2013年新書大賞1位「社会を変えるには」要約まとめ

「社会を変えるには、あなたが変わること。あなたが変わるには、あなたが動くこと」

2013年新書大賞受賞作。517ページの力作なので、じっくり読んでみてください。そして社会を良い方向に変える、たたき台にしてください。

いまの日本の苦境をポスト工業化社会としてうまく説明しています。日本の製造業の就業者数は1992年がピークで、94年にサービス業に抜かれました。欧米は70年代から80年代に製造業が衰退したのに、なぜ日本ではおきなかったのか。

・先進国で衰退した製造業を、肩代わりする新興国だった。

・冷戦という国際環境で対米向け輸出を一手に担っていた。

・他の新興国はレベルに達してなかった。

・石油ショックのあとオートメーション化に成功し、生産性が他国を圧倒した。

・人員削減の影響は、女性、地方、中小企業が負担をかぶり、それに補助や保護を加えた。

・1980年代半ば時点で、未婚女性、主婦、学生、高齢者などからなる「第二労働市場」=マックジョブは、全雇用者の60~65%を占め、主要先進国の中では最高だった。石油ショック後の雇用格差は、日本で起こらなかったのではなく、周辺化され目立たなかっただけ。

・こうして80年代までは「日本型工業社会」が築かれ、大企業に中小企業が、都市部に地方が、男性正社員に女性と若者と高齢者が、それぞれ依存した。言い換えればマックジョブや家事を引き受けてくれる人がいたので、大企業や男性正社員の生産性が上がっていた。

・日本社会が全体に若かったので、平均賃金も安く、賃金差も目立たなかった。しかし日本型社会は1990年代になると機能不全になります。

・円高や冷戦終結などにより、大手製造業が中国やアジア諸国に生産拠点を移した。

・規制緩和と自由化(日米構造協議)が行なわれ、経済が低迷していった。

・経済の低迷に対して日本政府は公共事業を増やした。しかし財政負担問題から減少させた。

・建設業に頼っていた地方の窮状が増した。

要約すると、規制緩和と補助金や公共事業の削減が行なわれたことによって、下支えを失って一気に問題が露呈したということです。

著者は原発は消えていくべきだし、「ジャパンアズナンバーワン」へのノスタルジーを断ち切り、社会を変える動きを活性化させることが大切だと言います。

以下に読書メモを。



楽しいとき

それ自体が楽しいとき、目的であるときは、人間は他人に自慢したいとか、他人を貶めたいといった「結果」を求めない。受験勉強が典型だが、ほんとうは楽しくなくてむなしい行為のときは、他者と比べて自分の位置を測るとか、他者を貶めて優位に立つといった「結果」がほしくなる。

左派と右派

ギデンズ(トニーブレアのブレーン)の定義だと、左派というのは計画経済や福祉政策など、政府が適切な政策をやれば、適切に社会を設計できるという考え方。右派は伝統に帰れ。市場にまかせろ。人間の理性はあてにならないから、市場の判定の前に謙虚に従うべきという考え。

しかし日本では右派(保守政党)が「所得倍増計画」や乱開発をやったり、左派(革新政党)が自然保護主義を唱えたりしたので、必ずしもこの定義はあてはまらない。

自由主義と民主主義の違い

自由主義は権力から自由になるのがいいという考え方。民主主義はみんなで権力をつくるのがいいという考え方。

自由主義は小さな政府。権力はできるだけ小さく、できるだけ税金が安く、人々が自由になれば良い。近代民主主義はみんなで「われわれの権力」を作り、「われわれの意志」が反映されて運営されることが目的になる。「われわれの権力」なのでよい権力だから大きくてもいい。
大きな政府。税金をたくさんとっても、規制をしても、みんなの合意で福祉政策などをやってくれるなら良い。

なぜアダムスミスは経済自由主義を考えたのか

当時のイギリスは、貴族が運営していた政府の弊害があった。名誉革命で立憲君主制ができたが、フランス革命のように身分制はなくならず、議会を握っていたのは貴族と地主だった。貴族という理由だけで大臣の座についた者も多く、有能でもなく利己的だった。だからスミスは、政府は余計な介入をしないほうがいいという考え方になった。

また国を豊かにするのは貴族ではなく、中下層の生産者たちだとも考えた。スコットランド出身のスミスがイングランドに留学したさい、イングランドの農民の勤勉さと、貴族の大学教授の無能さが印象に残ったからだ。

前回1929年の大恐慌の流れ

アメリカでは無制限の金融資本主義が恐慌の原因になったとして、証券と銀行を分離し、投資商品を銀行が扱うことを禁止した。またニューディール政策によって、政府の財政出動で公共事業を行った。

イギリスではケインズ経済学が台頭した。ケインズが考えたことは、政府の経済への介入を増やし、投資家より労働者を重視することだった。

いまの日本でもそうだが、デフレの元では、物価も下がるけど、労働者の賃金も下がる。そうなると働く人には不利だが、お金を持っていて物を買う人が有利になる。すでに資産を持ってる人や、資産を使って投資する人が、働く人より有利になる。

そこでケインズはこう考えた。世の中には企業家と労働者からなる「活動階級」と、投資家や債権者からなる「非活動階級」がある。財政出動で国内の雇用を作り出せば、通貨の供給量が増えて、ゆるやかなインフレがおき、賃金は上がるが資産が目減りする。そうすると働く生産者が有利になり、資産家は不利になる。賃金が上がれば国内市場を活性化させ、企業家にも有利になり経済が回復する。さらに相続税を大幅に上げ、資産家から取り上げて、それを財政出動経由で社会に還元する。

大恐慌と国債金融危機はモノを生み出さない金融取引で、一部の資産家が利益を得る経済が破綻を招いたことを意味した。それを踏まえ働く生産者を重んじて国内経済を立て直し、国際金融システムも安定的に整備するという考えだった。

季節は巡り続け[るんるん]
木馬は上がったり下がったり
ぼくらは時の回転木馬
輪の中を回り続ける♪

アメリカンニューシネマ「いちご白書」の主題歌。作者のジョニミッチェルバージョンで。

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