【サカナとヤクザ/鈴木智彦】書評と要約

ヤクザ専門誌「実話時代」の元編集長、鈴木智彦のルポ本。

この人の本は面白いんですよね。「ヤクザと原発」とか。

身を削った潜入ルポ。今回の本も取材を5年もかけてやってる。

年に何冊も出版する商業作家さんとは全然違います。

鈴木氏が英語圏で活動してたら、ピューリッツアー賞とってるかも。

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以下は本書の概要まとめです。

密漁とはルール破りの漁業。海水浴客が磯のサザエやアワビをとっても、漁師が許可を受けてない魚種を捕獲しても、禁漁期間を守らなくても、規定サイズ以下の稚魚を採捕しても、いずれもが密漁になる。一部には暴力団が深く関与している。

まずアワビ、平成15年時点で日本で取引されている45%、およそ906トンが密漁アワビという計算結果となった。ぼくたちはアワビを食べるとき、2回に1回は暴力団にお金を落としていることになる。市場に流通する半分が密漁アワビ、いわば盗品というのは異常な事態。アングラアワビの売上をキロ4000円で計算すると、密漁の市場規模は約40億円。アワビ一品でこれだけの金額規模。

北海道では有名な観光朝市が泥棒市になっていた。黒いダイヤと呼ばれるナマコ(中国で珍重される)を狙う密漁団は深夜素潜りの限界ラインである水深40メートルまで潜り、毎年数人が行方不明になる。北海道東端の根室では北方領土海域にレポ船や特攻船が出現し、密漁が街を支えてきた。

首都圏でも暴力団は漁業に食い込んできた。7年連続水揚げ日本一の千葉県銚子港は漁業組合のボスが暴力団だった。

移転問題で揺れた築地市場(著者は4か月潜入労働した)で働く年配者は、誰もが暴力団と市場の蜜月を知っている。

ウナギの稚魚であるシラスは、水産庁も認めるほど暴力団に牛耳られて密漁が横行。絶滅危惧種に指定されたいまも、その3分の2が密漁、密流通。いまどきこれほど黒い産業はない。

⇒密漁品はとうぜん産地偽装されます。流通してるものの半分とか3分の2が「産地偽装」ってどないやねん(笑)。しかも食品。製造業のデータ改ざんが可愛く思えてくる。漁師さんや市場の人に「コンプライアンス厳守」って難しいのかもしれない。漁師さんの年収は2百万円台まで下がって高齢化してるし。どうすんのコレ。

以下にその他の読書メモを。

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漁業は地雷

「あまりにも地雷が多すぎて下手に突けない」

「うっかり手を突っ込めば日に当ててはいけないものを引っ張り出してしまう。そこで体を張ると体がいくらあっても足りない。水産庁が手を突っ込みたくない気持ちはすごくよくわかります」

東京海洋大学の勝川准教授はいう。実際、漁業をちょっと取材するだけで、密漁や産地偽装などの諸問題がごろごろ出てくる。叩けばホコリどころではない。

消費者も共犯。安くて評判の寿司屋に行ってどこから商品を集めてるか聞く。「市場で買ったらこの値段で出せるわけがない。うちはスペシャルなルート持ってるよ」と言われ、ラッキーだと笑いあう。

ほとんどの人間は水産物を金としか思っておらず、資源保護とか言い出せば、融通が利かず、和を乱す異分子として糾弾されるだけ。

水産庁、大手水産業者、漁師、漁業組合、市場関係者の誰もが、自分たちの腹に寄生虫がいるのを自覚している。もし密漁がなくなれば、カニもウナギもアワビもたちまち値段が上がる。

北方領土を2島返還してもらう方法がある

昭和26年サンフランシスコ講和条約の調印で日本の主権は回復する。これによってマッカーサーラインは消滅。このとき日本は正式に千島列島と南樺太を放棄したが、ソ連はこれに調印せず、ソ連との戦争だけ終わらなかった。このため2国間で平和条約締結が模索された。

吉田茂首相は色丹と歯舞群島の返還プランをもってソ連との交渉に挑み、ソ連も二島返還を打診していたという。ならば二島は返ってくる。この2つは北海道の地続きのような島。地元は返還ムードに沸きお祭り騒ぎだったらしい。

ところが日ソの和平が日米関係の亀裂になるという危惧から、アメリカが圧力をかけた。日米同盟保持を主張する吉田首相は方針を転換し、二島に加え国後と択捉の合計四島を返還するよう要求した。

日本の豹変を受けソ連は強硬路線に変わった。吉田首相の退陣で誕生した鳩山内閣は粘り強く交渉を進め、昭和31年に日ソ共同宣言を発効し両国は国交を回復したが、二島引き渡しは後日、平和条約を締結した際に行われることになってしまった。

いまに至るまで、北方領土問題はここから何も進展していない。

⇒サカナの本やけど北方領土問題の経緯がすごくわかりやすかったのでメモしました。この前プーチンさん、北方領土返還したら米軍が展開するからヤダって言いましたよね。安倍さんは米軍は展開させないってプーチンさんに言ったみたいですが、それは日米地位協定があるからムリです。

日米地位協定第二十五条、日米合同委員会において、「合衆国が相互協力及び安全保障条約の目的の遂行に当たつて使用するため必要とされる日本国内の施設及び区域 」が決定される以上、日本の総理といえども「北方領土を返還しても米軍は展開させない」と約束し、それを守ることは不可能。

日米地位協定を「他国並」とし、アメリカ軍の展開について日本国民の主権で決定できる状況にしない限り、ロシア側としては「日本は主権がないのに何言ってんだ。日米地位協定を修正してから出直してこい」という話にしかならないです。

憲法9条2項の変更⇒日米地位協定の改定⇒北方領土返還交渉という順番です。自衛隊は軍じゃないので海外で自衛隊を裁く軍法すらない。アメリカもそんなおかしな軍と互恵的な地位協定は結べない。はじめの一歩は9条の改正。それができないと何も前に進みません。

日米地位協定については、以下にまとめています。

【知ってはいけない 隠された日本支配の構造/矢部宏治/17年8月初版】
https://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2017-09-19

ウナギはビッグビジネス

鰻の稚魚、シラスは巨額の利益を生む。シラスの価格は絶滅危惧種指定後にキロ300万円の大台を突破し、銀の価格と並んだ。平成29年にはついに470万円となり、金の価格と並んだ。

漁業は県によってルールが変わる。シラスウナギも県境をまたぐと条例が変わる。県境のジレンマは密漁全般の抜本的課題。

取材した大手業者の専務は以下のように語った。

「瀬戸内はシラスなんて関係ないと思ったらけっこう獲れるんですよね。岡山や兵庫は組合があってないようなもので、県が関与してないんです。県が関与してるのは鹿児島や宮崎、四国、千葉や静岡辺りですね。兵庫の内水面の組合長とシラスの話になってね、近年シラスが高騰して暴力団絡みが入ってきたって。そのシラスはどこ行ってるんですかと聞くとごまかされましたが」

「自分たちみたいな大規模業者はまとまったいいやつがあればいい。ゴミみたいな安いの買ったって意味ない。ある程度値段はちゃんと出します。送金なんかしたら証拠残るし直接行きます。シラスに関してはダブルスタンダード。やっぱり闇業者の流通は止まらない。どこのシラスですか?って問い合わせがあれば、海です、で終わるんです。産地はどこでも関係ないです。シラスに名前は書いてないですし」

「問屋さんも今の法律では一切罪にならない。獲って指定業者に持って行かなかった人だけが捕まる。今シーズンは70人ぐらい捕まった。売りに来た時に捕まえて没収して、その人がゼッケン(採捕許可)持ってる人だったら略奪して10万円の罰金。けど買う側は罪にならない。麻薬の場合は買っても売っても罪になりますよね。ある意味必要悪っていったらあれですが、シラスはないと困りますからね」

闇ブローカーの手を借りなければ、大手にもシラスは入らない。大手がこうした意識なのだから、シラスの流通は今後も透明化されるとは思えない。

⇒まあ世界的な絶滅危惧種を、みんなが牛丼チェーンで食ってたらそうなりますよね(笑)

ニュージーランドの下げゼリ

日本の上げゼリに対して、ニュージーランドは下げゼリ。徐々に値段が下がっていって、一番高い金額の人が競り落とす。市場が決めた最低価格まで誰も落札しないと、セリでは売らず輸出する。最低落札価格は輸出価格。輸出が前提にあって、輸出金額よりも高い値段ならば国内に売る仕組み。

時代に応じた適切な売り方があるのに、日本はやり方を変えようとしない。外圧がないと変われないというなら、消費者に現状を知ってもらい、社会問題化する必要がある。

⇒どうなんでしょうね。いまのままでもいいような気もしますが。やっぱあかんか。乱獲を止めないと日本の漁業は壊滅していく。「魚が食べられなくなる日/勝川俊雄」という本に書いてありましたが、日本の天然資源の漁獲量は1970年代後半に1000万トン。現在は370万トンです。実に最盛期の4割をきってます。原因は単純に「乱獲」です。規制をせず何でもかんでも獲りすぎた。他の先進国みたいに乱獲を禁止して、漁業を成長産業にしなくちゃ。そのためには暴排条例の徹底からか。一般企業みたいに。

Down by the sea
海の近くで♪

I found your hidden treasure Just you and me,
ぼくたちは 二人だけの 秘密の宝物を見つけたんだ♪

We overdosed on pleasure
とても とても幸せな日々♪

1982年のベストミュージックの1つ、メンアットワークでダウン・バイ・ザ・シー♪ ソングミーニングというサイトがあって、歌の意味というか隠喩(メタファー)が解説されてます。海外サイトなので和訳はされていませんが。

解説によるとメンアットワークはオーストラリアのバンドだけど、コリン・ヘイはスコットランドに14歳ごろまで住んでたそうです。それでこの歌はポーツマスの海の歌じゃないかと。

そこで若い男女が初々しい喜びのひと時を過ごした。そんな歌です。Eating out the coreという歌詞は、「中心部で外食した」じゃなく「ビーチでオーラルセックス」と推測されています。となるとyour hidden treasureは彼女の隠された性感帯のことか。歌詞だけ直訳すると、淡々とした海辺の風景描写なんですが。歌はいろんな風に解釈できます。ちなみにキャプテン・ベンホーに敬礼は、ポーツマスにベンホーの胸像があるそうです。

ちなみにこっちのライブバージョンもクール。

(関連記事)
【魚が食べられなくなる日/勝川俊雄/16年8月初版】
https://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2016-10-08

【日本を破壊する種子法廃止とグローバリズム/三橋貴明/18年4月初版】
https://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2018-05-15

【三つの山口組/藤原良/17年10月初版】
https://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2018-02-06

【ユニクロ潜入一年/横田増生/17年10月初版】
https://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2018-03-27

【ヤクザとオイルマネー/渡邉哲也&猫組長/17年9月初版】
https://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2018-01-06

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