNHKからもスクープされる。日本の報道機関が、なぜか国連の極秘捜査予定をスクープする。

北朝鮮は事前に捜査を知ることになり、証拠が隠滅される。何度もそういうことが起きると、仲間からも「情報源」と疑われ、場合によっては、重要情報を教えてもらえなくなる。

⇒もう何ていったらいいか。国連安保理から、朝日新聞スパイ認定(笑)。スパイ防止法に反対するわけだ。NHKや共同通信なんかも、在日朝鮮人が入り込んでるといいますしね。もちろん全部じゃないですが、一部にそういう人たちが混じってる。



抜け穴だらけの制裁強化

北朝鮮の密輸ネットワーク(OMM)壊滅のチャンス。OMMネットワーク。

安保理決議では、制裁対象団体のあらゆる資産の凍結が義務付けられている。いま日本には北朝鮮の「ヒチョン号」がいる。貨物船の資産凍結をすべきだ。

「日本には、船舶を資産凍結するための法律がないんですよ」国連の同僚がアメリカ政府に要請し、ホワイトハウスから日本政府官邸に働きかけてもらった。結局、資産凍結できず貨物船は日本から離れていった。

2017年1月、首相官邸。自民党の山本朋広衆議院議員のアレンジで、安倍政権の主要人物に提言を行った。「北朝鮮制裁強化に必要な措置に関する提言」6ページからなる、貨物検査特別措置法の改正、北朝鮮特定船舶に対する資産凍結措置、科学技術制裁など、ただちに講じるべき8項目の措置をまとめた。

「ちょっと待って。何を言ってるの?日本は安保理決議を完全履行してないの?」政府高官は日本の問題点をまったく知らず、面談時間をオーバーしてもやり取りが続いた。「どうなっているか、まず調べます」その後政府はモリカケ問題に忙殺。進捗はとまる。

3月自民党本部。山谷えり子参議院議員の計らいで対策本部会合で説明機会を得る。自民党議員も「抜け穴」を全然知らず、関係省庁の担当者に語気を強めて質問してくれた。「えー、いろいろ検討してますが、難しいところもございまして」出来ない理由ばかり。

4月アクションプラン検討チームが、著者の提言を元に、「北朝鮮による拉致被害者全員の帰国実現のための提言」を安倍首相に提出。産経新聞が大きく報道してくれた。菅官房長官は関係省庁の担当者を呼び出し厳しく叱責。

6月27日、安倍政権は貨物検査特別措置法の政令改正を閣議決定した。「いかなる貨物」であっても、検査・押収の対象とすることを決めた。

しかしこれでも北朝鮮を「仕出地」「仕向地」とする貨物に限定されたまま。他国が押収してきたような、密輸業者が中国を拠点に海外から製品を調達し、中東やアフリカに輸送する「仲介貨物」は、これまで同様、日本では押収できないのである。

北朝鮮といえばモランボン楽団。Dash to the future♪
みんなかわいくて。彼女たちに罪はありません。いい曲です(笑)。

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