古事記・池澤夏樹訳~あらすじざっくり

一度全部読んでみたかった古事記。

今回14年11月初版で池澤夏樹現代語訳の古事記が出ました。日本文学全集第1巻とのこと。このあと内田樹訳の徒然草、酒井順子訳の枕草子、いとうせいこう訳の曽根崎心中、川上未映子訳のたけくらべ等楽しみです。

全30巻の予定は以下。

古事記

超訳だったり、桃色語訳だったり、大阪のおばちゃん語訳だったり、近年いろんなアプローチの現代語訳がありますが、本作はバランスよく訳してます。現代人にわかりやすいけど媚びず、古典の息づかいも感じさせるという。中庸です。

ちなみに著者が現代語訳の基礎として使ったのは、本居宣長の「古事記伝」という礎石の上に構築された西郷信綱の「古事記注釈」だそうです。お父さんの福永武彦訳の古事記も参考文献に入ってる。

古事記とは何か。一言でいうと「天皇神話」です。今から1300年前に、太安万侶(おほのやすまろ)が編纂し43代元明天皇に献上しました。ちなみに元明天皇は在位8年ですが、平城京遷都、和同開珎鋳造、風土記の編纂を始めたり、事績が多いです。

古事記には、三種類のテクストが混在しています。まず中心となるのは「神話・伝説」。次に延々と神名・人名が羅列される「系譜」、そして「歌謡」。

「系譜」は政治的です。反抗しがちな地方豪族を中央集権に束ねるという意図がありました。アマテラスを中心とする天のヒエラルキーをそのまま地に下ろして、豪族たちの祖先をそれに組み込む。そのために神の数は限りなく増え、その名が羅列されることになった。古事記の神の名・人の名のリストはすごい。登場する神だけで312名です。

本書は397pと結構なボリュームですが、「系譜」と「歌謡」をざっと読み飛ばしたり、脚注を拾い読み程度におさえると、3時間ぐらいで通読できます。だからそんなに身構えることなく気楽に読めます。

古事記は上巻、中巻、下巻に分かれてます。本書にはすべて含まれている。

以下に上中下巻の簡単なあらすじ要約を。



古事記・上巻あらすじ

天上界と地上界が初めて開けたとき、高天の原に生まれたのはアメノミナカヌシの神、タカミムスヒの神、カミムスヒの神の3名、その後2名の神が生まれ(名前は省略)、この5名は天の神の中では別格。

次に8名の神(名は省略)が生まれ、最後にイザナキの神とイザナミの神が生まれる。

イザナキとイザナミが性交して、淡路島と四国が生まれる。そのあと九州も生まれる。国を産み終えたあとは神々を産みまくる。産んだ島は十四で、神々は三十五名。

妻であるイザナミは子供を産んで亡くなってしまう。イザナキは黄泉の国まで会いに行くが、見てはならないものを見て、怒った妻が追いかけてくる。逃げ切ったイザナキは妻と絶縁して、みそぎをする。

そこから神々を産みまくり、最後に三貴子を産む。イザナキが言うには、アマテラスオホミカミは高天の原を治めること、ツクヨミノミコトは夜の国を治めること、スサノヲは海原を治めること。

スサノヲは高天の原に行き田の畔を壊し、糞をまき散らすなどの乱暴をする。アマテラスはスサノヲの所業を見て、天の石屋戸に入り閉じこもる。

高天の原は真っ暗になるが、神々が集まってパーティをして、特にアメノウズメノミコトがストリップショーをして大盛り上がりし、アマテラスは外に出てくる。

神々は協議してスサノヲを出雲に追放することにする。スサノヲは出雲でヤマタノオロチを退治する。ヤマタノオロチの腹の中からは、立派な草薙の太刀が出てくる。

その他上巻には、因幡の白兎の話や、ウミサチビコ、ヤマサチビコの話などがでてくる。ちなみに海幸彦と山幸彦の話はほとんどそのままインドネシアの民話にある。19世紀に欧州の学者が口承文芸から採取した民話は、1300年前に日本に伝わった話であったことに驚く。

古事記・中巻あらすじ

初代天皇の神武から十五代天皇の応神まで。有名なヤマトタケルの話や、三韓征伐(新羅と百済が服従する)の話が出てくる。

ヤマトタケルの生涯について、出生からいくつもの冒険を経て死に至り、さらに白い鳥となって飛び去るまで詳細に辿られる。彼は粗暴な美少年から父に疎まれる悲劇の英雄になり、多くの女たちに慕われ、郷里に戻る途中で力尽きて亡くなる。

系譜によればその一方で実はたくさんの子を作った。即位はしなかったけどほとんど天皇に準じる扱いを受けた。ヤマトタケルは「古事記」において最も一貫性のある統一的な英雄伝である。

ヤマトタケルはなぜ死んだのか。間違いを「言挙げ※」したから。「この白いイノシシはたぶん神の使いだろう。今殺さなくても帰りに殺せばいい」と言って山に登った。すると激しい氷雨が降り朦朧となってしまう。白いイノシシは神の使いではなく、神そのものだった。間違いを言挙げしたから死ななければならなくなった。

⇒補足※辻原登がわかりやすいので過去記事から。
『日本では「万葉集」の時代には言霊信仰というのがあった。言葉には霊力が宿っていて発せられた言葉の内容を実現する力がある。だから言挙げという行為が一番忌み嫌われる。これは相手の素性を暴露して屈服させる呪文。相手の起源を暴露して、おまえの起源はだめだ。そういう呪いの言葉。これをやったら罰せられる。ヤマトタケルノミコトが死ななければならなかったのは、言挙げしたから。』

古事記・下巻あらすじ

十六代仁徳天皇から三十三代推古天皇まで。下巻は天皇をめぐる女の話が多い。仁徳天皇の正妻は嫉妬深く、夫の恋人を徹底して排除する。

面白いのは評判の美女メトリを弟を使者に立てて得ようとする。しかしメトリは正妻の嫉妬が嫌で弟の妻になるという。二人には皇位を奪う野心があったけど追い打ちの兵に殺される。王の名代として迎えに行った使者が美女と仲良くなるのは、トリスタンとイゾルデの話と同じである。

その他の読書メモを。



<呉服>
三国志で知られた呉は織物の技術で抜きんでていた。日本書紀によれば使者がわざわざ呉まで行って4人の女性の技術者を招来した。「服部」という姓は「機織り部」に由来する。また「呉服」という言葉は千数百年を経て今も使われている。

<八咫烏>
大きなカラス。八咫は「や・あた」で「あた」は長さの単位。親指と中指を開いた長さをいう。

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