セーラーパンツ、ロイド眼鏡にロングヘア―。
カフェーのシャンなあの子にラブレター。モボを気どって銀ブラしたら、「あの人、モジじゃなくて?」
「日本語に乱れなどない。変化があるだけ」言語学者、金田一先生の言葉だ。本書は大正8年から昭和15年にかけて発行された、新語流行語事典30冊から選ばれた約300の言葉辞典です。
以下に本書から、個人的に印象に残ったものを以下に。
【女学生】
12歳から17歳までが通う、女子の旧制中等教育機関=高等女学校にいる学生。ちなみに1940年の女学生映像はこちら。原節子の妹役、矢口陽子は当時18歳です。矢口はご存知、黒澤明監督の奥さまです。それにしても原節子は美しい。
【もちコース】
女学生の言葉。もちろん、とオフコースを合体させたことば。「一緒に行く?」「もちコース」などと使う。
【イモキ】
妹のこと。姉貴、兄貴があるならイモキがあってもいい。女学生語。
【エス】
女学生間の同性愛人。シスターの頭文字Sより出づ。シスともいう。川端康成の「乙女の港」のようないわゆる「エス小説」と呼ばれる作品などから一大ブームとなった。
【キュッセン】
キスのこと。ドイツ語でküssen。キスのことをいう。学生の間で用いられた。なぜかキスより高尚で美しい気がする。キスは他に「ビル」という言い方もあった。なぜビルなのかといえば唇の略語。
【フリー・バルーン】
自由結婚の意味。当事者の合意だけで結婚できること。民法旧規定では男子30歳、女子25歳以上は自由結婚できた。それまでは父母の同意が必要であった。
【リップガール】
新宿や銀座の裏通りに立ち、キス1回を50銭で売る仕事。
【タッチングガール】
握手50銭、キス50銭などで売る。
【シャン】
ドイツ語のschönから来た美人のことを言う。すこシャン⇒すこぶる美人、すたシャン⇒スタイル美人、にくシャン⇒肉体美人、バックシャン⇒後姿美人などと使う。
【エッチ】
夫のこと。ハズバンドの頭文字をとったもの。あなたの理想のエッチは?などと使う。性的にいやらしい人のことのエッチは1950年ごろから。「白い魔魚」から広まったとされる。その場合のエッチは変態の頭文字。性交の意味で使う「エッチする」は1980年代以降に明石家さんま、島田紳助らが広めたとする説がある。
【ダンゼン】
今でいう、超~とか、ガチみたいな意味。太宰の桜桃にもある。「今日は泊まる。ダンゼン泊まる」
【寄生聴】
寄生虫をもじった言葉で、自分の家には蓄音機やラジオを備えず、隣家のを聴いてそれで間に合わせること。
【漱石文典】
夏目漱石といえば文壇の大家であるが、この大家が書いた文章を見るとでたらめやアテ字が多い。出版者はその煩に耐えないことから漱石文典をつくり、それを基として訂正に従事することになっている。ぼんやり⇒盆槍、ばけつ⇒馬尻など。1917年発売の「夏目漱石全集」の校正のために、林原耕三が何年も前に個人的にまとめたものがベースとなっている。
【ナオミズム】
谷崎潤一郎の小説「痴人の愛」の女主人公「ナオミ」から出たもので、夫を虐待し、酷使することにより快楽を感ずるサディストの一種。
【ツてき】
ツェッペリン飛行船から出た言葉で、厳丈なよく太った女を指す。
Zepオチにしようかと思いましたが、モダンラブで。「フランシス・ハ」の女の子が走るシーンが好きで、ここ数年はカラオケでよく歌ってます。1983年当時はボウイはダサいって思ってたのですが(ボウイファンのみなさますいません)。コロナでカラオケ行けてないなぁ。。
プライムビデオにあります。
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「モダン・ジイ」良いですね。
これくらいバイタリティ溢れた老年層が、これからの日本を支えるキーになるかもしれません(笑)
「ナオミズム」のイラストにグッときました。良い絵です〜(笑)