すごいですよね。米中貿易戦争。
1980年代の対日貿易戦争、半導体の時と比較する人がけっこう多いです。
かつて日本はシリコンアイランズと呼ばれていました。覚えてる人は少ないけど。
ちなみにシスコからサンノゼあたりはシリコンバレーと呼ばれてます。
半導体の主な素材はシリコンなのでそう呼ばれる。
そう。日本は半導体王国だったのです。
半導体メモリのDRAMのシェア。1987年日本は世界の80%を占めていました。
約30年前、世界の半導体売上ランキングは、1位から3位までをNEC、東芝、日立と日本企業が独占し、トップ10には5社、20位までに10社がランク入りしていました。20年前には首位をインテルに奪われましたが、20位まで8社が入っていました。
90年代後半から韓国が日本を抜き、その頃から日本メーカーの衰退がはじまる。合従連衡を重ねて経営破綻や再生。衰退していきます。
なぜ日本の半導体産業は沈没したのか?
以下に読書メモを。
なぜ日本の半導体は衰退したのか?
一番の原因は「日米半導体協定」。1991年6月にスタートした協定では、日本は使用する半導体の20%以上を外国から買うという約束をさせられる。日本の半導体をせん滅したいと思っていた米国の声を反映した協定で、明らかなGATT違反だと欧州は反発したが、日本政府の弱腰外交で不平等協定に合意し、協定を守るよう各企業に命令した。
プロセッサ(CPU)はアメリカが優位だった。インテル、モトローラ、TIが強かった。特許や著作権で防御し、他社の参入を防いでいた。
日本はメモリに重点を置いて開発していたので、プロセッサに関しては出遅れていた。しかしオリジナルメーカーから特許や著作権の許諾を受けて、全く同じ機能の製品をつくるメーカーも現れた。これをセカンドソースと呼んだ。
開発費負担がなくオリジナル製品より安く、アメリカでも増えていた。やがて日本メーカーは改良をはじめ改良が大幅になり、オリジナルの特許範囲に抵触しないものも出始めた。
とくにNECのVシリーズはセカンドソースと改良型が混在し、こうした開発に神経質になったアメリカは、特許権、著作権を厳密に捉え、多くの提訴をした。
NECは一連の訴訟に勝つのだが、係争中、ユーザーは提訴の対象になった製品を買い控え、NECはビジネスで大きな痛手を受けた。
シェアが8割にもなった日本製に恐れをなし、特許でも政治でも対日圧力を強め、弱腰の日本政府の対応とで、日本半導体が衰退することとなった。
バブル崩壊で日本の半導体メーカーは資本力を失う
1990年代はじめのバブル崩壊が経済を大きく減速させ、日本企業は資本力を失った。半導体は売上の15%以上の設備投資が必要な装置産業なのに、投資ができなくなり、衰退に拍車をかけた。投資を止めればすべては終わりの半導体事業は、こうして命運を断ち切られた。
この間隙を縫って韓国が力をつけビジネスに邁進。米国勢は韓国メモリーを応援した。
半導体生産装置技術の衰退
半導体生産には生産装置の技術が要で、日本の半導体企業に勢いのあったころ、光学機器の最先端技術を持つニコン、キャノンが、微細加工が必要な製造装置で世界の市場を席巻していた。その技術は半導体製造装置に生かされ、露光装置に生かされ、1990年代末には50%以上の世界シェアを得ていた。
今、最先端の液浸露光装置は光学限界を超える領域に入り、技術難易度が極度に高く、価格は1台50億円もする。オランダASMLは2000年代初頭から力をつけ、最先端の露光技術をいち早く実用化。
開発費負担が経営を圧迫していたニコンやキャノンからシェアを奪い80%のシェアを得ている。「競争力の差はもはや挽回不能」とニコンは半導体生産装置から撤退。会社存続の危機に立たされている。キャノンは最先端露光装置では製品化直前で開発中止、市場参入せず撤退した。
まとめと感想
いかがでしたでしょうか。きっかけは米国との不平等条約かもしれませんが、根本原因は資本力がなくなったのとデフレです。
90年代中ごろ、自分が担当してる仕事で韓国企業と競合していました。会社の先輩とかとよく言ってたのは「あいつらアホほど設備投資しよるで」「世界の需要減るのに、ぜったいペイせえへん」
90年代初頭に韓国企業が投資した設備費用は、その後インフレで半分の貨幣価値になりました。日本はそのままです。
日本は借りたカネは満額きっちり返さないといけないけど、韓国はインフレで物価が2倍になってるから、感覚的には借りたカネの半分を返したらいいという。
インフレは富める者から貧しい者へ、貯蓄者から債務者に、市民から政府に富を移転する行為です。いわゆる所得の再分配。なんで日本政府はこれをしないのか。
世界と同等レベルのインフレにするには、増税をやめて政府がもっとカネを使ったらいい。公共投資。最近ではMMTが世界的な大流行になってます。財務省はネガキャンしてますが。
日本の財政破綻論。日本はデフォルトはしません。じゃあどうなるか?
吉田繁治の2年ほど前の本では以下。デフォルトはしないけど日本の財政破綻状態とは。
『年金56兆円、医療費38兆円、公務員報酬35兆円は、現在の給付額から20%~30%の削減が必要となる。そのほかの影響として円安が生じる。国債の損が300兆円(マイナス30%)、地価で500兆円(マイナス30%)、株価で150兆円(マイナス30%)。合計で950兆円の資産価格の下落が想定できる。
資産の下落幅としては1990年のバブル崩壊(土地で1000兆円、株価で400兆円)よりは小さい。資産損としては2008年のリーマン危機の米国並み』
まあなんです。資産持ってない庶民は増税より財政破綻のほうがいいです。資産価値の下落があっても資産持ってないし。
公務員の人は一時的に給料が安くなります。家族に公務員がいる人にはツライかもしれませんが、客観的にみると日本の公務員給料は世界基準の4割ほど高かったはずです。
年金と医療は自分でなんとかする。ゼロになるわけじゃなくて3割減なんだから。
個人的にはMMTでインフレにしてほしいです。経済は好転すると思います。万一財政破綻状態になっても庶民の暮らしにはあまり影響はないと思う。
ただ安値で日本の資産を海外勢に買い漁られるのがちょっとシャクやけど。
「半導体業界勢力図」を、2020年11月の日経ビジネスから。
プリンスで、シリコン♪
「ニコンは半導体生産装置から撤退….」
http://www.nikonprecision.com
米国では健在?