いろんな激安食品があるじゃないですか。298円弁当とか。なんでそんなに安いのという。安いものには安いなりの理由があって、それは「ある種の欠落」があると。
ぼくは安いものが好きです。それは体にとってよくないのか、なんでそんなコストで製造できるのか。自分がよく買ってる安い食品、弁当、ハムソー、納豆、豆腐、惣菜などについてメモを残します。
ちなみに飲食店の原価率はだいたい30%台ですが、100円バーガーの原価は60円だそうです。サイドメニューで儲けてる。マーケティングからそういう値付けになってる。お得という観点からいうと、100円バーガーだけ数個テイクアウトするのが一番いいみたい。
以下に要約読書メモを。
弁当、298円激安価格の謎を追う
20年前に500円だった弁当が、なぜ300円になったのか。
・割れやすいコメを使うか、良いコメの場合でも割れたコメと配合して使うことで安くできる。キロ350円のコメと100円の加工用米をブレンドすると安くなる。規模の大きな業者は取引先の監査があるのでやりにくいが、小さい規模の業者はやりたい放題。
・煮物につかう出汁を、すでに3番だしまでとった鰹節や昆布とかでとってるところもある。食材と味を犠牲にするとコスト削減できる。
・弁当の製造原価率はだいたいどこも35%前後。物流費が8%、人件費が15%、スーパーやコンビニの利益率が約35%⇒弁当製造利益は約7%。
・食数が多いと、1工場で1種類の弁当を作る。そうすると人件費を10%に抑えれる。1つの工場で複数の弁当を作ると、コンタミ防止(他ラインの原料が混ざるのを防ぐこと)のために、清掃などに時間がかかり、そうしたロスで5%はすぐに吹っ飛ぶ。
・インストア弁当(食品スーパー店内で調理する)は安くできる。客引きのために弁当の利益をゼロにしてる。客がほかの売り場で買い物をしてくれ、それで利益を出す。また鮮魚や野菜、精肉を廃棄前にインストア弁当の原材料にまわす。それも売価ではなく、原価で部門移動できる。店舗全体のロス改善につながる。
納豆、豆腐の価格破壊
・納豆業界の1位は「おかめ納豆」のタカノフーズ。2位はミツカン。3位以降は突出したところはない。2社は安値競争を続けていき、中小がつぶれればシェアが上がる。
・店頭価格100円の納豆の場合は、65円で納品させられる。センターフィー10%、ピッキングフィー4%、販売奨励金3%で約17%スーパーに徴収される。納入価格65円からスーパーに支払う経費を引くと、54円が納豆メーカーの手取り。納豆の原材料費は34円なので、約20円が納豆メーカーの手取り。これで人件費、配送料、設備償却、光熱費をまかなう。原材料費34円の内訳:大豆12円、容器7円、タレ6円、カラシ4円、パッケージ2円、輸送段ボール3円。
・大手のタレは安い業務用の醤油を加水して薄め、足りなくなった味を増粘多糖類や化学調味料で補っている。だから醤油の味はしない。
・豆腐の販売価格が108円なら、小売りに30~40%、物流に10%かかる。
・いまの原料、人件費なら豆腐1丁で200円前後が適正。しかしそれを訴求できるスーパーはない。結果的に薄い大豆の低い品質の豆腐商品が出回り、真面目につくってる豆腐屋がつぶれる。
・体力のあるスーパーが、倒産寸前の豆腐屋を買い取り、客寄せの格安豆腐をつくる。豆腐で儲けを出していない。
・日本は世界で一番豆腐が安い。大豆を輸入してるのに。どこでコスト削減してるのか。凝固剤。通常のニガリで固められる量の倍以上固められる凝固剤を使う。
・強力な凝固剤をつかって薄い豆腐を固めれば、価格を3分の1にすることが可能。
・格安豆腐は充填豆腐。充填豆腐は温かい豆乳に凝固剤を入れて固めるのではなく、冷却した豆乳に凝固剤を混ぜたものを容器に注入し、密閉した後に加熱して凝固させるもの。
・ここ10年で凝固剤の技術に大きな変化があった。乳化ニガリによる凝固技術が業界を席巻している。これは塩化マグネシウムを油脂でコーティングしたもの。豆乳に混ぜると、油脂が溶けて塩化マグネシウムが露出するまで凝固が始まらない。だから凝固前にしっかり豆乳と混ぜ合わせられる。しかも表示上はニガリと書ける。またグリセリン脂肪酸エステルが添加されているので、消泡剤を使わなくても済む。表示に書く必要がない。ニガリ使用で消泡剤不使用ということで、こだわった客も買う。いわば優良誤認が起きている。
・アメリカは豆腐にニガリ以外の凝固剤など使ってない。もちろん乳化ニガリも使わない。もちろん乳化ニガリを使ったものと天然ニガリを使ったものは、味わいは違う。
ハム・ソーセージ、それは本当に肉なのか
・フランスやイギリスのハムやベーコンは肉の味がする。日本のベーコンはかまぼこみたい。
・1kgの豚肉をハムに加工すると、1.2kgのハムになる。インジェクションとタンブリングによる。肉はたんぱく質である。安価に使える大豆や、たまご由来のたんぱく質を塩水に混ぜて注入する。それだけだと肉から流出する。そこで肉の保水性をあげるリン酸塩という添加物を混ぜる。これで肉の内部で大豆やたまごのたんぱく質が肉の細胞となじんで固まり、あたかも肉のようにふるまう。なお最先端のインジェクション液をつかうと、1kgの豚肉が1.5kg以上になる。もはやおいしい肉の味はしない。
肉の味がしないメンチカツ、柔らかすぎるトンカツ
・メンチカツに植蛋を使わないメーカーはほぼない。植蛋は字のごとく、植物性たんぱく質を粒のような形に加工した食品。植蛋の原料は、油をしぼった後の大豆や、小麦。どちらもたんぱく質を豊富に含む。動物性と植物性の違いはあれ、組成は似ているので噛みごたえは肉に似ている。噛みごたえはごまかせるが、味は肉に似ない。
そこでアミノ酸液やエキス類、香料で肉っぽい強い味付けをする。コンビニで売られている160円のフェイクのメンチカツの横に、肉だけで作った280円のメンチカツが並んでいても、財布の中身を気にする人は160円を買う。その2つのメンチカツは大きく違う。けれどその違いは消費者に説明されない。
・トンカツ用豚肉が1枚300円以上するのに、調理されたトンカツが300円弱で食べられる。もちろんインジェクション注入されることで肉の繊維が切れ、かつ水太りしている。そのため柔らかいトンカツに仕上がる。柔らかいもの好きの日本の消費者は喜んでいる。
・おにぎりのツナマヨもひどい。ツナはマグロのことだが、原料のキハダマグロは高いので、カツオを使っているケースも多い。いちおうカツオもツナと表記していい。それでも安くないので、いかにして固形物をごまかすか。ジェルっぽい増粘多糖類を足したり、味の子さを満足するようアミノ酸液を加える。いかにツナを少なくするかという知恵をみんな絞っている。
食肉は殺戮だ♪
動物の命はどうでもいいというのか♪
どんなふうに屠殺されるか知ってるのか♪
懐かしの80年代ネオアコ。スミスでミート・イズ・マーダー♪