超訳「哲学用語」事典、まとめてみました。

超訳っていいですよね。何言ってるかよ~わからんことを、簡単に理解させてくれて。

ぼくが超訳で重宝したのは、マルクスの資本論でした。むかし「ナニワ金融道」の青木雄二が好きで、彼の本を図書館で全部借りて読んでみたのですが、いつも資本論のことが出てくる。俺は資本論を必死になって読んだんや、とかいってエッセンスをわかりやすく開示してくれる。それとともに読者にも読むことを勧めます。

恥ずかしながら、ぼくも3回は図書館で借りてみてチャレンジしましたが、読めませんでした。そのうちに超訳資本論とかいう新書が出たので、僕の中ではそれを読んで長年の目標は達成したことにしています(笑)

哲学も同じようなもので、今回は哲学や~ということで、図書館の哲学コーナーにある、できるだけ簡単そうな本をドサッと借りてきます。90分でわかるカント、とかです。

これがよく理解できない訳書だったりするので、やっぱり日本人の書いたものじゃないと、よくわからんなと実感します。そういう意味では「超訳ニーチェの言葉」は、そのエッセンスがす~っと入ってくるので、100万部売れたのも納得できます。

本書の著者は京大法出身、伊藤忠、4年間フリーター、市役所を経て、工業専門学校の准教授でプリンストン大の客員研究員の哲学者です。学者出身じゃないのでわかりやすい解説です。

この本によると、哲学用語が難解なのは翻訳のせいだそうです。ドイツ語やフランス語の原語を見ると、ほとんどがもっとわかりやすい普通の単語だと。そもそもこの難解な訳語を主に作り出したのは、明治の思想家、西周で、フィロソフィーを「哲学」と訳したのも彼とのこと。

彼は西洋哲学を日本に紹介した偉大な人物なのですが、いかんせん凝りすぎてわけのわからない言葉が多い。普通は言葉は変わっていくものだけど、日本の哲学会はあまりにも保守的で、そのまま難解な言葉を使ってる。著者はみんなに理解される哲学にするべきだとの信念で、本書を著したようです。文庫本だけど内容は濃いので、購入して手元に置いていてもいい1冊です。

ちなみに下のほうにある、上部構造/下部構造、唯物史観だけでも読まれると、マルクスのエッセンスがよくわかります。

よく目にする、頻出哲学用語

アイロニー:それとなく気づかせること。通常は皮肉と訳されることが多い。

ルサンチマン:負け惜しみ。怨恨や妬みと訳されることが多い。

レゾンデートル:存在理由

レトリック:美しく飾り立てた言葉。実質を伴わないうわべだけの言葉。

メタファー:たとえであることを示さない喩え。隠喩

コンテクスト:話の流れ

カタルシス:スッキリすること。元は浄化や排泄を意味するギリシャ語。

ポストモダン:近代を批判的にとらえる現代思想。近代の矛盾点は貧困や戦争等。

イデオロギー:思想の傾向。

パラダイム:お手本となる型。ある時代や分野において常識とされる物の考え方。

パラドックス:一見もっともらしい矛盾。

コペルニクス的転回:百八十度の発想転換。カントが提唱。

ラディカル:それまでとは根本的に異なる/常識を覆すほど過激な。

ニヒリズム:一切の既成の価値を否定する立場。虚無主義と訳される。

ペシミズム:何でも悪くとらえる態度。ラテン語で最悪のものを意味する。

エゴイズム:自己中心的な発想。

フェティシズム:変なものを愛好すること。

リベラリズム:中立な立場から発想する思想。

全体主義:みな同じ考えをもつことを強要する体制。

カオス:バラバラの状態   コスモス:統一された状態。

自我:自分の意識。西洋ではデカルトが示した概念。

アイデンティティ:自分は何者なのか、わかっていること。

中庸:ほどほど。東洋では儒教の祖孔子が説いた。古代ギリシャでは「メソテース」

理性:論理によって本質を把握するための能力。

主体/客体:行為者/相手



常識として知っておきたい哲学用語

弁証法:第三の道を創造する方法。生産的な思考法として位置づけたのがヘーゲル。

テーゼ/アンチテーゼ/ジンテーゼ:問題提起/問題の発生/問題の克服

アウフヘーベン:矛盾を解決すること。ヘーゲルの弁証法の用語で「止揚」と訳される。

帰納法:個別の事例から一般法則を導く思考法

演繹法:一般法則から個別の答えを導く思考法

トートロジー:同じことを表す語の無意味な繰り返し

レッセフェール:経済を市場に任せる立場。

イデア:理想像。プラトン哲学の中核をなす概念。弟子のアリストテレスによって批判される。

コギト・エルゴ・スム:確かなのは自分の意識だけ。デカルトの用語でラテン語で「我思う、ゆえに我あり」

心身二元論:心と身体は別だとする考え。「病は気から」のように無理がある。

アウラ:近寄りがたい雰囲気。オーラのこと。元はキリストとかの後ろに書かれた後光のこと。

アガペー/エロス/フィリア:無償の愛/純愛/友愛。親の子に対する愛はアガペー。

アナーキズム:一切の権力をなくそうとする立場。無政府主義と訳される。

アナロジー:類似の関係、類推。

アニミズム:霊的存在への信仰。ラテン語で魂を意味するアニマに由来。

エートス:習慣によって培われた精神。ある社会を特徴づける気風。

ストア派:禁欲によって心の平安を求める立場。ストイックはストア派の哲学に由来する。

エピクロス派:快楽によって心の平安を求める立場。

永遠回帰:同じことが永遠に繰り返される苦しみ。永劫回帰ともいう。

社会契約説:人民が契約によって国を支配するための理屈。いくつかの種類があり、ホッブズは自然権を王に譲渡、ロックは統治を議会に委ねる、ルソーは一般意思に基づく直接民主主義。ルソーの説は危険思想とされ迫害を受けます。

一般意思:みんなの意思。ルソーの概念。人民が契約によって国家をつくる共通の意思。

ペルソナ:もうひとつの顔。英語でパーソン。人格や個性を意味する。もとはラテン語で仮面。

疎外:遠ざけられていること。マルクスの用法が有名。生産した商品は資本家のものなので商品から遠ざけられている、商品の疎外。労働の疎外は、資本家の命令のもと分業させられていること。人間の疎外は他の労働者との競争により高い賃金を得るという、貨幣価値により測られるという意味で、人間から遠ざけられている。ただの歯車としての疎外状況から抜け出すためには、生産手段を労働者みんなの共有とする必要があると主張し、生産したものをみんなで分ける経済システムを導入しなければならないという。
これが社会主義。

詭弁:強引な屁理屈。

エディプスコンプレックス:幼児期の心の葛藤。フロイトの説。

昇華:欲求の置き換え。



その他よく目にする哲学用語

いや~最初は150の用語を全部書くつもりだったのですが、疲れました。以下はチンプンカンプンのカタカナ用語、入試問題でも見かける漢字系の用語、日常の用法とは意味の異なる用語、本格派向けの高度な用語、と続いていきますが、目についた用語だけを抜き出します。

アタラクシア:心が落ち着いた状態。魂が乱されてない平穏な状態。

アフォーダンス:知覚が行動のための情報を提供すること。見ただけでどうすればいいかわかる。

アプリオリ/アポステオリ:経験なしに/経験に基づいて。カントの用語

アポリア:永遠に答えの出ない難問

アンチノミー:どっちも成り立つこと。二律背反と訳される。

イドラ:思い込み。フランシスベーコンの用語で偶像と訳される。要は偏見や先入観。

ドグマ:独断。教条主義と訳される。中世には異教の教説、ルネサンス以降は現在の独断を意味する否定的な概念。

ノマド:既存の秩序に抗して自由な生き方ができる人。もとは遊牧民のこと。近年はカフェや自宅などを転々とする決まったオフィスで働かない人のことを指す。

コスモポリタニズム:国単位ではなく個人単位で物事を感がる人。世界市民主義とも訳される。これを主張する人をコスモポリタンと言う。

ロゴス:論理的な言葉。

形而上学:自然の原理を度外視して考える学問。

功利主義:行動原理として快楽や幸福を重視する立場。ジェレミーベンサムが唱えた。高貴な快楽と下賎な快楽を一緒にすべきでないと、豚向きの学説と批判される。JSミルは、快楽の質に着目する。有名な彼の言葉は以下。「満足した豚であるよりも、不満足な人間であるほうがよく、満足したバカであるより、不満足なソクラテスであるほうがよい」

観念論:世界は私たちが頭の中で作り上げたものだとする考え方。

エポケー:いったん頭の中を空っぽにすること。

マルクス思想関連の用語

上部構造/下部構造=社会制度/経済活動

マルクスは下部構造(経済活動)が人間の思想や法、政治の制度などの上部構造を決めると考えた。経済活動が土台となって、それによってすべての社会制度の中身が決まってくるということ。それまでの哲学者は逆で、思想や観念こそが経済のあり方を決定すると考えていた。

マルクスは生産力の向上により下部構造が発展すると、やがて革命が起き、上部構造も変化すると考えた。この考えが唯物史観という彼独特の歴史観。

唯物史観

経済が歴史を動かすとするマルクスの説。生産力が生産性の向上によって生産関係にそぐわなくなった時、その矛盾を原動力として歴史も次の段階へ進むとする説。

具体的には、原始共産制⇒奴隷制⇒封建制⇒資本主義⇒社会主義⇒共産主義。と進展すると主張した。

封建制から資本主義への移行は、工場での生産によって資本の蓄積が生じたことによって起こった。そして資本主義は様々な矛盾を抱え始める。マルクスによると、矛盾に溢れた資本主義は、革命によって壊され、生産力に応じた社会へと移行せざるをえない。次に来るのは能力に応じて働き、働きに応じて分配するという社会主義。あるいは能力に応じて働き、必要に応じて分配を受けると言う共産主義。

(補記)社会主義と共産主義の違いはググルとすぐに出ますが、簡単にいうと、大きな政府で高福祉型が社会主義、それが高度に発達して国家権力が死滅、無政府状態になり、私有財産がなくなり共有段階まで来たのが共産主義です。中国共産党とは何なのか…

ちなみに日本は世界で一番成功した社会主義国家と言われています。そりゃあ給食のおばちゃんが年収8百万という、富を能力に関係なく均等に分けてみたり、医療費が格安だったりする最も成功した医療保険なんかがありますからね。以上マルクス思想でした。

パラドクスで思い出した、ドラえもんの最終回。何度見てもいい話です。

「タイムパラドクス」。

ドラえもん最終回は本当にあった!
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