レコードコレクタ―ズ執筆陣41名によって選ばれた、「60年代のロック・アルバム200」。その中から上位20作品を以下に。
AmazonMusicを貼っていきますので、個々のアルバム評などはAmazonのレビューを参照ください。
目次
- 20位 スライ&ザ・ファミリー・ストーン|スタンド!
- 19位 ザ・キンクス|ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサイアティ
- 18位 ボブ・ディラン|ブロンド・オン・ブロンド
- 17位 ミレニアム|ビギン
- 16位 ローリング・ストーンズ|レット・イット・ブリード
- 15位 ザ・ストゥージズ|ザ・ストゥージズ
- 14位 ザ・ビートルズ|リボルバー
- 13位 キャプテン・ビーフハート&ヒズ・マジック・バンド|トラウト・マスク・レプリカ
- 12位 ピンク・フロイド|夜明けの口笛吹き
- 11位 ローリング・ストーンズ|ベガーズ・バンケット
- 10位 ドアーズ|ハートに火をつけて
- 9位 ザ・ゾンビーズ|ふたりのシーズン
- 8位 レッド・ツェッペリン|レッド・ツェッペリン
- 7位 ジミ・ヘンドリックス|アー・ユー・エクスペリエンスド
- 6位 ボブ・ディラン|追憶のハイウェイ61
- 5位 ビートルズ|サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
- 4位 キング・クリムゾン|クリムゾン・キングの宮殿
- 3位 ザ・バンド|ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク
- 2位 ビーチ・ボーイズ|ペット・サウンズ
- 1位 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ|ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ
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20位 スライ&ザ・ファミリー・ストーン|スタンド!
19位 ザ・キンクス|ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサイアティ
18位 ボブ・ディラン|ブロンド・オン・ブロンド
17位 ミレニアム|ビギン
16位 ローリング・ストーンズ|レット・イット・ブリード
15位 ザ・ストゥージズ|ザ・ストゥージズ
14位 ザ・ビートルズ|リボルバー
13位 キャプテン・ビーフハート&ヒズ・マジック・バンド|トラウト・マスク・レプリカ
12位 ピンク・フロイド|夜明けの口笛吹き
11位 ローリング・ストーンズ|ベガーズ・バンケット
10位 ドアーズ|ハートに火をつけて
9位 ザ・ゾンビーズ|ふたりのシーズン
8位 レッド・ツェッペリン|レッド・ツェッペリン
7位 ジミ・ヘンドリックス|アー・ユー・エクスペリエンスド
6位 ボブ・ディラン|追憶のハイウェイ61
5位 ビートルズ|サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
4位 キング・クリムゾン|クリムゾン・キングの宮殿
奇跡のアルバム。長いロック史だけにそう呼ぶにふさわしい作品は少なくない。 主人公のプレイそのものから、楽曲を司るソングライター、レコーディングやリリース時に おける社会状況かかわる人々、アート性を持ったジャケットなどなど、多くの要素が、なぜこれほど絶妙な配置、 配役でなされたのか、万言を尽くしても解き明かしきれないのが奇跡のアルバムであり、このキング・クリムゾンのファーストはまさにその称号がふさわしい一枚だ。
マイケルとピーターのジャイルズ兄弟とロバート・フリップのトリオにイアン・マクドナルドが加わり、その後、 ピーターが抜けたりグレッグ・レイクが入ったりと変動しつつ、珍しく作詞家ながらメンバーとクレジットされるピ ート・シンフィールドが加わった構成、これが奇跡の1。
メンバーの高い音楽性と演奏力を背景にした曲、それを神話や占星術など、神秘性を含んだビートの作詞が色づけることで無二の世界を創り上げたことが奇跡の2
そして豊かな叙情性を持ったマルチプレイヤーのイアン、 彫りの深いヴォーカルで楽曲の魅力を決定づけたグレッグ、 イメージ豊かなドラミングのマイケル、そしてロバートの正確でいて硬軟自在なギターで楽曲を構築していくグルー プは、たちまち評判となってレコーディングへと進み、最初はトニー・クラークのプロデュースで行なわれるがメンバーの不興をかってセルフプロデュースとしたこと、これが奇跡の3。
加えてアイランド・レコードとの契約や、わずか24歳で亡くなってしまうバリー・ゴッドバーの描いた強烈なインパクトを残すイラストとの出会いもまた奇跡で、 そうした要因すべてが今もアルバムから吹き出す。
約30秒間のノイズに続き展開される「21世紀のスキッツオイド・マン」は現体制にまで貫かれるクリムゾン流メタルの原点であり、00年代以降のハード&ヘヴィ系のバンドにまで受け継がれている。以後の豊かな音楽性も格別で、「風に語りて」や「ムーンチャイルド」では、先日惜しくも亡くなってしまったイアンならではのメロディアスなラインが聞け、「エピタフ (墓碑銘)」や「クリムゾン・キングの宮殿」では、メロトロンの響きが雄大な光景を描き出し今も時空を超越した感動に包まれる。まちがいなくプログレッシヴ・ロックと呼ばれるものの原点頂点でもあった。どうしてこれほど高い完成度のものが出来上がったの か? そう、奇跡のアルバムと呼ぶしかない。
このアルバムはサブスクから外されています。昨今では珍しい。Youtube貼っときます。
3位 ザ・バンド|ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク
「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』がなかったら、これ以降の音楽シーンはいったいどのようになっていたのだろう。エリック・クラプトンは70年代もクリームを 嫌々ながらやっていて、ジョージ・ハリスンはシタール奏者に転向・・・などと妄想はあらぬ方向に飛んでいきそうだが、 60年代後半にテープ編集やオーヴァーダブなどのスタジオ実験を繰り返したり、幻惑的なショウを展開して新たなロック のありようを提示していたミュージシャンたちは、 この温故知新の権化のようなレコードの登場によって、それまで自分たちがやっていたことの是非を問われ、足下を見つめ直さざるを得なくなった。結果、彼らに倣った新しい“ロック”が続々と生まれてきたのは周知の通りだ。
クラブ回りを続けていたロックンロール・バンドがボブ・ディランをサポートしたことで発見したクリエイティヴ な新しい取り組み。声を合わせてアメリカの様々な古い曲を歌い、リード・ヴォーカルも交替しながら楽しむうちに、 曲作りも新たな次元に突入していった。巷の流行とは無関係だが心に響くこの新鮮な音楽は、ステイブル・シンガーズやインプレッションズらゴスペルやソウルの名コーラス ・グループからのインスピレーションと、それまでの彼らが演奏していたワイルドなロックンロールが入り交じりながら、日々少しずつ練り上げられたのだろう。 まずはあり得ないほどの遅いテンポで始まる「ティアー ズ・オブ・レイジ」。 出て行く娘に怒りを覚えている父親の描写がある謎めいた曲はボブ・ディランが歌詞を書き、 リチャード・マニュエルがメロディをつけたが、こんな曲をやるロック・バンドは他にはいなかったはずだ。
「ウィ ・キャン・トーク」で絡み合うリチャード、リヴォン・ヘルム、リック・ダンコの声が生み出す響きも初期ザ・バンドの強力な個性。そして冗長なインスト・パートが殆ど入っていないアルバムなれど、そこでガース・ハドソンの長く荘厳なオルガン・イントロが導く「チェスト・フィーヴアー」が際立ってくる。 リフの頭がわかりにくいが正解は2拍目の表。演奏したい人は身体に入れておきましょう。 曲作りを統括し、ジョン・サイモンと共に細部に気を配る ロビー・ロバートソンのゴツゴツしたギターはこの面子の中で響いてこそ効果を発揮すると言えるだろう。そして決定的な「ザ・ウェイト」と「アイ・シャル・ビー・リリースト」。 未来永劫語り継がれる伝説の一枚だ。
2位 ビーチ・ボーイズ|ペット・サウンズ
このアルバムは詩がいいです。ご参考までに過去記事ですが。
【ビーチボーイズのペットサウンズ】全11曲を和訳
https://book-jockey.com/archives/13934
1位 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ|ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ
1960年代から半世紀が過ぎ、“ウォーホルの関与が” とか “ジャケのバナナのステッカーが” とかいう背景がもはや通じなくなりつつある現代に、それでも永遠の価値があると考える頭のなかに浮かぶものは何か。
ジョン・カサヴェテスの監督デビュー作「アメリカの影」は50年の映画だが、重要なキャラクターとして登場する肌の白い混血青年のルックスが、このアルバムの頃のルー・リードにそっくりで驚く。それだけでなく劇中の彼が抱えている不満や、平凡に生きることへの退屈をもてあましながら生きる姿もここに通じていると思えた。
退屈。古今、ロックやポップスに大きく関わる気分の多くは退屈から生また。退屈だから踊ろう、パーティーへ行こう、車に乗って海とかフェスに行こう、バンドを組もう。しかし、そのほとんどは退屈とそれに伴う不満の解消をにぎやかに(あるいは激しく) 謳うもので、退屈そのものがエッジーな表現として成立することはなかった。少なくとも、このアルバムが出るまでは。
昔も今も、このアルバムにまつわる伝説に誘われて再生を試みた者は、冒頭の ‘Sunday Morning’につまづく。 ダークでラウドでストーナーでインモラルな音楽ではなく、 詩的で静かですらあるアルバムの幕開けに首を傾げる。しかし本当は日曜日の朝に奇跡は何も起きない。愛する人々との豊かな日々から見捨てられたように退屈を生きるしかない孤独な若者たちに向けて書き出された手紙のようなこの曲は、発表から55年経ってもまだ書き終わらない。
彼らがニューヨークで活動した時代や空間が特別なものだったことは否定しないし、そこを研究するのもいいと思う。トッド・ヘインズが監督したドキュメンタリー映画『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド』(2年)は、おそらく「ゲット・バック」の10分の1も見られていないが、あの映画での彼らのバンドとしてのありようも見てほしい (特にジョン・ケイルとニコへの見方が変わった)。 重要なのは、彼らがこの音楽を世に持ち出したとき、“ロック 言語” や “ロック衣装”に変換せず、そこにあったままの空気や人間たちをリアルに音と言語でとらえるのに成功したことだろう。
ジョナサン・リッチマンがこのアルバムに心酔したのはヘロインや背徳に魅了されたからではなく、平凡な人生に飽きたどこにでもいる孤独な若者の普通が、ロックで初めて描かれた作品だからだ。
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