アメリカで生まれた「新たなカースト制」

いまアメリカの人口の半分は、政府の支援なしでは60日間も暮らしていけない。教育費の高騰から、階級社会(貧富の差)は固定され、アメリカンドリームはなくなった。

・上位0.1%は下位80%より多くの国富を所有している

・米国の下位25%3100万世帯の純資産中央値は200ドル

・米国の超富裕層の税率は年代を追うごとに低下した。50年代70%、80年代47%、現在23%

・アメリカの黒人家族は、平均すると白人家族の10分の1の富しか所有していない

世界で見ると上位8家族の富を奪えば、世界の半分の人々は自分たちの富を倍増できる裕福な8家族は36億人よりも多くの資産を保有しているので。

2020年6月、マンハッタンのジェフ・ベゾスの家の前に抗議デモ隊がギロチンを設置した。

アマゾンプライム会員普及率

アメリカでアマゾンプライム会員の普及率は82%だ。クリスマスツリーを飾ったり、教会に行く人より多い。Amazon一強だ。Amazon創業者のジェフベゾスは2018年から2021年まで4年連続世界長者番付1位。22年4月のフォーブス発表では、テスラのイーロンマスクが1位になった。ベゾスは2位。

現在のアメリカの経済的成功要因は何か?

個人の経済的成功を左右する最大の要因は、才能でも勤勉さでも運でさえもないという研究が相次いでいる。

収入が90パーセンタイル(統計学用語、上位10%のこと)の家庭で育った子の世帯期待所得は、10パーセンタイル(下位10%)の家庭で育った子の3倍だ。



プライベートディズニーランド

1980年代(著者が子どもの頃)ディズニーランドのチケットは9ドル50セントだった。さまざまな家庭の子が、みんな同じディズニーランドを経験した。「カリブの海賊」の行列にはみんな45分並んだ。

いまディズニーランドはこう言ってる。カネを持ってない人は119ドル。普通の食事をして順番待ちの列に並んで。

少しカネのある人は、170ドル払えばファストパスをあげよう。「カリブの海賊」に1時間並ぶことなく、たった10分で入れる。

そして上位1%のリッチな人にはVIPツアーがある。5000ドルであなたと友人6人のグループにツアーガイドが1人つく。特別なダイニングルームでキャラクターが給仕してくれる。バックステージにも入れる。列に並ばなくても従業員用エントランスから入れる。

過去40年で米国の大学の授業料は1400%上昇した

過去40年で大学の授業料は1400%上昇した

アメリカは過去40年で物価は3倍になったが、大学の学費は14倍になった(ちなみに日本の物価は過去40年で約1.3倍ぐらい。ほとんど変わっていない。国立大学の授業料は僕と息子の比較では2倍強)。

高等教育は人を引き上げる大きな力だ。それは階級格差を生みやすい資本主義への対抗手段であるはずだった。しかしアメリカの高等教育は上へ向かうためのハシゴではなく、カースト制度を強化するものになってしまった。

医療費は同じ時期に600%しか上昇していない。これほどの富を移動させて教育産業は何をしたのか。たいしたことはやっていない。

少数のエリート大学は希少性を利用してきた。ぜいたく品ブランドの一種だ。アイビーリーグの合格率は4~10%。需要超過は高等教育のカルテルを生み出している。

これだけの値上げができたのは学生ローンというヘロインのおかげだ。米国の学生ローンの残高は1.68兆ドル。自動車ローン1.2兆ドル、クレジットカード負債0.99兆ドルよりはるかに多い。平均的な大学生は卒業時に3万ドル近くの借金を抱える。

裕福な家庭の子が大学に行く確率は、貧しい家庭の子の2倍。エリート校に進む確率は5倍だ。

しかしコロナで変革の波がきている。オンライン授業だ。過去半世紀、人為的につくられたエリート教育の希少性を正せる可能性がある。

著者の試算では受講者を倍増させても、増えるコストは3000ドル程度。採点を行う大学院生を増やす費用だ。

規模が増えると、最大の捕食者であるGAFAが大学を食いにやって来る。

巨大テック企業は世界的な有名大学と提携して、4年間で得られる学位の80%を従来の半額で提供するようになるだろう。

ほとんどの教育課程はハイブリッドになり、ブランド大学への入学者は大幅に増加する。

MITとGoogleの教育課程なら、年間2万5000ドル(半額以下)で10万人の学生を集めることができる。2年間のプログラムで50億ドルの収入だ。

ボッコーニ大学とアップル、カーネギーメロン大学とAmazon、UCLAとネットフリックス、ワシントン大学とマイクロソフト、などの組み合わせもイメージがわく。

著者のTEDです。

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