「ゼロトゥワン・ピーターシール」の要約まとめ

偉人伝はそれなりに面白いです。最近でいえば、アマゾン、アップル、グーグル、フェイスブック、マイクロソフト等々。スティーブジョブズやジェフベゾス、ラリーページ、ビルゲイツ、孫正義のような創業者の神話は魅力的です。彼らに共通するのは頭がいいこと。それからちょっとぶっ飛んでいること。

サラリーマンとしてセイフティに生きていこうと思う人間には、あんまり参考にならない。教訓めいたことはそんなに得られない。ビジネスは戦争だ!と孫氏の兵法やクラウゼヴィツの戦争論を読んでも、あんまり為にならないのと同じです。日本の場合は三方良しがビジネスの心得なので、アングロサクソン的な考えは相応しくないのかもしれません。

そういう意味では、62名の人生をインタビューした、村上春樹のアンダーグラウンドあたりが、生き方の指針としては最良な一冊のような気がしています。平凡な人の人生が、実はそれぞれに味わい深く、示唆に富みます。

とはいえ、またぞろ出てきたスーパーヒーローの思想の書。世界同時発売。話題の本なので読んでみました。

ピーター・ティールについてはググってもらえばわかると思いますが、ペイパルとパランティアの共同創業者として、またフェイスブックやスペースXなどのスタートアップへの投資家としても有名です。

(ご尊顔) ゲイをカミングアウトしてます。

ピーターティール



ペイパルとは、「インターネットを利用した決済サービス」です。世界で2億アカウントあって日本ではまだ広がってません。

パランティアは諜報活動用のソフト会社で、シリコンバレーでもっともホットな企業と言われてます。

著者がつくった最初のチームは「ペイパル・マフィア」として知られてます。メンバーの多くがテクノロジー企業の立ち上げに参加したり投資したりして成功している。

著者は2002年にペイパルを15億ドルでイーベイ(オークションサイト)に売却し、その後相棒のイーロン・マスクはスペースXを立ち上げ、テスラモーターズの創業者になります。イーロン・マスクは、テスラが日本のカーメーカーにとって脅威なので、この前日経ビジネスでも特集が組まれてました。

リード・ホフマンは、リンクトイン(世界最大のビジネスSNS、採用活動を変えたと言われる)を創業し、スティーブ・チェン、チャド・ハーリー、ジョード・カリムはユーチューブを立ち上げます。

ジェレミー・ストップルマンとラッセル・シモンズはイェルプ(ローカルビジネスのディレクトリおよびレビューサイト、グーグルからの買収をスティーブジョブズの説得により断る)を創業。デビッド・サックスはヤマー(企業向けSNSサービス。マイクロソフトに2012年に12億ドルで買収される)を立ち上げます。

ペイパルスタートアップ時のメンバーが何故こんなに成功したのか?著者は経歴重視で採用しなかった。自分たちの仕事に興奮した人、米ドルに代わる新たなデジタル通貨をつくるという使命に興奮できる人を採用したと。待遇競争をしてはダメ、待遇に惹かれるような人材は、チームの役に立たないと言い切ってます。

ピーター・ティール、ニューヒーローですよね。本書は新しい何かを創造する企業をどう立ち上げるかについて書かれた本です。創業者として、投資家として学んだことのすべてがこの本の中にあると。2012年スタンフォード大で著者が受け持った授業がベースになっています。学生の一人が詳しく記した授業ノートがキャンパスを超えて拡散して、そのノートに著者とその学生が修正を加えて出来上がった本です。



目次と各章2~3行での要約

日本語版序文 瀧本哲史

はじめに

1.僕たちは未来を創ることができるか

水平的進歩はグローバリゼーション、垂直的進歩はテクノロジーであると。

2. 1999年のお祭り騒ぎ

ドットコムバブルの崩壊でみんな慎重になった。段階的な前進がよい、先の事はわからないから計画は傲慢だ、ライバル製品の改良がベター、販売でなくプロダクトに集中するべき等々。だけど正しいのは全て逆だ。大胆に進むべし、計画はするべき、競争の激しい市場では収益は消失する、販売はプロダクトと同じぐらい大切だ。

3.幸福な企業はみなそれぞれに違う

永続的な価値を創造してそれを取り込むには、コモディティビジネスを行ってはならない。

4.イデオロギーとしての競争

なぜ人は競争を健全だと思い込んでるのだろう。

5.終盤を制する―ラストムーバー・アドバンテージ

先手必勝と言われるが、ライバルがやってきてその座を奪われたら意味がない。最後の参入者になるほうがマシ。特定の市場で最後に大きく発展して、その後何十年と独占利益を享受する。そのためには小さなニッチを支配し、そこから長期目標に向けて規模を拡大する。

6.人生は宝クジじゃない

ビルゲイツなどのベビーブーマー世代は、成功を「運が良かっただけ」と言う。そういう価値観を時代に刷り込まれた。偶然の力を過大評価し、計画の大切さを過小評価する。それは単なるベビーブーマー世代の通説だ。企業は自分で未来がコントロールできる。人生は宝くじじゃない。

7.カネの流れを追え

パレートの法則は万物の法則だ。ベンチャー投資の真実は、ファンド中もっとも成功した投資案件のリターンが、その他すべての案件の合計リターンを超える。分散はダメだ。「ひとつのもの、ひとつのことが他のすべてに勝る」

8.隠れた真実

フェルマーの最終定理をワイルズは解いた。358年間どんな数学者にも解けなかった問題だ。隠れた真実の存在を信じたからだ。あらゆる種類のテクノロジーの分野で、できることはまだまだ多い。

9.ティールの法則

「創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップはあとで直せない」
何事も始まりの瞬間は特別で大切だ。とくに創業メンバーのチームワーク。創業者がお互いをどれだけよく知ってるか。起業前に経験を共有してるほうがいい。所有、経営、統治をしっかり決めて、利害を一致させておく。

10.マフィアの力学

仕事を超えた関係。共謀者を採用し、自分の責任を果たす。社内の平和こそスタートアップの生き残りに必要だ。スタートアップの失敗はだいたい内部闘争が原因。最高のスタートアップは、究極より少しマイルドなカルトと言っていいい。

11.それを作れば、みんなやってくる?

最高のプロダクトをつくる「おたく」たちは、販売の事なんて考えたくないし、営業マンを「銀河ヒッチハイク」みたいに他の惑星に追放できたらいいと思ってる。取引先との電話で大声で笑ってるし、ビジネスランチに2時間も費やしてる。でも営業はものすごく大事だ。ビジネスの種類のよって効果的な販売手段は異なる。販売もまた独自の「べき乗則」に従っている。売る製品の単価によって販売スタイルは変わる。

12.人間と機械

グーグルの自動運転車は、「次の失業の波を起こすかもしれない」とガーディアン紙は懸念している。グローバリゼーションは自国の労働を奪うが、テクノロジーは人を補う。強いAIは壮大な宝くじのようなものだ。勝てばユートピア、負ければスカイネット(ターミネーターのコンピュータ)だ。

13.エネルギー2.0

太陽光発電なんかのクリーンテクノロジー。何千というクリーンテクノロジー企業が生まれ、投資家は500億ドルを超える金額を注ぎ込んだが失敗に終わった。失敗の理由を詳細に解説している。

14.創業者のパラドックス

際立った個性を持つリーダーは会社にとって重要だが、自分の神話を信じこみ自分を見失うこともあり危険でもある。

終わりに―停滞かシンギュラリティか

シンギュラリティとは、テクノロジーの進歩により人類を超える知性が生まれる段階。僕たちがゼロから1を生み出せば、未来はより良くなる。

その他の読書メモを。



グーグルのシェア

2014年1月時点で、グーグルは検索市場の67%を支配している。2位はマイクロソフトの18%、3位はヤフーの11%。グーグルはオックスフォード英語辞典に正式な動詞として載っている。

ニューヨークタイムズとツイッターの企業価値

どちらにも数千人の社員がいて、数百万人にニュースを届けている。ただ企業価値は違う。2013年にツイッターが上場した時の時価総額は240億ドルで、NYTの12倍以上だった。NYTは2012年に1.3億ドルの利益を計上し、ツイッターは赤字だったのに。なぜツイッターにそこまでの高値がつくのだろう。

答えは将来のキャッシュフローだ。投資家はツイッターがこれからの10年間に独占利益を取り込むことができると予想し、新聞の独占は終わったと考えた。

新薬は偶然の力を追い求める

1928年フレミングはふたをせず研究室に置きっぱなしにしていたペトリ皿に謎の抗バクテリア菌が育っていることを発見した。たまたまペニシリンを発見したのだ。それ以来科学は偶然の力を追い求めるようになった。現代の新薬はフレミングの思いがけない幸運を大規模に再現する方法によって発見される。製薬会社はランダムに分子化合物を組み合わせることで、標的にヒットする化合物を見つけるのだ。

ただ以前ほどうまくいってない。新薬に関するエルームの法則はムーアの法則の反対で、10億ドル単位の研究開発費に対して承認される新薬の数は、1950年以来9年ごとに半減しているという。

新ビジネスの例

エアビーアンドビーができる前、旅行者はホテルに高い部屋代を払う以外にほとんど選択肢をはなく、不動産所有者は空き部屋を信頼できる相手に簡単に貸し出すことはできなかった。エアビーアンドビーは、他の人たちにはまったく見えなかった、未開拓の需要と供給に気付いたのだ。個人送迎サービスのリフトやウーバーにも同じことが言える。どこかに行きたい人と送りたい人をつなげるだけで数十億ドル規模のビジネスになると考えた人はほとんどいなかった。

それを探さなければチャンスに気付くことはできない。フェイスブックを含めて多くのインターネット企業が過小評価されるのは、それがあまりに単純なものだからで、ごく当たり前に見える洞察が、重要で価値ある企業を支えているのだとすれば、偉大な企業が生まれる余地はまだたくさんある。

不老長寿を求めて

ルネサンス時代の天才たちは、不老長寿や長寿法を追い求めた。フランシスベーコンは闘い半ばで命を落とした。ベーコンは、鶏を雪の中で凍らせて寿命を延長できるかどうかを実験していて肺炎にかかり、1626年に亡くなった。

⇒凄い人だと思ってましたが、けっこう間抜けな最後です。というかチャレンジすることを笑ってはダメなのかも。フランシスベーコンはいろんな名言がありますよね。「経験哲学の祖」と言われてます。僕の好きな名言は、何度か書いてますが、「読むことは人を豊かにし、話すことは人を機敏にし、書くことは人を確かにする。」です。

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