東京大学大学院の准教授さんが書いた本。専門は哲学。南山大学の准教時代に「科学文化論」という、SF映画を題材に哲学的に考えるという授業をしていた。出版社がその授業の内容を元に本を書いてほしいと。各章が1回の授業の内容。どこから読んでもいい。
100年後は生きてないし、どんな世界かまったくわからないけど、現在の英知はどういう世界を予想してるか知りたくて、読んでみました。目次は以下。
1章:子供をつくる―『ジュニア』で考える生殖テクノロジー
2章:よりよい子供をつくる―『ガタカ』で考える遺伝子テクノロジー
3章:生命を創造する―『ジュラシック・パーク』で考えるバイオテクノロジー
4章:薬で頭をよくする―『アルジャーノンに花束を』で考える能力増強テクノロジー
5章:身体を改造する―『ロボコップ』で考えるサイボーグ・テクノロジー
6章:長く生きる―『永遠に美しく…』で考える不老長寿テクノロジー
7章:考える機械をつくる―『2001年宇宙の旅』で考える人工知能
8章:働く機械をつくる―『ターミネーター』で考えるロボット・テクノロジー
9章:データを分析する―『マイノリティ・リポート』で考える情報テクノロジー
10章:人の心を読むー『ブレインストーム』で考えるマインドリーディングテクノロジー
11章:薬で幸福になるー『時計じかけのオレンジ』で考える心を操作するテクノロジー
12章:別の世界をつくるー『マトリックス」で考える仮想現実テクノロジー
ほか
構成は、まず各章の最初に映画のあらすじが書かれている。『時計じかけのオレンジ』の章だったら、「犯罪者のアレックスが治療によって性格が変えられてしまう」という内容。そして気分を操作する薬の技術の現状、心をあやつる技術の未来、心の操作の是非、と著者が近年の文献から調べた話が紹介される。そして各章の終わりには、哲学的な問いかけがある。
・楽しい気分になるためにお酒を飲むここと、ブロザックを服用することは違いがあるのか?
・親が子供のためを思って性格(ADHDなど)を変える薬物を投与することは許されるのか?
・反社会的な人に薬物を投与することは許されるのか?
ちなみにブロザックはセロトニン再取込阻害薬。うつ病の治療薬です。しかしアメリカではうつ病患者だけでなく、健康な人がブロザックを服用することが一般的となった。気分が明るくなり、性格が積極的になる。ハッピードラッグ。ウォール街のビジネスマンなど忙しくてストレスのい多い人たちの間で利用が広まったという。もちろん副作用はある。
各章ごとにもっと調べたい人用に、5~20冊ほど参考図書も提示されてます。さすが大学の先生、山のように本読んでます。
以下に読書メモを。
目次
ウソ発見器の当たる確率
虚偽検出技術として現在広く用いられているのはポリグラフ。嘘をつくと呼吸や脈拍の上昇、冷や汗など生理的な変化が生じる。ポリグラフを用いればおよそ90%の正確さで虚偽検出が可能。
うつ病になる人はどれくらいいるのか?
1割から2割の人が一生のうちに経験するといわれている。症状として気持ちが沈んだり、気力が減退したりする。集中力の欠如、不眠、疲労感などもある。放っておいても一定期間ののちに自然に回復することも多いが、治療をしなければ再発し、再発時には症状は深刻化する。深刻化すると自殺を望んだり試みたりする。投薬によって再発までの期間を延ばしたり、再発時の症状の悪化を防いだりできるので、現在では投薬治療が主な治療法の1つ。
うつ病発生のメカニズムの詳細はまだわかってないが、おおよそ以下のようなことが知られている。人間の脳はさまざまな化学物質によって、神経細胞間の情報伝達が行われている。異なる化学物質を伝達に用いる何種類かのネットワークがあり、そのうちの1つであるセロトニン系は、セロトニンという化学物質を用いている。うつ病患者の脳ではなんらかの理由で、健康な人に比べてセロトニン系の活動が不十分で、ほかの脳部位の活動が適切に調節されなくなっている。その結果、意欲が低下したり集中力が欠如したりする。
セロトニン系の活動を正常なレベルに高めるの「プロザック」という薬。アメリカではハッピードラッグとしても用いられている。しかし薬には副作用がある。不眠、過食、焦燥感が出る。未成年者では自殺のリスクが高まるという説もある。類似役のパキシルは、服用によって攻撃的になる。
利用が広がるスマートドラッグ「リタリン」
リタリンはADHDの治療に用いられている薬物。アメリカでは200~400万人の児童と100万人の成人に処方されている。ところがADHDでない人がリタリンを服用しても、集中力が向上するといわれており、服用が広がっている。アメリカの大学生の16%は、試験勉強のためにリタリンを服用しているという。またリタリンを服用すればSAT(アメリカの大学進学試験)の得点が3~5%ほどアップすると言われている。さらに「ネイチャー」誌による英語圏の研究者を対象としたオンライン調査では、研究者の5人に1人がリタリンを集中力や記憶力を高める目的で使ったことがあるという。基本的には覚せい剤と成分が類似していて、副作用としては依存症などが問題視されている。
予想されるテクノロジーの未来図
米国の物理学者ミチオ・カクの「2100年の科学ライフ」
(近い将来起こること)
・ウェアラブルコンピュータの常時ネット接続
・自動車の自動操縦
・再生医療の進展
・ナノマシンの医療における利用
(2050年までに起こること)
・遺伝子改良
・ナノテクノロジーを用いた物質の変形
・感情を持つロボットの作成
・核融合エネルギーの利用
(2100年までに起こること)
・人間と機械の融合
・寿命の延長
・新種の生命の創造
・宇宙観光
(問題点)
・人口増加
・ハイテク失業
・人間と人工知能の争い
・ナノテクノロジーの暴走
レイ・カーツワイルの「スピリチュアル・マシ―ン/1999年初版」
・2019年には家具や衣類など、あらゆるものにコンピュータが組み込まれる。
・2029年には人間の脳と情報を直接やりとりすることが可能になり、重要な知識は自己学習するコンピュータによって生み出されるようになる。その結果農業、工業、輸送などにおいて人間の雇用がほぼ失われる。
・2099年には人間とコンピュータとの違いははっきりしなくなり、知的生命体の「平均寿命」はもはや死語となる。
生物学者リー・シルヴァーの「複製されるヒト/1997年初版」
・遺伝子操作を用いたデザイナー・ベイビーは2050年までに実現する。
・遠い将来、遺伝子を操作した人類と操作していない人類の生物学的な違いは大きなものとなり、別の生物種となる。
テクノロジー進歩の否定派の主張
人類のテクノロジーによる能力増強。より幸福な社会になるのだろうか。
否定派の考え方。物事にはある一定の水準を超えると事態が変化するという境界線がある。ビールを1~2杯飲むだけならそれを楽しむことができる。しかし10杯飲むと泥酔したり、急性アルコール中毒に陥る。適切な飲酒量というものが存在する。
自動車の運転速度も同じ。テクノロジーにも同種のものが存在し、現代社会はこの「閾」に近づきつつある。
ターミネイタ―2はいい映画でした。60年代は「2001年宇宙の旅」、70年代は「スターウォーズ」、80年代は「バックトゥザフューチャー」、2000年代は「アバター」としたら、90年代は「T2」がSF映画の代表作でしょう。
しかし半ズボンでイケメンのアクセルローズ、変わりようが激しい(笑)。
スティーブルカサーと同じような感じか。やっぱ食い物が原因やろね。ボンジョビとかミックジャガーとかはルックス維持してるけど。まあミックは賢いです。トマ・ピケティとかケネディ大統領と同じ大学出てる。というかノーベル賞受賞者も20人ぐらい輩出してる学校。日本でいうと一橋大学みたいなとこ。
おまけにもう一曲。
いまから100年後♪
人びとはいまと同じように感じ♪
いまと同じようなことを話しているだろうか♪
ザ・バーズで「100年後の世界♪」。 「ロデオの恋人」からの1曲です。1968年このアルバムからカントリーロックが始まった。バーズというよりグラム・パーソンズの作品といっていい。かれはこの後フライング・ブリト―・ブラザースを結成する。グラムは1973年にオーバードースで亡くなる。26歳没。
donさん、こちらでは初めましてですね!よろしくお願いします。
『T2』は確かに90年代を代表するような大ヒット映画ですが、わたしは、最初の『ターミネーター』が好みです。
『エイリアン』も『エイリアン2』より最初の方が好きです。
どちらも、2の方が大作&派手なんですが、1の方はどちらも低予算なのがむしろ幸いしていて、恐怖感が地味に淡々と迫ってくる演出がなされているのが私のツボですね。
『100年後の世界―SF映画から考えるテクノロジーと社会の未来 』の中で触れている(らしい)SF映画は大体どれも観ていますが、私が勝手に推すのは『2001年宇宙の旅』と『ガタカ』です。
『2001年宇宙の旅』は誰もが知っているのでパスして、『ガタカ』はそれ程有名ではないと思うのですが、とても面白い作品です。遺伝子改良の是非について、人の尊厳について考えさせられる、非常に感動的な内容だったと記憶しています。
ああ、アクセル・ローズの右の写真はパペット人形ではないのですね?