面白かったですよ。
どう面白いか?「こころ」とか「人間失格」を読んでるような感じ。
小説を読むことで、自分の古傷をえぐられちゃう。恥とか後悔とか。
読んでて心地よいとか胸キュンとか、今回はそういうのはないです。
そのかわりシャブリのミネラル感のような、後味の持続性がある。
あんまり小説の「書評」は書かないんだけど、これっていうのは備忘メモ残してます。
そうじゃないと、2週間前に読んだ小説がなんだったか忘れてしまう。
「AX/伊坂幸太郎」を思い出すのに苦労しました(笑)。2018年本屋大賞5位の作品。
恐妻家で子煩悩の殺し屋が主人公の小説。主人公は○〇されるんですけどね。。
今回は読んで思ったこと3つを以下に。大した話じゃないんですが。
WIKIって「あらすじ」ここまで書くの?
まあ今どきまとめサイトとか、あらすじフルで書いてますけどね。そういう時代なのかもしれませんが、wikiに最後までのあらすじ書くのはちょっとちがうような気がして。
「青くて痛くて脆い」のwikiに書かれたあらすじ、長文ですが引用します。
『大学一年生になって二週目の月曜日。僕は秋好寿乃と出会う。秋好は大学の授業中に子供のような理想論を発表するために周りから敬遠されていた。誰かの意見に反する意見をできるだけ口にしない事を信条としていた僕は秋好を受け入れてしまう。
秋好は痛く青臭く自分の理想を追求していた。そんな秋好が満足するサークルはなかなか見つからない。そんな時僕は不用意に自分でサークルを作ればと発言してしまい、秋好とサークル「モアイ」を設立する。「モアイ」は目立つことが嫌だという僕の意見を取り入れ、こっそりと納得のいくやり方で秘密結社のようなもとして設立された。「モアイ」の名前は目的や用途や定義があいまいということで僕がその時着ていたモアイのTシャツから取った。
大学4年生の時点で秋好との交流はなくなり、僕は「モアイ」から脱退していた。2人の秘密結社のような存在として設立されたモアイだが徐々に規模が大きくなり50人の大所帯のサークルまで成長していた。
秋好が「明日世界が変わるかもしれない」、「明日全員が銃を下す理由があれば、戦争は終わる」など理想に燃えて設立し、小さなボランティアや災害支援の活動をする程度だった「モアイ」は変わり、学生の就職活動支援をメインにするサークルに変貌していた。
僕はあの時秋好が残していたものの先に今があるのだから、結局秋好は嘘をついたなと思う。そして秋好の嘘を本当にするために今の「モアイ」を壊すことを決意する。
僕はバイト友達の薫介とともに「モアイ」のスキャンダルを探り「モアイ」を潰すためにモアイに近づく。その後「モアイ」のスキャンダルをつかみそれをネットに流し、「モアイ」は大学から処分されることとなった。
「モアイ」の部員説明会の日、リーダーのヒロと出会う。「叶えたいものに辿り着くためには努力と手段がいる、時間が立てば変化することは当たり前。変わらないものが偉くて、変わるものが悪いなんてことはあるわけない」と訴えるヒロに対し、僕は「願う力を信じなくなったらそれはもう理想ではない」と否定する。そして、「お前と出会わない方が幸せだった」という言葉を投げつけ、その場をあとにする。
その言葉は秋好を強く傷つけ、説明会で秋好は突然、「モアイ」の解散を宣言する。そして「理想を信じてきたけれど、私は傷つけてきてしまった人のことを無視することはできません」と続ける。その時に僕は突然強い吐気に襲われる。今までの怒りが後悔と恥に変わっていくことを感じていく。
それまで自分が傷つけられたとしか感じていなかった。相手を傷つけたことなど考えていなかった。秋好を記憶にあった形の決まった存在、傷つかない存在だと思っていたことに気づく。そして秋好を傷つけることなんてしたくなかったことに気づき激しく後悔した。
その後、脇坂の力を借り、かつての自分がそうであったように「モアイ」を居場所と感じている人たちのために奔走する。社会人になってから、川原たちが立ち上げた「モアイ」の後継団体の交流会に僕は参加する。その団体は「成長」をテーマにしていた。
学生から「学生時代に成長した出来事を教えてください」と質問され「大事な人を傷つけたこと」と語る。その際視線を上にあげると秋好が目に入った。
休憩時間秋好を探した。秋好はホールから歩きだし、並木道を歩いているところだった。僕はその後ろ姿を追いかけた。僕はあらゆる自分の行動が相手を不快にさせる可能性を感じ、傷つきたくない、怖いと感じる。でも、間違った自分、弱かった自分、それを受け入れられる今の自分、秋好のおかけでそういう自分になれた。それでもやはり自分は変わらないから怖いけれど、無視されてもいい、拒絶されてもいい、その時は「もう一度ちゃんと傷つけ」と思う』
⇒ここまで書くんだったら、秋好とヒロの関係書かないと、意味が分かりにくいと思うけど。
大学生より高校生の話のほうが、なんか入りやすい
「君の膵臓」とか「セカチュー」とか、高校生の恋愛モノのほうが、なんか読後感がいいんですよね。純愛っていうか。高校生の恋愛はピュアです。こっちまで心がキレイになる。
大学生の恋愛は複雑系です。「ナラタージュ」とか「ノルウェーの森」とか。SEX描写も激しかったりする。
とここまで書いて、ふと思い出したのが、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」。あれは大学生の恋愛だった。だけどすごいキレイで読後感がいいんですよね。
やっぱ主人公の設定次第なのか。ふと気になって著者の本書に関するインタビュを読んでみました。
--刊行にあたっての「読んでくださった皆様の心の奥のところを、鋭利な切っ先で突き刺せますように。」というメッセージが印象的でした。
『僕も好きだった本や影響を受けてきた本によって、今でも心に傷跡がついていると感じています。でもその傷跡こそが、人の心に光と影を生むのではないでしょうか。
「青くて痛くて脆い」の中で登場人物たちが学ぶのは、光だけじゃなく影の部分も必要だということ。その影の部分をちゃんと見ることだと思うんです。
今作の打ち合わせ時には、担当さんたちと「自分はこんなふうに傷ついてきた」ということを暴露しあう会をやりました。バーの奥で3人でひそひそ話しているうちに、1人が突然泣き始めて、店員さんからも「なんなんだ、あの団体は」みたいな目で見られて(笑)。この本自体が僕らの自傷行為が詰まっているようなものなので、一緒に傷ついていただきたいと思っています』
う~ん。自傷行為な本だったのかぁ。
自分の欲しいものを手に入れたやつを、嫉妬したり恨んだり。人間のダークサイド。思い出すと「イーッ」てなる話。そこを小説読んで思い出して追体験することを、自傷行為というのかな。古傷とか過去の恥をえぐられるわけだ。読書に快楽を求めてる人は本書は合わないかも。
ちなみに著者については以下。
著者「住野よる」は大阪在住、男性。年齢や経歴は非公開。けっこう若くて、本も年に20冊しか読まないそう。インプットが少なくて済む燃費がいい人みたい。デビュー作の「キミスイ」が200万部売れて、2017年に実写映画、2018年9月にアニメ映画となる。兼業作家だったけど専業になった。
じつは「キミスイ」は何度も応募して賞から落選してた小説。「小説家になろう」という小説投稿サイトで人気が出て、編集者の目に留まり出版された本。双葉社の編集は目利きというか石油を掘り当てたというか。
主人公が、さえない男といい女、という黄金パターン
少年マンガとかに多いですよね。さえない男になぜかキレイな女の子が思いを寄せるという。あだちみつるの「みゆき」とか。男のロマンなのか。
やっぱ世の中は等価交換なので、男は一芸に秀でてないといい女は寄ってこない。なんの取り柄もないけどいい女が寄ってくるのはイケメンだけ。イケメンじゃなくても村上春樹の主人公みたいに、スパゲッティ茹でたりジャズ聴いたり、自分の生活全般をおしゃれにしてる人も、コストがかかってるので「等価」で釣り合うのかも。
住野よるの作品は、「君の膵臓~」も「青くて痛くて~」も、主人公がさえない男です。組織のなかで誰ともコミュニケーションとらない。自分からは積極的に話しかけない。孤独というか自己肯定感が低い人。
住野よるの小説は、なぜか自己肯定感の低い人がモテる。ハイスペックな女がよってくる。そういう話はウケるんでしょうね。男のロマン。
あの青い世界に君をおいてきたことを すごく後悔している♪
いつか絶対に戻ろうとおもう 心地よい青い世界に♪
君が隣にいた 青い場所を取り戻したい♪
素晴らしい 安らぎの入り江を♪
Blue Bayouは直訳すると青い入り江(湖とかの)。リンダの代表曲で、ブルーバイユー♪ 40年近くずーっと、Blue By youだと思ってた(笑)。
懐かしい!あだち充の『みゆき』好きだったなぁ〜!
このブログを読んで10月12日に出版されたばかりの『みゆき 第1巻 兄と妹 (My First WIDE)』をAmazonでポチってしまいましたよ(笑)
第2巻以降は今後発売されるようで、非常に楽しみです!イラストギャラリーとかも付いてます。
ちなみに、私は妹のみゆき派でした・・・