印税だけなら尾田栄一郎が1位。年間30億円。
新刊コミックの初版は400万部でこれが年間4冊。トータルの年間実売は3500万部。アニメや映画、関連グッズも大人気なのにたった30億円/年しか稼げない。
ヤンキースの田中将大は25億円。尾田クラスの収入はメジャーにはごろごろいる。ハリウッドの人気作家や俳優ならもっと稼ぐ。
アニメのワンピースは世界中で放送され、世界的な人気を集めてる。それでもこの程度しか漫画家には入ってこない。
その理由は「ドラマや映画になっても漫画家には一切、カネが入ってこないこと」。マンガをドラマや映画、アニメにするとき、テレビ局は映像化権としてたった100万円を渡して映像化による一切の権利を漫画家に放棄させる。
ドラマがヒットしようがDVDやレンタルビデオで人気になろうが、漫画家には一銭も入ってこない。「海猿」の作家はブチ切れて「どうせカネにならないなら映画にしなくていい」「今後いっさい海猿は使わせない。再放送もさせない」と逆襲に出た。
なぜこんな理不尽が続いているのか?
出版社にとっては都合がいいから。本来マンガを原作とした映像化は、漫画家に原作使用料を印税契約するのが筋。ハリウッドはそうなってるので脚本家や作家は莫大な収入になる。
ところが日本は漫画家の代理人が出版社の編集者。出版社にすればドラマやアニメになれば原作マンガが売れる。映像化権を吹っかけてそれが流れるのは困るので、漫画家を丸め込んでしまう。
テレビ局や制作会社も、マンガ家に支払うべき収入が丸々利益になるうえ、関連商品も作家の許諾無しに勝手に作って荒稼ぎできる。
尾田栄一郎も鳥山明も、きちんと映像化印税の契約を結んでおけば、収入は間違いなく桁が1つ上がっていた。
自分で書いて自分で売る。究極の自費出版
印税だけでもトップクラスだが出版社の利益を踏まえれば、漫画界ナンバー1は間違いなく「さいとう・たかを」。リイド社はさいとうたかをの出版社。
沿革
さいとうたかをは1955年貸本漫画家としてデビュー。5年後に日本初のマンガ制作プロダクション「さいとう・プロ」を設立。1974年には親族を経営者に自分のマンガを出版するリイド社を立ち上げた。代表作ゴルゴ13は1968年スタート。小学館で連載しながらコミックスはリイド社から発売。
特徴
徹底した分業体制が最大の特徴。さいとう・プロの雇用条件はよく、大物漫画家も多数在籍していた。直木賞作家の船戸与一も30作品以上脚本を手掛けている。脚本はテレビや映画で活躍するプロの脚本家を起用している。
プロダクション制はベテランかつ人気作家なら規模は違えどどこでもやっている。さいとうたかをが素晴らしいのは、そのうえで「リイド社」という出版社までつくったこと。アニメ制作会社までつくった手塚治虫にしても出版社はやってない。藤子不二雄、赤塚不二夫、石ノ森章太郎、水木しげるクラスなら、誰でも自分のコミックスを発行する出版社を設立できそうだが、彼らをしてもできなかった。
コミックス、廉価版、雑誌サイズの特集本など、キヨスクやコンビニなど様々な販路で売りさばき利益を最大化する。
金儲け
代表作ゴルゴ13の累計部数は、ワンピース3.2億部に続く第2位の2億部。1.6億部のドラゴンボールを超えている。単純な印税計算ではゴルゴで100億円だが、リイド社の利益も事実上さいとうたかをの実収入になるため、500億円以上の儲けとなる。
年間68億円を売上げるリイド社の資産も含めれば、さいとうたかをのマンガ収益は1000億円以上と推定される。日本一稼いだ漫画家だ。
さいとう先生はゴルゴの目しか描かないは本当なのか?
このエピソードは本宮ひろ志の話。本宮作品はすべて社員漫画家が描いて、本宮ひろ志ブランドのサインとして御大が「目」を入れる。
さいとう・プロの場合、ゴルゴの顔、主要キャスト、擬音はさいとうたかを先生御自ら、丹念に描いてるそう。「本宮ひろ志より、俺は働いてるぞ」と怒っておられたそうです。
さいとう・プロの品質は?
出版社を経営してるので、確実に売れて堅実に利益の出るマンガに絞っている。「ゴルゴ13」「鬼平犯科帳」「仕掛人・藤枝梅安」。
ゴルゴは国際情勢の専門家を雇い、下手な雑誌よりディープな国際情報がストーリーのベースとなっている。麻生太郎も「国際情勢はゴルゴで学んでいる」と公言している。
またリイド社にはマンガ用の江戸時代の資料が「日本一揃っている」といわれている。それが作品の質を高めている。
実は時代劇マンガの最大のネックは、マンガ用の資料集めにカネがかかること。マンガは作品で視点が動く。たとえば「駕籠」ひとつ描くにも前後左右、細部の資料写真が必要だが、それを1つ1つ集めていくのが大変。
そこがさいとう・プロは違う。すべて長期シリーズなので、やればやるほど「高品質なのに低コスト」で制作できるようになる。しかも量産体制が整っていて、自分の出版社を通じて、それを別のマンガ家の作品にも流用できる。
これはゴルゴでも同様で、世界各地の主要な都市の景観、各国の武器や兵器、国際情報の資料の量は他の追随を許さない。そこに腕のいいシナリオ作家を起用して作品の質を上げている。
気がつけば「さいとう・たかを」は漫画史上、最大の利益を叩きだすマンガ家になった。
ゴルゴのこと聞かれた麻生さんが、わざわざこの作品も紹介してる。1話読んでみたけどめっちゃ面白い。
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こんにちは、donさん。
ワンピースってまったく知らないけど、凄いんですね。
日本のアニメは海外でも人気だと聞いたことがあったけど、
マンガも輸出されてるんでしょうかね?
それにしてもワンピース。
3.2億部ですか。なんで知らないのかな?(笑)
漫画と言えば、ぼくなんかの世代では、手塚治虫さんが
あまりにも輝き過ぎていて、その他にも横山光輝をはじめ
桑田次郎、石森章太郎、小沢さとる、川崎のぼる、ちばてつや
などの人気作家がいたけど、名前を挙げたところで如何せん
その他大勢って感じだモンなあ。
ちょっとね、手塚治虫がアタマひとつどころか身体ひとつ以上
抜けてる感じなんですよね。もうどうしようもありません。
さいとう・たかをは独立系という感じでしたね、昔から。
ご紹介のとおり、まったく路線が違ってたと思います。
しかし、リイド社が彼の会社だったとは知りませんでした。
早くから分業制のプロダクション形式で、有能な人材を輩出
してしたのは、かなり有名な話だったと思います。
しかし、本宮ひろ志は「目」しか描かないんですか?
そんなの「本宮ひろ志作」じゃないじゃん!
悪いけど、何か勘違いしてませんかね?
ちょっと笑っちゃいました^^;