グーグルの人事担当副社長が書いた本「ワークルールズ」要約まとめ

壮大なデータ分析の本。

たぶん今年出版されたビジネス本では、一番価値があるんじゃないかな。ほぼ全ページが読書メモになってしまう。

まぁ元々エンジニアがA/B分析を繰り返すような会社だから、会社の制度自体も、A/B分析のような手法で改善してる。制度が固まってない、若い会社の特権です。真っ新から作りあげる楽しさがある。

最高の人材を集めて(アナリストやらコンサルやら)、ああでもないこうでもないとやってます。読んでると、本当にユートピアというか理想の会社になってる。こういうのって、楽しそうだなぁ・・・

なるほどと思ったのは、行動心理学のデータは「大学2年生の思考パターン」だと。ああいう実験は大学教授が、大学2年生を使ってやるので、自社にマッチするかどうか。だからこそグーグルは自社で実験を繰り返し、トライ&エラーで会社の制度を改善してる。

著者はラズロボック。グーグルの人事担当副社長。1972年共産主義政権下のルーマニア生まれ。マッキンゼー、GEの勤務(報酬福利厚生担当副社長)を経て、2006年にグーグルに入社。従業員が6000人から6万人に増えていく過程で、グーグルの人事システムを設計し、進化させてきた責任者。グーグルは世界各国で「最高の職場」として認められ、数多くの賞を受賞している。著者自身も、過去10年にもっとも「人事」に影響を与えた世界の10人に、2014年に選ばれた。

いい本なんですが、全558p、ぼくは読むのに10時間以上かかりました。

以下に要約読書メモを。



グーグルの採用活動

グーグルの採用活動が約2万人に達するまでは、ほとんどの社員が週に4~10時間を採用に費やし(全社員リクルータやってるみたいです)、最高幹部は丸1日を費やすことも多かった。採用に年間8~20万時間が使われていた。

しかもここには人材募集チームが費やす時間は含まれていない。効率的な採用法を見つけるには、数年にわたる調査と実験が必要だった。

2013年には社員数は4万人に増えていたが、平均的なグーグル社員が採用に費やす時間は、週に1.5時間にすぎなかった。採用に費やす時間を約75%削減した。

グーグルの人材募集チームのアナリストで博士であるトッドカーライルは、(グーグルの人事部は、元々の人事屋、コンサル、アナリストと3種類の構成員)受験者ひとりにつき25回もの面接を行うことが、本当に役立つかどうか調べた。

カーライルは受験者を採用すべきかどうかは、4回の面接によって86%の信頼性で予測できることを発見した。その後の面接では1回につき1%しか予測精度は向上しなかった。

グーグルが余分な時間をかける価値も受験者が苦労する価値も、まるでなかったのだ。グーグルは「4回の法則」を実行に移し、受験者が実際に受けられる面接の回数を制限した。この変更でグーグルが採用に費やす平均時間は、従来の90~180日から47日に減り、社員の労働時間は数10万時間も短縮した。グーグルの採用率は0.25%。毎年200万人が応募し、数千人を採用している。

グーグルの面接での質問例

人事部(ピープル・オペレーションズ)は面接ガイドをリクルーターに送る。その一部は以下。

・あなたの行動がチームに前向きな影響を与えたときのことを聞かせてください。補足質問:あなたの主要な目標は何であり、その理由は何でしたか?チームメイトの反応はどうでしたか?今後はどんな計画がありますか?

・目標達成のためにチームを効果的に運営したことを聞かせてください。あなたはどんなアプローチをとりましたか?補足質問:あなたの目標は何であり、個人としてチームとしてそれをどう達成しましたか?チームのメンバーそれぞれに応じてリーダーシップをどう変えましたか?こうした特定の状況から学んだ最も重要なことは何でしたか?

・他人とうまく協働できなかったときのことを聞かせてください。あなたから見て、その人とともに働くのが難しかった理由は何ですか?補足質問:問題を解決するためにどんな手順を踏みましたか?その結果はどうでしたか?ほかにどんなことができたと思いますか?

ほとんどの面接は、時間の無駄

面接者が最初の10秒で得た印象を確証するために、99.4%の時間が費やされている。

初めに好印象をもてば、面接者はその印象をさらに補強する理由を探す。気に入らなけらば、採用面接は実質的にそこで終わっている。面接者はそれ以後の時間を不採用にする理由を探すために費やす。短い時間の観察は「薄切り」と呼ばれる。

2000年のトレド大学での研究では、面接の結果は最初の10秒で下された判断から予測できるとされた。

受験者がドアをノックして席に着く10秒で終わる薄切りビデオがつくられ、実験を知らされてない被験者に示された。

被験者は、採用可能性、適正、知力、意欲、責任感、信頼性、冷静さ、人格的温かみ、礼儀正しさ、好感度、表現力の評価表を渡された。

すると11の評価項目のうち9項目について、「薄切り」ビデオと、最終評価が関連していた。握手や簡単な自己紹介から得られる第一印象は、構造的採用面接(あらかじめ質問を決めて行う)の結果を予測させるものだった。

面接による職務能力予測はどこまで可能か

1998年のメタ分析結果。19の異なる評価方法を調べてわかったのは、よく行われている非構造的面接は、採用されたあとにどれくらいの業績を上げるか予測するには、不向きだということ。

非構造的面接の決定係数は0.14。社員の職務能力の14%しか説明できない。身元照会は7%、職務経験年数は3%、筆跡学(筆跡による能力解析)は0.04%。筆跡学を利用するのはナンセンス。

グーグルの実験ではマネージャーは必要との結論

グーグルのエンジニアはマネージャーは重要でないと固く信じていた。2002年にラリーとセルゲイは社内のマネージャー職を廃止した(補足:文鎮型組織を採用した)。

グーグルの採用

マネージャーは必要悪で、たいていは自分の邪魔をし、官僚主義を生み出すと。しかしこの実験は短命に終わった。

すべてのエンジニアをウェイン・ロージングの部下にしたが、ウェインは経費報告書の承認や、社員同士のもめごとに忙殺されたのだ。

マネージャーに対するチームの満足度を調査すると(分析等は本書で)、最高のマネージャーを擁するチームは業績も良く、離職率も低かった。実際、マネージャーの質は社員が辞めるか残るかを予測する、唯一にして最高の指標だった。社員は会社を辞めるのではなく、ダメなマネージャーと働くのを辞めるのだ。

グーグル社内で調査、研究した優れたマネージャー像

二重盲検法(研究条件詳細は本書で)による調査をグーグル社内で行った。研究の結果、スコアの高いマネージャーと低いマネージャーの違いがわかった。

それは8つある。普遍的で当たり前の結果だった。

1.良いコーチであること
2.チームに権限を委譲し、マイクロマネジメントをしないこと
3.チームのメンバーの成功や満足度に関心や気遣いを示すこと
4.生産性/成果思考であること
5.コミュニケーションは円滑に。話を聴き、情報は共有すること。
6.チームのメンバーのキャリア開発を支援すること。
7.チームに対して明確な構想/戦略をもつこと
8.チームに助言できるだけの重要な技術スキルを持っていること。

意外にも優れたマネージャーの8つの属性のうち、8の技術的専門知識の重要度は低かった。とはいえ、プログラムを書けないエンジニアリング部門のマネージャーは、グーグルでチームを率いることはできない。

社員が社員にボーナス

多くの会社が「今月の最も優秀な社員」を互選させているが、グーグルでも一人1回175ドルまで、管理職の承認や手続きなしで、社員が社員にボーナスを支給できる。

悪用に関しては心配無用だった。この10年で、社員ボーナスを悪用した例は数えるほどしかない。社員が気づいて指摘することが多い。

グーグルの福利厚生の一例

じつは無料の食事と、送迎シャトルバスと、託児所以外は、ほとんど費用はかからない。

グーグルの福利厚生



パートナーの死に直面した場合のグーグル社内規定

大多数の会社が遺族に死亡手当を用意しているが、十分ではない。社員が亡くなるたびに、残された配偶者を会社として支える方法を検討していた。

グーグルは2011年から、未行使のストックオプションに相当する金額を、残されたパートナーがすぐに受け取れるようにした。

さらに社員の死後10年間、給与の50%を支給する。子供がいる場合は19歳になるまで(全日制の学生は23歳まで)、ひとりにつき毎月1000ドルを加算する。今のところ、会社としてのコストは給与総額の約0.1%だ。

アメリカの平均的な企業は毎年コストの4%を給与の増額に使っている。3%が年次増加分、1%が昇給分。

この3%を2.9%に減らす代わりに、遺族への保障制度を導入した。

社員が一番必要としているときに、寄り添うべきだ。

グーグルの産休

グーグルの産休は5カ月。変更前は3カ月だった。産休と育児休業のあいだも、給与とボーナスを全額支給する(ストックオプションの権利も)。出産祝いボーナスは500ドル。2011年にその制度に変更した。

それまでグーグルの女性社員は、出産後の離職率が会社平均の2倍に達していた。制度変更後は離職率の差はなくなった。

産休を2カ月延長するコストより、その社員の専門知識を会社が失わないことと、代わりの人材を採用して、訓練する必要がなくなることで節約できるコストのほうが多かった。

グーグルの原点

1996年、ウェブページを順位づける方法は、ページ上のテキストと、検索クエリ(検索ワード)を対照することだった。しかしこれには抜け道が残ってしまう。

たとえば自分の運営するペットフードのサイトに人を集めたければ、ブルーの背景にブルーの文字で、「ペットフード」と100回書くことで検索順位は上昇する。もしくは読者には見えないソースコードの中に、語句を何度も繰り返す。

ラリーは考えた。最も有益なページには、ほかのサイトより多くのリンクがあるはずだ。人は有益なページにしかリンクを張らない。

しかしウェブ上のリンクを特定し、あらゆるウェブサイトにまたがる関係の強さを、すべて同時に表にまとめられるプログラムをつくるのは、超人的に複雑な課題だった。

幸いセルゲイもその課題が魅力的であることに気付いた。2人は「バックラブ」という検索エンジンを開発した。

会社を始めるために大学を去るのは気が進まなかったため、ラリーとセルゲイはグーグルを売却しようとした。だができなかった。

アルタヴィスタに100万ドルで買わないかと持ちかけたが、断られた。続いてエキサイトと交渉し75万ドルまで値下げしたが、断られた。

時間があればクロームの検索窓に「do a barrel roll」と打ち込んでみて

けっこう面白いですよ。会社で画面をほかの人が見てるときにやると、めっちゃウケます♪

現代社会では♪
みんなコンピューターと会話してる♪
ぼくはその外側で生きてる♪
人の温もりやふれあいを求めて♪

リック・スプリングフィールドでヒューマン・タッチ♪1983年のヒット曲。この曲で描かれた未来社会は2016年。とAIのようなサリーが答えてます。

Rick Springfield – Human Touch
レスポンシブ広告

シェアする