中国のスパイ活動。武器を使わない戦争

米中対立という「地政学的リスク」。

安全保障と経済活動を並行して考える「経済安全保障」の視点が重要になっている。日本はどうすれば勝てるのか?

本書から中国の脅威などの読書メモを。

国連の4機関のトップが中国人

国際機関への積極的な関与により、自国に有利になるようなルール作りや国際世論に導くことも、「新しい戦争」の形態の1つ。

WHOの運営は中国寄りだ。WHOへの拠出金の国別順位で中国は2位。テドロス氏の出身国、アフリカのエチオピアが国内のインフラ整備で中国から援助を受けている影響。テドロス氏は母国で外相を務めた経験がある。

国際機関を使った多国間でのルール形成力は、中国の方が米国より一枚上手だ。国連の15の専門機関のうち、FAO(国連食糧農業機関)、ITU(国際電気通信連合)、ICAO(国際民間航空機機関)、UNIDO(国連工業開発機関)のトップは中国人だ。

国際機関の重要ポストに中国人が就けないようにするため、日本はやっと戦略的な動きを取り始めた。WIPO(世界知的所有権機構)の選挙戦は、特許庁出身の夏目氏を擁立したが敢えて選挙戦から降ろした。日米欧が協力して集票して、シンガポールのダレン・タン氏を推した。同盟国で候補を一本化したことが奏功し、タン氏は中国の王氏に勝てた。国連専門機関のトップ選挙は小国でも1国1票だ。中国の途上国への支援は集票も狙いの1つ。

国際専門機関のトップのポストに選出されるには、専門性や交渉力、語学力に加えて、内外で通用する肩書が重要。中国や韓国は国益をかけて、極めて優秀で博士号を持つエース級人材を戦略的かつ組織的に送り込んでいる。

海洋国家日本。国連の専門機関の1つで、船舶の設備や構造の安全基準、有害物質の排出規制など海洋上のルールを決める「IMO(国際海事機関)」。IMOの事務局長は16年から韓国人の林基沢氏。このポストは「海の大統領」と呼ばれるほど強い権限を持つ。韓国に不利なルールチェンジは実行しないだろう。



中国のオーストラリア侵略

サム・ダスティヤリ上院議員、ボブ・カー外相、ポール・キーティング首相など、多くの豪政治家は中国から金銭的支援を受けていた。

また引退した政治家をもてなし、その発言力を利用する。その人物の国内での影響力低下と裏腹に、中国では「重要な賓客」として扱われると、自分を軽んじる母国を貶め、中国を持ち上げる発言をしやすいのが人間心理だ。

豪の農地も中国に買い漁られた。南部のタスマニアなどの農地が狙われ、中国企業が買収して中国から労働者が送り込まれ、農産物を中国のみに輸出する「中国の畑化」が進んでいる。

港湾の買収や租借も進む。16年にはメルボルン港が中国系ファンドに買収された。15年には戦略的要衝のダーウィン港に中国企業が99年間の租借権を設定した。

ダーウィン港を買収した嵐橋集団の会長は人民解放軍出身。企業で「上海民兵」を運用していることや、豪の貿易投資相のアンドリュー・ロブ氏にカネを渡していたことが判明している。

ニュージーランドもひどい。同様の状況が起こっている。詳細は本書にて。

なぜ中国は外国のインフラを安値で受注するのか?

中国は新興国で鉄道や発電所などの社会インフラを超抵コストで受注して支援する。同時にテロのリスクに対応するとの名分で、「警備員」の肩書で人民解放軍を送り込んでいた。戦争に勝って軍事基地を作るコストより、そちらの方が安くつくから(米国の分析)。

パリのシャンゼリゼ通り。中国人観光客のマナーが悪い。パリ市は中国大使館に相談。中国は通訳を大使館側から派遣してくれることになった。その通訳は人民解放軍だった。同じことがイタリアでも起こった。

中国は外資締め出しに動いている

安可目録

中国政府が安全と認めるIT製品しか国内流通を認めない。主な5条件は以下。

・外資比率20%以下で社長と配偶者は中国籍を持つこと
・中国で3年以上の販売実績を持つこと
・中国で生産していること
・中国でデザイン、設計していること
・アフターサービスができること

事実上の外資締め出し。日本企業ではコピー機メーカーに大きな影響が出始めている。

インターネット安全法

中国で事業を展開するIT企業などは、中国政府が認めたIT製品しか開発、発売できない。中国政府が要求した場合は、ソースコードを開示しなければならない。

公安機関インターネット安全監督、検査規定

インターネットにつながったパソコンなどのコンピューターが5台以上ある事業者に対して、中国公安部は次のような対応ができる。

・在中国企業に対して立ち入り、遠隔によるネットワークセキュリティ検査
・企業への事前通告なしの遠隔検査
・脆弱性チェックのための事前通知なしのシステムへの侵入テスト
・立ち入り検査中のセキュリティ対応のログ保存
・検査時に見つけたすべてのユーザー情報のコピー
・収集したすべての情報について他の国家機関と情報共有
・検査執行のため中国人民武装警察部隊から2人を同行する



日本には秘密特許制度が必要

特許法では特許は原則公開される。これだと中国などの「軍民融合」時代に、いとも簡単に民間企業が開発した新しい技術が軍事転用される。北朝鮮の核開発は、日本のウラン濃縮に関する公開特許が活用されたとの見方もある。「G20」のなかで、秘密特許制度を持っていないのは、日本とメキシコだけだ。

一方で特許が公開されないと、発明者に特許収入が入らない。守秘義務もあり技術の応用範囲が広がらない。

米国では秘密特許に指定されると、その特許が公開された場合に得られた経済価値を予測して、税金で買い取る。

日本の公安調査員の人員

諸外国と比べると貧弱だ。

公安調査庁の人員は1600人で、予算は19年度で153億円。

英国秘密情報局は3000人を超えており4000億円弱。オーストラリア保安情報機関は2000人で412億円。ドイツ憲法擁護庁は3000人で500億円。人員、予算だけでなく法整備でも日本には課題がある。

映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』主題歌【和訳】ビリー・アイリッシュ – No Time To Die

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