【単純な脳、複雑な「私」】要約まとめ

必須ビジネス書101冊で薦められていた中の1冊。101冊の中では脳科学ものはこれと、買い物する脳/マーティンリンストロームだけでした。

池谷裕二は日本屈指の脳研究者。2008年には文部科学大臣賞(若手科学者賞)を受賞しています。

第一線の研究者ですが、社会活動(アウトリーチ活動というらしい)として一般の人へわかりやすい本を書いたり、講演をしたりもするようです。

ニューヨークの高校生へ脳科学の講義をした「進化しすぎた脳」の続編企画の本で、著者の母校の藤枝東での4回の講演録です。凱旋講演なので著者がリラックスしてとてもうれしそうで、母校への愛情が溢れています。1回目は全校生徒へ、2~4回目は選抜された9名の高校生との対話形式の講義です。

高校生賢いです。たぶん進学校の生徒だからポテンシャルはあるんでしょうけど、哲学的な話まで良くついていってる。後半は脳のゆらぎや創発の話になって理解しにくいのですが、高校生はちゃんと理解してる。

以下に読書メモを。



人間が並行処理できるのは7個まで

忙しくてテンパってるときはやることリストを書いてみるといい。だいたいは7個をちょっと超えてるくらい。7個以下なら落ち着いて対処できるけど、それを超えると猛烈に忙しいと感じて戸惑い焦る。人のワーキングメモリには処理容量の限界があって、飽和すると理解不能の不安状態に陥る。これがヒトの意識の特徴。

ひらめきは寝たほうが良い

数列の穴埋め問題の難問(だいたい8時間程度かかる)の正解率で、回答者を3つのグループに分けます。
・昼間の8時間⇒正解率20%強
・徹夜の8時間⇒正解率20%強
・寝る前にみて8時間の睡眠後起床時にすぐ回答するグループ⇒正解率60%

直感とひらめきは違う。
・ひらめきは理由を説明できる⇒大脳皮質が担当
・直感は理由が説明できない⇒基底核が担当

キキ、ブーバ試験

下の図形は未知の文字です。ひとつがキキでひとつがブーバです。どちらがブーバかわかりますか?普通は未知の文字なので正解率は50%になるはずなのですが、なぜかみんなブーバがわかります。理由は説明できません。これが直感です。

キキブーバ

直感とでたらめ

プロの将棋士は、なぜかわからないけど直感で次の一手はこれしかないと確信がうまれるときがある。そういうときは試合にも勝つ。これは神の啓示でも、天才だからでもない。訓練のたまもの。訓練をした人の脳は盤面を見ただけで直感が働く。ぼくたちも一手させと言われればなにか指すけど、それは直感とは言わない、でたらめ。経験に裏付けられていない勘は直感とは言わない。



40歳から直感が働く

10年ほど前に、大人になってからも成長する脳の部位があることがわかりました。一つは基底核(直感やセンス)、一つは前頭葉(思考)。

人生経験で基底核の直感が育まれ、論語で言うところの40にして惑わずは、40歳くらいからさかんに直感が働き始めるということを意味するのではないでしょうか。

相関関係と因果関係・・天然パーマはIQが低い

世界中の人からデータ収集して統計を取ると、天然パーマはIQが低いと言う結果が出ます。だけどこれは、アフリカ大陸に天然パーマが多いからです。

統計上は相関関係にあり、データとしては間違いない本当のことです。これを相関関係という。サイエンス、実験科学が証明できるのは相関関係だけです。因果関係は絶対に証明できない。「脳は相関が強いときに、勝手に因果関係があると解釈してしまう」もの。

報酬系、テグメンタ(腹側被蓋野)

つきあい始めて3ヶ月のベタぼれ状態のカップルに恋人の写真をみせて脳のどこが活動するか観察します。テグメンタという部位が活動するそうです。

つまり恋愛してるとテグメンタが活動してるというわけです。これは恋愛以外でも活動することがわかっています。たとえばヘロ○ンを服用しているとき。

テグメンタは快楽中枢で、ほかのドラッグやアルコールなども報酬系の神経回路を活性化することがわかっています。

人は顔の左側しかみてない

モナリザ左側

モナリザの左右反転をみると、より笑ってるように見えます。神秘的な微笑と言われるのは右側だけ微笑させてるからです。人の脳は右脳が映像やイメージをつかさどる傾向が強い。脳が支配する体側は左右交差するので、左側の視野で物事を判断します。

スーパーのセール品なんかも左側に置くと販売数が伸びるというデータもあります。これを応用すると、女性の化粧やファッション等も右側を念入りにすることが肝要です。人からみて左側なので自分の右側です。

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