【戦後史の正体/孫崎享】要約と書評

読まれたほうがいい本。どこの図書館にもあるとおもう。孫崎享の渾身の一冊。

1966年に外務省に入省。英国陸軍学校に派遣後は、ソ連に5年、イランとイラクにそれぞれ3年勤務。東京では情報部のトップである国際情報局長をつとめる。その後は2002年から防衛大学の教授を7年やって日本外交史を研究。

そんな彼が、出版社から日米関係を高校生でも読めるように書いてくれと頼まれて書いた本です。孫崎氏は防衛大学の2年生に安全保障を教えていたので、学生を眠らせない工夫を身につけた。ですます調で書かれた読みやすい本。

著者はいう。米国からの圧力や裏工作は現実に存在する。戦後の日本外交は、米国に対する「追随」路線と「自主」路線の戦いだったと。TPPにも日本の国益にならないと反対しています。

以下に読書メモを。



2008年の福田総理辞任のほんとの理由

急に政権を投げ出したのではない。自分の首と、自衛隊の海外派遣およびファニーメイへの数兆円の資金提供拒否を引きかえにした。2010年11月のウィキリークスによると、アフガニスタンへの大規模自衛隊派遣要請を不可能と回答している。また米政府の住宅金融機関二社が経営危機をむかえたときの融資依頼数兆円も拒否した。もし融資していたら数兆円をドブに捨てていた。

日本にある米軍基地の価値

日本には横須賀、佐世保、三沢、横田、嘉手納などの米軍基地がある。これら全体の価値は海外にある米軍基地の約30%の価値をもっている。また日本は基地の受入国として半分以上の経費の負担をしている。ほんとは普天間がなくなっても大勢に影響はないはず。

⇒とはいえ、親中と在日米軍基地縮小は米国の虎の尾だそうです。

郵貯民営化のねらい

米国に貸しているカネ(米国債)は返ってこない。世界から集めた金でアメリカ経済は成り立っている。もし返せばその瞬間に米国経済は崩壊する。一方で日本の郵便貯金が存続しているかぎり、そのお金はたとえ無駄な公共事業でも、基本的には日本国内で使われ国民をうるおす。ところが民営化して普通の銀行のようになると、米国債に多く回るようになる。

冷戦崩壊後の1991年の米国の仮想敵国

米国内の世論調査の結果は以下だった。CIAは日本の経済力を米国の敵と位置づけ、対日工作(盗聴や世論工作など)を大々的に行なった。

「米国への死活的脅威(複数回答)」

一般人 指導者層
日本の経済力 60% 63%
中国の大国化 40% 16%
ソ連の軍事力 33% 20%
欧州の経済力 30% 42%

田中角栄はなぜ米国に政治的に葬られたか

ロッキード事件の異常さは本書に譲る。中曽根総理はその理由について、日の丸原油でメジャーを刺激したことが米国の琴線にふれたとの推測をしているが、田中本人は日中国交回復が米国を怒らせたとの印象をもっている。

米国は中国との国交樹立は1979年までできなかった。台湾に利権をもつ勢力からの圧力で議会が賛成できなかったからだ。田中角栄は1972年に日中国交正常化を実現した。キッシンジャーは「日中国交正常化延期してほしい」と要請したが角栄は一蹴した。「よりによって日本人野郎がケーキを横取りした」と怒りを爆発させた。

60年安保の本当の流れ。まとめ

①岸首相の対米自主独立路線(詳細は本書で)に危惧をもった米軍およびCIA関係者が、工作を行なって岸政権を倒そうとした。
②しかし昭和の妖怪といわれる岸の党内基盤および官界の掌握力は強く、政権内部から切り崩すという通常の手段が通じなかった。
③そこで経済同友会などから資金提供をして、独裁国に対してよく用いられる反政府デモの手法を使う事になった。
④ところが6月15日のデモで女子東大生が死亡し、安保闘争が爆発的に盛り上がったため、岸首相の退陣見通しが立ち、CIA経由マスコミ(朝日、読売)を使って16日からはデモを押さえ込む方向で動いた。

岸はCIAとの間に闇の関係はあった。しかしうまく利用して自分のビジョンを通した。このへんの芸当は戦前の満州国の経営など、きれいごとの通じない世界で頭角をあらわしただけある。曰く「政治というのは、いかに動機がよくても結果が悪ければダメだ。場合によっては動機が悪くても 結果がよければいい。これが政治の本質だと思う」CIAからの巨額の資金援助を受けながら、安保改定に執念を燃やした岸の本音の言葉だ。



55年体制とは

1955年、自由党と日本民主党というふたつの保守政党が合併し、自由民主党が誕生する。これを「保守合同」という。55年には左右に分裂していた社会党が再統一をはたしており、ここに以後40年近く続く「55年体制」が成立した。

米国のダレス国務長官が岸に会い、「もし日本の保守政党が一致して共産主義者との、アメリカの戦いを助けるなら、経済的支援をしてよい」と明言し、1960年代までCIAを通じて自民党に政治資金が提供され続けた(米国公文書)。

紛争の火種は米国によって残された

ロシアとは北方領土、韓国とは竹島、中国とは尖閣諸島と、みごとなくらいどの国とも解決困難な問題が残されている。偶然ではなく米国に意図的にしくまれた(詳細は本書で)。これは国際政治の世界では常識の戦略。英国などは植民地から撤退するときは、多くの場合、あとに紛争の火種をのこしていく。かつての植民地が団結して反英国勢力になると困るからだ。

インドから撤退するときは、パキスタンとのあいだにカシミール紛争を残した。アラブ首長国連邦から引き上げるときは、複数の首長国がいがみあうように、飛び地の領土を作り、領土の境界線をわざと複雑に設定した。

北方領土の真実

北方領土の北側の二島、国後、択捉というのは、第二次大戦末期に米国がソ連に対し、対日戦争に参加してもらう代償としてあたえた領土である。しかも米国は冷戦の勃発後は、国後、択捉のソ連への引渡しに反対して、わざと「北方領土問題」を解決できないようにしている。

⇒妥当な判断は講和条約で放棄した国後、択捉の二島はあきらめ、歯舞、色丹の二島返還で合意し、ロシアと友好関係を結ぶことか。

特捜部のおいたち

検察は米国と密接な関係をもっている。とくに特捜部はGHQの管理下でスタートした「隠匿退蔵物資事件特捜部」を前進としている。その任務は敗戦直後に旧日本軍関係者が隠した「お宝」を摘発し、GHQに差し出すことだった。

CIAが日本の検察を使ってしかける。これを利用して新聞が特定政治家を叩き、首相を失脚させるというパターンが存在する。

日本の原発のスタートは米国の意向

その理由は第五福竜丸の被爆で、日本人が急速に反原子力、反米に動くことを阻止することだった。読売の正力松太郎が中心となった。「日本には毒には毒をもって制するということわざがある。原爆反対をつぶすには、原子力の平和利用を大々的にうたいあげ、それによって産業革命の明日に希望をあたえるしかない」と。ちなみに1950年代は、安い原油が自由に手に入る時代だった。

ハイロウズの「アメリカ魂」ご存知でしょうか? 日本ロック史上に残る名曲♪ 米国を痛烈に批判する歌です。

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