長期推移の購買力平価から見たドル円の適正値は80円前後でしょうか。現状の円の価値は半分になってしまっています。
上記の1973年からの長期推移をながめてわかること。
・通常は購買力平価の企業物価ベース以下になるべきなのに、2012年12月から反転した。この年に何があったかというと、アベノミクスの異次元緩和が2012年12月スタート。
・さらに購買力平価から最近は大幅に乖離している。これは米国がコロナ救済ばらまき後にインフレになって、物価高を抑制するために金利を大幅に上げ、日米間に金利差ができたことによる。
購買力平価については読書メモで後述しますが、日本でリンゴ1個100円で米国で1ドルなら、為替は1ドル100円に収束する、という理論です。
なぜそうならないのか?
簡単にいうと為替は実体経済に引っ張られずに、マネーゲームに引っ張られるということ。本来なら生活に根付いた為替になるべきなのに、より大きな取引である投機マネーに引っ張られているということ。これは構造的なものなのでどうしようもない。
今後はどうなるのか?
・日本以外の国はインフレで金利が大幅に上昇している
・日本は政府の借金が多く金利を上げると金利払いが多くなるので上げられない
・主要国経済が底堅く推移して各国の長期金利が高止まりする限りは円安が続く
・もし主要国で景気が悪化し長期金利(政策金利)が大きく引き下げられるなら円高に振れる
・もし日本が大幅なインフレになると政府の実質借金も目減りするので金利が上げられる
・金利差が少なくなると1ドル100円ぐらいには戻る
・フローがなくてストックで持ってる老人などはインフレは困る。日本は老人比率高い
購買力平価とは
上記グラフ図1は、国際通貨研究所が公表している73年を基準とするドル・ 円相場の「購買力平価」だ。22年以降、実勢のドル・円相場の購買力平価からの乖離が、ドル高・円安方向へ大幅に進んでいることが分かる。購買力平価とは為替相場 を評価する際の一つの考え方で、日本と米国など異なる国の間で、同じモノ・商品が国際的に同じ価格になるように為替レートが決定されると考える。
例えば、リンゴ1個が日本で100円、米国で1ドルであれば、為替レートは1ドル=100円に決まるとされる。もし、為替レートが1ドル=100円のままで、日本のリンゴが110円に値上がりすると、日本で米国から100円(= 1ドル)の安いリンゴの輸入が増加し、リンゴの輸入代金を手当てするための円売り・ドル買いも増加するため、為替レートはドル高・円安方向へ変動する。
最終的に1ドル=110円になると両国のリンゴの値段が同じになり、為替レートの調整は終了する。この例からも分かるように、購買力平価ではインフレ率が高い国 (この例では日本)の通貨が下落することになる。またこの例のように、商品の価格を直接比較して同じモノは国際的に同じ値段になると考えた為替レートを「絶対的購買力平価」という。
これに対し、ある基準時点からの両国の経済全体のインフレ率の違いから、為替レートのあるべき水準を測ったものを「相対的購買力平価」という。相対的購買力平価の水準は、基準時点をいつに置くかによって影響を受ける。そのため、水準そのものではなく、異なる時点間で為替レートが購買力平価のトレンドに対して割高・割安方向のいずれに推移したかをみるものとなる。
週刊エコノミスト24年4月23日号より