世界中で話題になったエドワード・スノーデンの歴史に残るリーク。
あなたはどのような印象をお持ちですか?報道を見た時のファーストインプレッションは中国のスパイ?国益を破壊する過激なサヨク?
その後の報道を見ても、グリーンウォルド(本書著者、スノーデンの一連のリークを報道したジャーナリスト)はゲイだとか、スノーデンは高校中退だとか、関係者は頭のネジが1本抜けたような病的な人たちだと。
ゲイというのはアウトサイダーであり、アウトサイダーは「自分が何者であるか常に見つめてる」深い人が多いと思います。スノーデンも本書を読めばわかりますが、天才的なハッカーで、組織の中で学卒を押しのけて自らの能力で昇進していきます。
本書の概要は以下。
1章:スノーデンはなぜ著者にコンタクトし、著者はなぜスノーデンが本物だと思ったか。
2章:著者がホンコンでスノーデンに会うまでがスパイ小説のように展開される。
3章:アメリカ政府がスパイしてた具体的な内容。
4章:監視の害悪を著者の意見としてまとめてある。
5章:マスコミからボコボコにされた著者やスノーデン。ひとつずつ反論していく。
今回は以下の3点に絞った読書メモを。
・アメリカ政府がやってたこと
・なぜアメリカはここまで過激な監視システムを作ろうとしたのか
・なぜスノーデンは年収20万ドルを蹴ってまで、暴露を決意したのか
米政府がやってたこと
アップストリームによる傍受(光ファイバーケーブル経由)と、インターネット企業(グーグル、アップル、フェイスブックetc)サーバーからの直接収集PRISMが一番の収集方法だが、これに加えてコンピューターネットワーク利用と呼ばれる方法も利用する。これは対象ユーザーのパソコンに不正プログラムを混入させて監視下に置くという手法。いわゆるハッカー。世界中の10万台近くのコンピューターに特定の不正プログラムを忍び込ませている。ネット経由で感染させるのが一般的だが、ネットに接続してない状態でもコンピューター内に侵入し、データを書き換える秘密の技術も徐々に開発している。
監視プログラムの多くは米国民を対象とするものだが、世界中の何十もの国々も大規模な無差別監視の標的とされ、米国の友好国も諜報対象とされていた。その数は2013年3月からのたった1か月間だけでも、メール970億件、通話1240億件。
なぜ過激な監視システムはできたのか
NSAを9年前から長官として指揮しているのは陸軍大将のキース・B・アレキサンダー。就任以来ずっと組織の規模と影響力の拡大を積極的に図ってきた。アレキサンダーの戦略はただひとつ。「すべてのデータを収集しなければならない」。彼はその一点にひたすらこだわり続けた。
アレキサンダーはイラク占領時、米軍の軍事諜報活動にことさら不満を募らせていた。当時は疑わしい武装勢力に集中した諜報活動が行われていたが、彼にしてみればそんな方法は生半可すぎた。彼の要求により全イラク国民の携帯メール、通話、Eメールなどを、あらゆる技術を駆使し、無差別に収集することを決める。
アレキサンダーはイラク向けに作られたこのユビキタス監視システムを、アメリカ国民の監視に導入できないか考えるようになる。彼は安全保障という名のもとに、あらゆる情報を集めるために奔走する。
彼はこれまで「NSAのカウボーイ」「究極のスパイマシンをつくる、違法すれすれの起動装置」「結果を出すためには、法律無視も厭わない男」などと報道されている。
しかしこのシステムの成果は惨憺たるものだった。中道派のシンクタンクの研究でも「このシステムがテロ行為の阻止に効果があるとは思えない」と結論づけられた。テロ行為を阻止できたほとんどのケースは、従来の調査手段によってもたらされた。
人生を棒に振ってもスノーデンが暴露を決意した理由
CIAでコンプライアンス違反を上司に訴えたが相手にされず、NSAでも倫理観の欠如に悩み、これは告発すべきという使命感が揺るぎないものになっていく。
「私はネットのおかげで自由を味わい、ひとりの人間として自分の能力のすべてを知ることができた。多くの若者にとってネットは自己実現の場だ。彼らはそこで自分が何者なのか探り、何者になりたいか知ろうとする。しかしそれが可能になるのは、プライヴァシーと匿名性が確保される場合だけだ。何かを失敗しても、正体を明かさずにすむ場合だけだ。私が危惧してるのは、そんな自由を味わえるのも、もしかしたら私の世代が最後になってしまうかもしれないということだ」
「私たちは他の誰にも見られてないと信じれるときだけ、自由と安全を感じることができる。何かを試し、限界に挑戦し、新しい考え方や生き方を模索し、自分らしくいられる。ネットの魅力はまさにこの点だ。個人的な領域でこそ正統性への挑戦が生まれる。国の監視を誰もが怖れる社会では、それらの大切な要素が失われてしまう。その結果、国による大量監視は本質的に弾圧へとつながる。監視は自由を制限する」
「アメリカ国家安全保障局(NSA)の能力をもってしても、すべてのEメールを読み、すべての通話を聞き、全員の行動を追跡することはできない。監視システムが効果的に人の行動を統制できるのは、自分の言動が監視されているかもしれないという認識を、人々に植え付けるからだ」
よく言われることで、この本でも言及されてるのはジョージ・オーウェルの「1984年」です。オーウェルが創造した世界と、NSAが作り上げた監視国家との類似性。
ヴァンヘイレンで1984♪