都会の人は冷たく、田舎の人は温かい。なぜなのか?
都心のマンションでは隣人に挨拶しないケースも多く、一方田舎の人はよく近隣の人と話をします。
答は、有名なゲーム理論の「囚人のジレンマ」です。
都会の場合は人が多いので隣人といえどもいつ引越しするかわからないし、その後の人生において深く関わりあう可能性は低いわけです。
つまり「囚人のジレンマ」でいえば、1回限りのゲームです。
だから自分に有利なことしかしない。相手と関わりあっても得をする可能性は低いし、下手に関わって変なことに巻き込まれるよりは、関わり合いを持たない、という選択肢を選んでしまいます。
一方で田舎の人は、人数が少ないし近隣は顔見知りで、それが長期間続くことが多いです。つまり「囚人のジレンマ」でいえば「無限に続くゲーム」というわけです。
ゲームが無限に続く場合は、相手のことも考えて協力しあわないと自分の得にはならない。
田舎の人は「人と協力することが自分の得になる」という状況に置かれているため、それが染みついて「親切な人が多い」ということになったと推測できる。
囚人のジレンマをかんたんに
1944年数学者ノイマン「ゲームの理論と経済行動」がその起源。状況によって人の経済行動は変わっていくと。
様々な実験や研究が行われているが、最も有名なのが囚人のジレンマ。
2人とも黙秘すれば両者とも懲役1年 |
2人とも自白すれば有罪となり懲役3年 |
1人が自白してもう1人が黙秘すれば、自白したものは無罪で、黙秘したものは懲役5年 |
2人とも黙秘を続ければ、お互いに1年の刑を受けるだけですむので、それが2人にとってもっともいい策。しかし黙秘を続けて相手が自白した場合は、自分が5年の刑を受けなければならなくなってしまうという、大きなリスクがある。
実験では囚人は2人とも自白してしまう。
このゲームに「何回か続ける」という条件を加えた場合はどうなるか?
その場合続ける回数が判明している場合は、最初の条件と同じように2人とも自白してしまう。しかし続ける回数がわかっていない場合は、2人は協力して黙秘をするという結果になった。
相手が自白した場合は、次の回では報復で自分も自白しようとする。そのリスクを避けるためには、両者が黙秘を続けるということが、両者にとって最善の選択になる。
囚人のジレンマ以外でも、ゲーム理論は何度も顔を合わせるもの同士は協力的になるという実験が行われている。
人は協力し合った方が大きなメリットを得られる。しかしなかなかうまくいかない。
「相手が裏切るかもしれない」「自分だけが損をするのではないか」という疑念が生じるため。それをどうやって払拭するかが、よりよい社会をつくるポイント。
ネットの世界ではなぜ人は攻撃的になるのか?
ネットの匿名掲示板は「1回きりの囚人のジレンマ」の究極の状態。実際の社会で出会う確率は非常に低い。自分が望まなければほぼ出会うこともない。
匿名だとネットでの発言は自分の実生活に影響を及ぼす可能性は非常に低くなる。
だから自分の思いのたけを吐き出し「相手をどれだけ傷つけても、周囲をどれだけ不快にさせても、自分の気分がよくなればいい」という超利己的な行動が生じている。
ナッジ理論とは何か?
2017年ノーベル経済学賞を受賞したリチャードセイラーが提唱した理論。
「消費者は様々な選択肢の中から、もっとも得になるものを選んでいない。しばしば間違った洗濯をしている」
ナッジ理論は、迷える消費者に対してちょっとした提案をすることで賢い選択を促す、というもの。ナッジ(Nudge)とは肘でつつくという意味。
有名なのがアメリカ政府からセイラーが頼まれた、アメリカの企業年金。
必ず従業員に得になる企業年金。しかしなかなか企業年金の加入者が増えない。これは企業年金の申込が非常に複雑で、たくさんの書類を書かなければならないことが要因ではないかとセイラーは推測した。
そこでセイラーは「年金脱退申込書」というものを提案した。企業年金に加入するのが標準で、それ以外の選択をする人のみが書類の手続きをするという。
これで多くの人が自動的に企業年金に加入することになり、脱退申し込みをする人はほとんどいなくなった。
雑誌の定期購読者が減らない理由も同じ。定期購読は惰性で購読してる人が多い。解除の手続きがメンドくさくずるずると定期購読をしてる人が多い。
学術的に解明される前に、ビジネススキームとして普通に使われていた。
ナッジ理論の悪用として知られるのが「携帯電話」の解約。非常に複雑で消費者にとって不利。これに類似した商法は世の中に跳梁跋扈している。
最後通牒ゲームとは?
「人は自分が損をすることになっても、誰かが得になることを阻むことがある」
Aにまず100ドルを与える。 |
Aは見ず知らずのBに、その100ドルのうち何ドルかを分け与えないといけない。 |
Bは分け前に不満があればそれを拒絶することができる。そしてBが拒絶すればAもBも1ドルももらえない。 |
実験結果は、AがBに与える金額は40%~50%というのがもっとも多く、全体の3分の2以上を占めた。
そして20%を下回るケースは、わずか4%にすぎなかった。しかも分配金が20%以下の場合はBは半分以上が拒絶を選択した。この実験はどこの国、民族で行ってもだいたい似たような結果になる。
人間は利己的な生き物であり、本能的に損得勘定をしている。しかし人の嫉妬心はその損得勘定さえ超える。どこの誰かもしれない人に、これほど強い嫉妬心を抱くのだから、見知ってる人への嫉妬心は相当なもの。
本書の著者は税務署の調査官をしていたが、脱税の密告情報のほとんどは、ごく近しい身内の人間から。とくに相続税の脱税は親族からの密告がもっとも多い。自分も損をするのに、親族の誰かへの嫉妬のほうを抑えきれない。
(関連記事)
徒然草に、ゲーム理論が書かれていた件。
https://book-jockey.com/archives/10596
今年二月に膝骨折してこのブログでお世話になっていました。もう62歳のおばはんです。その節はお世話になりました。
和歌山の田舎の農家で育ちましたが、親切とか朴訥は、嘘です。農家の人は、腰にラジオをぶら下げて農作業をしています。色々な情報をつねにいれています。
それに、土地という財産も持っています。
ええ人もいるけど世間の人は間違っているかも。
そんなん、わかって田舎の人のことをええ人というのは、あかんと思います。。