エイズからコロナまで。いろんなウイルスまとめてみました。

新型コロナ

アビガン開発した白木名誉教授の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察」が興味深かったです。3月21日発行の日本医事新報の学術論文。

新型コロナはL型とS型があるが、2回かかるとは思われない。

②COVID-19に感染した場合に備えて、肺炎を早期に発見するためには、毎日検温をして平熱を把握し発熱のチェックをする。4日以上持続する発熱は鑑別できる発熱性疾患が限られ、COVID-19のサインと思われる。発熱後8日で呼吸困難が出る。

発熱後5~6日ごろの病初期では、階段上りや運動など酸素必要量が多い時のみ息切れを感じる。この労作性呼吸困難(息切れや呼吸回数の増加)により肺障害を早期に推測し、治療に結び付けることが重症化を防ぐために重要であると思う。その際に画像診断とPCR法で確定できる。

COVID-19の肺炎のCT所見の検討によると、発症後すぐにはすりガラス陰影を呈し、3週間までに徐々に浸潤影を呈するものが多くなるとされており、肺線維化が進行していくことを示唆している。また経過で線維化をきたすグループは予後不良であった。SARSを振り返ると発症4週間後、55〜62%に線維化を残していた。非可逆的な変化(元に戻らない)の可能性があり、拡散能・肺活量低下による肺機能低下も危惧される。COVID-19でも若年者の肺炎は死亡率が低く軽症であると早計せず、後遺症の予防において早期治療が重要である可能性がある。

ぜひ全文を読んでみてください。

それで今回の本論。医療モノを読むのに基礎知識がなかったので、微生物学の本を読んでみました。コメント欄で面白いと紹介してもらった本です。先に目を通すと学術論文を理解しやすいかも。

以下に概要まとめを。



ウイルスと細菌は何が違うのか?

ウイルスと細菌は何がちがう?

微生物を分類すると、細菌、ウイルス、真菌および原虫。

細菌と真菌は栄養などの環境条件が調えば自力で増殖できる生物。一方でウイルスはこれらと異なって、自力では増殖することができない。

必ず細胞に感染(寄生)した後に、細胞のエネルギーや酵素の力を利用して細胞内で増殖する微生物。そのため今でもウイルスは生き物ではない、と主張する科学者もいる。

PCRとは何か?

PCRとは何か?

微生物や細胞を人工的に器具の中で増やすことを培養という。多くの細菌やウイルスは培養が可能で、その場合は検出が比較的容易。

では培養が不可能な微生物を検出するにはどうするか?代表的な検出表は上記の表

私たちの身体に微生物が感染すると、これを「抗原」として体内に「抗体」が作成される。それゆえ免疫学的な手法で血清中や体液中の抗体が検出できれば、感染を証明することができる。

さらに量的な限界はあるが、直接的に抗原を検出することも可能。

また、確定診断などで利用されているが、微生物の遺伝子をPCR(Polymerase Chain Reaction)法で増幅して、高感度に検出することもある。喉を綿棒でこすって採取した粘液や、たんに含まれるウイルスに特有の遺伝子配列を、専用装置で増幅して検出する。増幅するには、検体に試薬を加えて温度を上下させる操作が必要で、結果が出るまでに4~6時間程度かかる。感染初期などでウイルス量が少ないと検出できない場合もある。

ウイルスの構造は?

ウイルスの構造は?

ウイルス粒子は基本的に遺伝子である「DNA」あるいは「RNA」をタンパク質(カプシド)が取り囲む単純な構造をしている。ウイルスによっては「エンベロープ」と呼ばれる外皮タンパク質にも覆われている。そしてDNAを含むウイルスをDNAウイルス、RNAを含むウイルスをRNAウイルスと呼ぶ。

ウイルスの増殖

ウイルスはどんな細胞にも感染するわけではない。風邪を引き起こすウイルスであれば肺や気管などの細胞に、肝炎のウイルスであれば肝臓の細胞に感染する。

ウイルスは自分が感染できる細胞を見出して感染する。ウイルスは細胞の表面に存在するレセプター(受容体)と呼ばれる分子へ吸着する。

レセプターはウイルスごとに異なる。代表的なものにリンパ球のCD4分子があり、これはHIV感染に関わる。その後ウイルスは細胞内に侵入して、細胞側の酵素などによってカプシドからDNAやRNA、さらに酵素類が放出される。

第二段階ではDNAやRNAが複製、転写、翻訳され、第三段階ではウイルスが再構成されて子孫ウイルスが細胞の外へ出芽する。

インフルエンザウイルスとは?

インフルエンザウイルスには、A,B,C型の3つの型がある。B型とC型はヒトにのみ感染する。いずれもエンベロープを持ち、ウイルス内に7つか8つに分節したRNAを遺伝子として持つ。

エンベロープ上には、ウイルスが侵入するときに用いるHAと、細胞から離脱するときに働くNAがある。

HA NA

A型はさらにこの15種類のHAと9種類のNAの組み合わせで分類され、H3N2(HAの型が3でNAの型が2)のように表現される。理論上は15x9=135組になるが実際は限られた組み合わせでしか存在しない。有名なタミフルは、このNAを標的にした薬。

インフルエンザウイルスは、人から人へ飛沫感染で広がる。A型は人以外のトリやブタなど、身近にいる動物にも感染する。

A型はほぼ毎年流行する、もっとも身近なインフルエンザウイルス。なかでもA香港型(H3N2)と、Aソ連型(H1N1)の2種類のどちらかが、あるいは両者が混合して流行する。

B型の構造はA型によく似ているが、HAとNAの構造が一定であって、A型のような抗原亜型は存在しない。そのため世界的な大流行は起きないと考えられている。

C型は遺伝子の分節が7本であり、NAがない。A型やB型と性状がかなり異なり、流行することはない。



ヒト免疫不全ウイルスHIV-1。いわゆるエイズ

発見された当初、その名の通りヒトに感染して免疫不全を起こし、結果として死に至らしめる(後天性免疫不全症候群AIDS)という恐ろしいウイルスだった。

現在では早期発見して適切なウイルス療法を行うと、エイズを発症せずに社会生活を送ることが可能になった。

レセプターはCD4抗原

HIVには1型と2型がある。エイズウイルスと認識されているのは1型で、HIV-1と記されることが多い。

このウイルスは遺伝子としてRNAを持ち、粒子はエンベロープをかぶっている。

HIVはヒトのTリンパ球やマクロファージに感染する。その際にエンベロープ上の2種類の糖たんぱく質(Gp120とGp41)が働きかける。

エイズ

HIVはウイルスのGp120がリンパ球上のCD4抗原をレセプターと認識して、コレセプター(CXCR4もしくはCCR5)の補助を得て接着する。その後むき出しになったGp41が細胞膜と融合して、細胞内への侵入が始まる。

細胞内に侵入したウイルスはRNAと共に逆転写酵素、インテグラーゼ、プロテアーゼなどの酵素類と修飾因子をを放出する。

ウイルスのRNAは逆転写酵素によりDNAに逆転写される。その後複数のステップを経て、増殖し子孫ウイルスを産出する。

その際に宿主のリンパ球を破壊してしまうので、免疫が不全に陥る。

HIVは潜む

HIV感染が他のウイルスと違って非常に厄介なのは、インテグラーゼを利用して、ウイルスのDNAを宿主細胞の遺伝子(DNA)に組み込んでしまうこと。潜伏感染させる。

これにより感染したリンパ球が破壊されずに増殖、分裂するときに、いっしょにウイルスの遺伝子も複製されてしまう。

そして何か刺激やストレスが加わると再活性化し、ウイルスの産出が始まる。

HIVは潜む

このように一度このウイルスに感染した人は、一生涯このウイルスを排除できないことになる。抗HIV療法のカギは、感染患者が発症せずいかにして生活の質を保たせてあげるかにかかっている。

抗HIV化学療法は、免疫状態の指標である「CD4陽性細胞数」と、感染進行指標である「HIV RNA量」を考慮して開始される。むかしは大量の薬だったものが、いまは1日1回1錠のケースもある。



SARSコロナウイルス

2002年中国広東省に突如として謎のウイルス感染症が現れ、世界を震撼させた。

このウイルスは38度以上の高熱と激しい咳や呼吸困難から、やがて肺炎を引き起こし、瞬く間にヒトからヒトへ感染を拡大していった。致死率は10%程度であったが約800名の死者を出した。重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome⇒SARS)コロナウイルス。

SARS

このウイルスを含めてコロナウイルスは一本鎖のRNAを遺伝子としてエンベロープをもつ。このエンベロープには長い突起があり、それが集まって房状に見える。そのためにウイルス粒子の全体像が太陽のコロナに似ており、この名前の由来になった。SARSは気道分泌液中に存在し、飛沫感染によりヒトからヒトへと広がった。

MERSコロナウイルス

中東呼吸器症候群(Middle East respiratory syndrome⇒MERS)コロナウイルスは、2012年7月にヒトへの感染が報告された。サウジアラビアでヒトコブラクダを扱ってる人の中で感染が広がり、二次感染を経て約2年間で700名が感染してそのうち200名が死亡した。主な症状は重篤な肺炎。亡くなった人の多くが腎障害も併発していた。

現在、有効な抗ウイルス治療法が確立されてされていないため、対症療法に頼ることになる。

MERS

まとめ

新型コロナ。当初いわれてた、空気感染するエイズとはちょっと違うみたい。まだ治療法の確立されてないMERSの超強力感染バージョンって感じです。

MERSの致死率は35%と高め。それと比べるとマシか。新型コロナは医療崩壊したイタリアの致死率で8%です。

とはいえMERSと比べると感染力が強くて分母がデカい。相当な人が亡くなると思う。

世界の人口77億人。仮に世界の1%が感染したとして7700万人。世界の標準は医療崩壊だとすると致死率は8%。ということは約6百万人の人が亡くなる計算になる。

白木名誉教授がいうように、現段階では肺機能が元に戻るかどうか不明で、後遺症が残る可能性もある。若年層も油断せず早めの治療をと提言されています。

「4日以上続く発熱&発熱後5~6日目の息切れ」は新型コロナの可能性が高いとのこと。

そういう人はPCR検査義務づけた方がいいんちゃうかな。それで若年層の肺を守る。医療崩壊との兼ね合いが難しいけど。

日本の医療機関のベッド数は、先進国の中でも突出して多いようです。WHOによると、日本は人口1000人当たり13.7床で世界1位。韓国10.3床、ドイツ8.2床、フランス6.9床、中国4.2床、イタリア3.6床、イギリス3.3床、アメリカは3床です。

このスペックだけ見ると、日本が世界で一番最後まで持ちこたえそうです。

エイズと闘病し1991年11月24日に死去したフレディ・マーキュリー。生前最後のミュージックビデオ。91年9月にシングルカットされた。

Queen – These Are The Days Of Our Lives (Official Video)

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『エイズからコロナまで。いろんなウイルスまとめてみました。』へのコメント

  1. 名前:のべる・K 投稿日:2020/03/31(火) 22:20:59 ID:44ad8dcca

    著名な方々もコロナウィルスに感染しております。
    薬がない今は自分で自分を守るしかありません。
    しかし、感染すると味が薄く感じるなど、少しづつ明らかになりつつあります。

  2. 名前:don 投稿日:2020/04/01(水) 12:50:59 ID:933b33be9

    のべる・Kさん、こんにちは~
    自分で自分を守るのも、なかなかむずかしいですよね。
    どれだけ注意しても、身近な人がかかればどうしても伝染ってしまう。