イタリアが大変みたいです。
「国の借金時計」が登場したようです。先週だったか、三橋貴明のブログに書かれてました。『重大かつ決定的な事実として、イタリアが債務不履行(デフォルト)に陥る可能性がある』
イタリアは独自通貨国じゃなくユーロ加盟国なので、日銀みたいに円が刷れません。なので緊縮財政です。雇用がないので失業率は二桁。若年層失業率は4割です。日本の若年層失業率は2017年データで4.6%。10倍も開きがある。
3月4日の総選挙で、「緊縮財政派」vs「減税や歳出増で雇用増派」が激突します。新しい需要は沸いて出てこないので、結局政府が公共工事なんかで需要をつくるしかない。日本と違ってイタリアは勝手にユーロを発行できないので、歳出増するとデフォルトします。「移民制限派」と「移民容認派」の対立軸もある。いろいろと判断が難しい局面です。
イタリアといえば塩野七生。今週彼女の新刊を読んでましたが、さずがに何十年も在住して地べたの空気を吸ってるだけに、イタリア不況の描写が興味深かった。
イタリアの悲劇
消費が冷え込むことは恐ろしい。イタリアは厳しい緊縮政策のおかげで、深刻な不況にあえいでいる。
かつてのイタリアは家族を大切にする国民だった。家族間の殺人事件はめったに起こらず、政府は信用しなくても家族は信用していた。それが今では、家族内の殺傷沙汰が連日のように報道されるようになった。
失業者、短期の非正規、未就業者という職がない人が、20代に留まらず40代にまで広まったからで、この人たちが狭い家の中で、顔を突き合わせるがゆえに増えた現象なのだ。それで家庭内殺傷は貧しい家ばかりに起こる。
学校を出たら就職して家を出て独立する。クリスマスやバカンスのときだけ家族が顔を合わせる。というのがこれまでのイタリア人の生活だった。それがクリスマスや夏休みでもないのに、家族は常に顔を突き合わす状態になった。
イタリアには「カッサ」がある。労働組合の給与補てん基金。足りなくなると国庫から補てんする。景気が悪化すると経営者は従業員をここに入れる。反対に上向くと従業員を呼び戻す。景気悪化中は労働者をプールしておくのが、この基金のもともとの目的だった。
右肩上がりの時代は機能していた。いまは違う。「カッサ」に送られても呼び戻される可能性なし、が常態化しつつある。しかもいつまでも「カッサ」にはいられない。
大企業に勤めてた父親が「カッサ」中。母親は夫が失業するとは思ってもいなかったので専業主婦。大学まで出した息子は就職氷河期の犠牲となって職が見つからない。同じく大学を出た娘は教職を望んでいたが正規がなく非正規。毎朝2時間もかけて地方都市へ行き、1日2時間の授業を週に2日引き受けているが、その給料では独立はできない。これがイタリア労働者一家の現実。
かつてイタリアの殺人は恋愛沙汰で起こっていたが、今は貧しさと将来への不安で起こる。悲劇の原因はイタリア企業が労賃の安い国に出ていき、職が減少したことにもよるが、イタリアの事情によるところも大きい。
財政健全化を最重要視したゆえの増税、税務の警察化。すでにイタリアの租税負担率は平均して53%。消費税は22%から2018年には25.5%(生活必需品は4%と10%)となる。イタリアでは家も自動車も売上30%減となっているが、消費冷え込みの真因は増税。
いまから2000年前のローマ時代。皇帝トライアヌスは失業者救済のために増税するよりも、収益の3分の1の本国イタリアへの投資を課した法のほうを成立させた。トライアヌスは五賢帝の1人とされているが、帝国の領土を拡大したことよりも、職をつくり出し、帝国の中心であったイタリア半島の空洞化を阻止したことが大きい。
ローマ帝国はどうやって難民問題を解決したのか
いまイタリアには1日1千人の難民がやってくる。難民はイタリア人と同じ待遇を要求する。イタリアの一般市民は怒っている。職を与えよというが、イタリアの失業率は13%、若年層に至っては40%になる。どうやったら彼らに職を与えて、イタリア人並みの待遇を与えることができるのか。
難民は昔からいた。古代ローマ帝国は、これにどう対処していたのか?
侵入を阻止する壁はない。シェンゲン条約なんてむかしからあったと思うくらい、入るのも入った後の行動も自由だった。ただし条件はつけた。
ローマ帝国の法は絶対に守ること。反すれば容赦ない厳罰が待っていた。
いかなる理由があろうとも、難民には特別の保護は与えられなかった。その生存は自助努力によると決まっていた。ローマ市民には保証されていた、餓死しない程度の小麦の無料配布もない。
衣食住が保証され納税義務のない奴隷よりも、難民は厳しい環境で生きていかねばならなかった。それでも努力次第なので、経済界で成功する者もいれば、医師や教師になるものもいた。医師と教師には一代限りとはいえ、ローマ市民権が与えられた。
その一方で難民発生地の安定化も忘れなかった。強大な軍事力で内乱が起きないようにし、安全になったと見るや資金を投入し生産地にし、雇用を確立した。
当時はシリアもリビアもローマ帝国内。これら属州への投資は盛んになる一方で、帝国の本国であるイタリア半島の空洞化が心配された。そのため資産の3分の1は本国に投資すべきと法によって決めた。
EUを悩ませてる難民問題は、ローマ帝国のマネができないことから来ている。まず強大な軍事力を持ってないこと。内乱を抑えたくても内政干渉になってしまうこと。難民にも市民と同じ権利を保証しようとしたことで、市民側の反発を招いたこと。
尖閣諸島をどうやって守るか
ガンダムやゴジラを始めとする日本製のキャラに守ってもらう。巨大なガンダムが島の平地にすっくと立つ。世界中の話題になること必死。もし中国側が爆弾を落とすことでオモチャを破壊しようとすれば、世界中のもの笑いになるから、中国もそんな愚かなことはしない。
かつて古代ローマの消費税は首都ローマで6%でも、国境沿いは最高でも3%だった。理由は蛮族という仮想敵への最前線に位置すること、軍事基地があることへの補てん。それと消費税を低く抑えることで、その地域へのヒトとカネの流入を狙った。インフラ整備は国がやり税率も低くする。生産品の購入も保証する。あとは自分たちで考えてやれと。その結果、軍事基地が置かれた国境沿いは軒並み活性した。
同様のことを考えれば消費税が10%でも沖縄は5%とする。また本土でも基地のある市町村は同じ理由で5%とする。基地があるゆえに生じる住民の不都合は、沖縄と同様に対処する。