「世界秩序が変わるとき」要約メモ

齋藤ジン

著者は在米。ヘッジファンドなど機関投資家へのコンサル業を営む。初の著作。とても話題の一冊なのでご一読を薦めます。5~6行でまとめると以下。

今から日本経済は伸びる、いま世界のカジノオーナーはアメリカで今度は日本を勝てる席に座らせる。中国は新自由主義台頭の恩恵で潤ってカジノハウスの地位をもぎ取ろうとアメリカに挑戦している、その姿勢を隠していない。アメリカは黙って見過ごさない。新冷戦、米中分断(デカップリング)は不可逆的な流れ。

アメリカとしては強い中国を封じ込めるために「強い日本の」の協力が不可欠。そのため今この瞬間、次の30年を規定する新たなカジノのルールが書かれている。

「世界秩序が変わるとき」の概要

1章は新自由主義とは何か?の説明。2章は著者である齋藤ジン氏の自分史です。

「世界秩序が変わるとき」の概要

氷河期世代ができた理由

・アメリカのように雇用が流動化すると、ある世代が勝利し続けたり、どこかの世代が負け続けたりすることは少なくなる。40年近い社会人人生で考えると、多くの人が転職したり解雇されたりしているので、雇用調整に直面するリスクは全世代に平準化される。

・日本の場合は1990年代の金融不況のとき、社会の要請から、すでに職のある世代が既存雇用の維持を優先したこと、その声に応じて連合などの労働組合が賃金交渉ではなく、雇用維持の闘争を始めたことが問題。

・雇用の維持を突き付けられた企業が、苦肉の策としてコストの高い正社員を抑制し、非正規従業員に頼った。金融危機からアベノミクス開始までの15年間で、正規雇用は450万人の減少、非正規雇用は650万人の上昇となった。

実は評価が高かった岸田政権

・日本ではボロクソな岸田さん。ワシントンや国際金融市場の評価は全く逆で非常に高い。

・台湾有事懸念や北朝鮮問題があるなか、岸田さんは防衛費の倍増、反撃能力の保有、日米韓関係の再構築という結果を出した。

・自民が選挙で弱くなると迅速で柔軟な意思決定ができなくなって、日本政府が全力で美味しい立ち位置を取りに行くことができなくなる。

・労働人口の減少で賃金は上がっていく。ゾンビ企業は政府が手を汚さなくても淘汰される。

・デフレで安価な労働者がいたので下請け、孫請けが成立していたが、労働力が確保できなくなるので簡素化されていくしかない。パーフェクトエコノミーに近づく。

・経済成長にとって人口動態は懸念材料であることは確かであるが、運送業や介護などサービス分野の生産性が他の先進国に比べて低いことは成長の伸びしろ。

・しかし生産性チャンネルで時間を稼いでもいずれ労働力不足に直面する。海外の労働者を受け入れる準備をする必要がある。

・岸田政権は技能実習制度の代わりに育成就労制度を導入したが、これは最終的に永住許可につながる道を確保するもの。

・今はまだアメリカの6掛けといわれるサービス業の生産性チャンネルがあるので永住許可へのハードルは高く設定されているが、今後はその柔軟な運用が望まれる。

・日本は今後市場メカニズム(金利、賃金)により競争力のある企業に労働力とマネーが流れる。官を縮小。外国人労働者を増やす。これは新自由主義の時代に日本ができなかったこと。

・日本はバブル崩壊で傷ついた社会の分断を避けるため、低成長、非効率の道を選んだ。

・丸まる一周遅れだが、日本はこれから新自由主義的に市場メカニズムを使った構造改革をすることになると予想される。

・家計の金融資産1000兆円が現預金に積みあがっている。他の国はインフレがあったので資産運用をしてきたが日本はこれから。これだけの新規ポテンシャルを持った国は他にない。

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