ロシア釣り軍団とは何か?|「激震! セクハラ帝国アメリカ」より

コメント欄で「面白いよ」と教えてもらった本。
表紙はマンガみたいで期待してなかったのですが、けっこう面白かった。大当たり。

週刊文春の連載「言霊USA」の記事(17年3月9日~18年3月1日号)を本にしてます。
毎週アメリカの社会現象を記事にしてる。今週の全米流行語みたいな。

たとえば18年2月の記事は「Boober」です。おっぱい野郎って意味。
じつはハリウッドのセクハラスキャンダルは、2016年からアメリカ全土を揺るがせてきた告発の動きの一部だそうです。

はじまりはテレビ、FOXニュースの看板キャスターが次々にセクハラで訴えられた。恥辱にまみれてみんな解雇された。

NBCテレビの超絶人気キャスター、マット・ロウア―。モーニングショーの「トゥデイ」はテレビ黎明期から全米トップの視聴率を維持する老舗番組。そのメインキャスターのマットは60歳で年棒は2500万ドル。全キャスター中で最高額。甘いマスクと声は女性視聴者から人気で、スタッフの人事にも決定権を持ち、NBCの王様のようにふるまっていた。2017年11月NYタイムズは、過去20年にわたって10人以上の女性に性行為の強要をしてきたことを報じる。

やられた女性は上司に報告するが、マットが数字を持ってるのでおとがめなしだったそうだ。だけどNYタイムスが書いて、ついに解雇された。

セクハラで会社自体があやうくなったのが「ウーバー」。あの白タクアプリ会社。CEOのカラニック(41歳)は推定資産63億ドル。社訓は「常にハッスル」。元ウーバーの女性社員が実名ブログで社内のセクハラ体質を告発した。彼女は上司から性的関係を求められ、人事部に報告したが「彼は業績を上げてるから」ともみ消された。

あわてたウーバーは社内調査して、セクハラしていた社員20人をいっきに解雇したが、すぐにウーバーの重役パーティに人数分のコールガールが呼ばれてたことを、カラニックの元恋人が暴露。カラニック自身が過去のインタビュで言った「ウーバーで金持ちになって女に不自由しないBoober(おっぱい野郎)だよ」というしょうもないジョークまで掘り起こされた。何をしても世間をいらつかせるカラニックに対して、役員会は辞職勧告を突き付けた。ちなみにカラニックはリック・アストリーにそっくり。

以下にその他の読書メモを。



トランプが騒いだ闇の政府とは何か?

「闇の政府」、ディープ・ステート(国家内国家)がアメリカで話題になっている(17年4月)。ディープステートというのは90年代に出てきた言葉で、もとはDerin devletというトルコ語の直訳だそうだ。トルコでは選挙で選ばれた政府が司るのは表面的な国家でしかなく、その奥深くに、軍部と諜報機関と司法がマフィアと結託した闇のネットワークが存在し、それをディープステートと呼んだという。ほかにディープステートがあるといわれるのは、エジプトとパキスタンだ。国民の支持を受けた首相や大統領も、軍部と諜報機関に逆らうと、クーデターで政権を追われたり暗殺されたりする。

アメリカにも昔はディープステートがあった。1961年1月にアイゼンハワー大統領が任期最後のテレビ演説で、アメリカを陰から支配してるのは軍産複合体だと語った。

「ディープステートは現在のアメリカにもある」トランプ政権が騒いでいる。マイケルフリンはFBIに盗聴されて辞職に追い込まれた。トランプに逆らってるのは諜報機関だけではない。イスラム7か国からの入国禁止令は、司法省、国務省が「憲法違反の疑いがある」として従わなかった。トランプは自分に逆らう官僚たちのクビを次々に切った。

そもそもトランプたちが先に官僚にケンカをふっかけた。関係省庁の了解も取らずに頭ごなしに大統領令を乱発しただけじゃなく、各省庁の長官に「天敵」ばかり配置した。予算案では省庁の予算をごっそりカット。大量の人員削減が待っている。さらにFBIとCIAの宿敵ロシアとつるんでるんだから抵抗されて当然。

トランプとバノンは役人や政治家を徹底的に叩いて庶民の人気を得た。いざアメリカという飛行機の操縦かんを握ってみると、素人だからどうしていいかわからない。ほかの乗務員はまるで手伝ってくれない。問題はディープステートじゃなくて、チームワークで一緒に働いてくれるべき役人たちを敵にまわしてしまったこと。ちなみに飛行機の乗客はアメリカ国民。合掌。

⇒ついディープ・スロート思い出しますよね。ディープ・スロートには2つの意味があります。Fテクで喉の奥まで使うこと、スパイというか内部告発者。

まじめな副大統領マイク・ペンスの炎上

トランプがペンスを副大統領に選んだのは、選挙の際国民の25%を占めるキリスト教福音派の支持が欲しかったから。トランプは教会にも通わず、神や聖書とは縁遠い人物。ペンスなしにはクリスチャンの票をとれなかった。そのまじめなペンスが珍しく炎上した。

むかしのインタビュ。結婚生活を維持する秘訣。「自分の妻以外の女性とは食事したり、お酒を飲まない」。このわずか1行の言葉が論争を巻き起こした。

まず怒ったのは働く女性たち。

「仕事の仲間はランチしながら会議したり、ディナーや飲み会に行って情報を交換したり、本音をぶつけたり、結束を固めたりする。ペンスはそのチームワークに女性はいれない、と言ってるのと同じです」

「ペンスはこのルールを守る限り、重要な役職に女性を登用できないだろう」

「ペンスは妻か娼婦かのメンタリティに囚われてる。基本的に女性をセックスの対象としか見ていない」

コメディアンのコルベアは「女性と食事できないほど自分が抑えられないのかね」とからかった。

「誰と食事しようと自由だという人もいる。だけどペンスに限ってはちがう。ペンスは個人の自由である性の領域に法律で介入する権力者だからだ」

3月30日、上院で家族計画協会をめぐる審議があった。家族計画協会とは10代の少女のために避妊や中絶の助けをしてる非営利団体。南部各州は学校で避妊を教えず、中絶できる病院も限られている。保守的な土地柄で家族にも相談できないため、10代の未婚の母が多い。彼女たちを救うために手術費を含めて救助してるのが家族計画協会。

家族計画への政府の助成金は打ち切られた。投票すると賛成と反対は50対50で割れた。すると上院議長も兼ねるペンスが賛成に1票入れて法案は通過した。打ち切り賛成の51人のうち48人が男性で、21人の女性議員のうち18人が打ち切りに反対した。男たちは無理やり女性の中絶の権利を邪魔した。



黒人の大量収監問題

現在も続く黒人の大量収監問題。現在アメリカでは240万人が刑務所に収監されており、その6割が黒人かヒスパニック。罪状でもっとも多いのは大麻所持。大麻使用率は白人も変わらないのに、白人は警官にほとんど職質されない。前科者は貧困から脱出できず投票権も奪われる。だから有色人種を狙った逮捕収監は第二の奴隷制度だと批判されている。

⇒日本は7万人ぐらい収監されてます。アメリカは3倍ぐらいの人口なので20万人ぐらいが適正人数だと思うのですが。日本を基準にしたらダメか。犯罪少ないですもんね。

南部のおれたちは酒飲んで笑ってばかり♪
北部の都会に行くにはバカすぎる♪
おれたちはレッドネック♪
自分のケツと地面の区別もつかない♪
北部のやつらはニガーを自由にした♪
そしてニューヨークの刑務所にぶち込んだ♪
シカゴでシスコでボストンでニガーを刑務所にぶち込んだ♪

ランディニューマンで、レッドネック♪

Rednecks

ロシア釣り軍団(ロシアン・トロール・アーミー)とは?

ジェナ・エイブラムはアメリカのアルファブロガー。プロフィールを見ると30代金髪の白人女性で眼鏡をかけている。楽しくヒネリの利いたツイートで、CNNなど大手メディアにも引用されツイッターのフォロワーは7万人を超えた。2016年ジェナのツイートはだんだんと政治的になってきた。

「リベラルはイスラム教徒の人権を擁護するけど、イスラム国では女性が叩かれ、ゲイは殺されるのよ」と人権派の矛盾を皮肉る。右寄りのツイートを繰り返し何万ものいいねを集める。

ジェナはなぜかプーチンが大好き。「プーチン様素敵!」「プーチンってかっこいい!」

10月終わり、ツイッターはジェナのアカウントを凍結した。じつはジェナは存在しなかった。ロシア政府が対米プロパガンダのために作ったトロールアカウントだった。

17年9月ロシアの入金によるプロパガンダ広告を掲載してしまったとフェイスブックが発表した。ロシアのプロパガンダ機関からの入金で、フェイスブックは3000もの政治的意見広告を載せた。10月からIT業界を呼び出して公聴会が行われた。

ロシアが出す広告は右寄りでトランプ支持のものが多い。こうした広告の料金は約1000ドルで70万人以上が見たという。ロシアからフェイスブックへの広告は合計2億円にもおよぶ。

ロシアの目的はアメリカ国民をイデオロギーで互いに対立させ分断することらしい。こんな事件もあった。ロシアがでっち上げた架空の団体「ハート・オブ・テキサス」が「テキサスのイスラム化を防ごう」とヒューストンのイスラミックセンターの前で抗議集会を呼びかけ、それに対するカウンターをやはりロシアがでっちあげた「ユナイテッド・ムスリム・オブ・アメリカ」が呼びかけ、両者にあおられた人々が路上で激突しそうになった。ロシアからわずかな広告費を出すだけで、テキサスの住民同士を戦わせることができるのだ。

プーチン様最高♪
でもな スターリンやレーニンにできなかったこと♪
おれにできると思うか♪

ランディ・ニューマンで、プーチン♪

17年7月のランディー9年ぶりの作品。プーチンになりきった歌が話題だった。

レスポンシブ広告

シェアする