ドライブマイカーの原作本。「女のいない男たち」の感想

「ドライブマイカー」が流行ってるので、旧サイト2014年の記事を引っ越しました。

村上春樹の恋愛短編集です。前作「恋しくて」も恋愛ものでしたが、恋愛ものは普遍性があって共感が得やすいです。

そういえばJDサウザーが「ぼくはラブソングしか書かない」とか昔言ってたような気がしますが、恋愛ものはたいてい面白いです。ぼくみたいなオッサンが読んでも、遠い日の郷愁を思い出す。

「女のいない男たち」。まえがきにありましたが、ヘミングウェイの短編集「Men without women」とは少し趣きが違います。ヘミングウェイは男だけの世界、こちらは、いろんな事情で女性に去られてしまった男たち、あるいは去られようとしている男たち。

本作には、村上春樹のまえがきが8ページも書かれており、これが結構読んでて面白い。一部をいかに。

短編小説をまとめて書くときはいつもそうだが、僕にとってもっとも大きな喜びは、いろんな手法、いろんな文体、いろんなシチュエーションを短期間に次々に試していけることにある。ひとつのモチーフを様々な角度から立体的に眺め、追求し、検証し、いろんな人物を、いろんな人称をつかって書くことができる。そういう意味では、この本は音楽でいえば「コンセプト・アルバム」に対応するものになるかもしれない。

実際にこれらの作品を書いているあいだ、僕はビートルズの「サージェント・ペパーズ」やビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」のことを緩く念頭に置いていた。そういう不朽の名作と自分の作品集を同列に並べるのはいうまでもなくまことにおこがましいのだけれど、(あくまで)イメージとしては、つもりとしてはそういうものなのだと思って読んでいただけると、作者としてはありがたい。

「女のいない男たち」収録作品の短評

ドライブマイカー

最愛の妻を亡くした役者のその後。北海道の中頓別町からの苦情で、架空の町名「上十二滝町」に変更されている。

イエスタディ

生まれも育ちも東京の男が、阪神ファンが高じて「関西弁」を完璧にマスター。その幼馴染の女の子と、関西出身で東京弁をマスターした早稲田の学生である「僕」の話。

独立器官

本書のハイライト。「僕」がまるで村上春樹のようです。実話なのかな・・

シェラザード

伏線未回収。なんとなくカズオイシグロの「私を離さないで」を思い出す。あっちは回収されたけど。

木野

妻を会社の同僚に寝取られ、会社を辞め離婚し、バーを開業する。不思議な出来事がおき、いつもの村上ワールドになる。

女のいない男たち

本書ではいちばん小粒。作中にブラックアイドピーズとかゴリラズとかが出てくるけど、村上春樹は聴いてるのかな。



本書からのメモと思ったこと

「すべての女性には、嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっている、というのが渡会の個人的意見だった。どんな嘘をどこでどのようにつくか、それは人によって少しずつ違う。しかしすべての女性はどこかの時点で必ず嘘をつくし、それも大事なところで嘘をつくことをためらわない。そしてそのときはほとんどの女性は顔色ひとつ、声音ひとつ変えない。なぜならそれは彼女ではなく、彼女に具わった独立器官が勝手におこなっていることだからだ」

⇒サンジの名言を思い出しました。

「世の中には大きく分けて二種類の酒飲みがいる。ひとつは自分に何かをつけ加えるために酒を飲まなくてはならない人々であり、もうひとつは自分から何かを取り去るために酒を飲まなくてはならない人々だ」

⇒ぼくは取り去るための酒ですね…

「高槻は常習的な酒飲みのおおかたがそうであるように、アルコールが入ると口が軽くなった。おそらくはしゃべるべきでないことも、訊きもしないのに、自分から進んでしゃべった」

⇒酒飲んで、あんまりいらんことをしゃべらんようにしないと。

映画『ドライブ・マイ・カー』90秒予告

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