トラップ(音楽)とは?「USヒップホップの現在」まとめ

ここ数年、一大ブームとなったトラップ。

もういろんな人が、サウスになってしまった。趣味で毎週ビルボードアルバムチャート見てると、ラッパーばかりです。とくに北米のドレイクの強さは異常。

むかしプリンスはどんどんアルバムを出したがりました。でもレーベルからストップがかかった。あんまりバンバンだすと飽きられるし売れない。ここで彼は葛藤して、独自の販売方法を確立していきます。

いまラッパーたちは、毎年のようにフルアルバムを出してる。チャンスザラッパーなんかは、レーベルの争奪戦があったけど、どこも断ってタダで音楽を配信してる。ライブというか商標で儲けるというか。

米経済誌のフォーブズがヒップ・ホップ・アーティストの稼ぎ高ベスト20を発表。以下がそのうちのベスト10。期間は2016年7月から2017年6月までの1年間。1$110円換算。

1) ディディ(ショーン・コムズ) 143億円
2) ドレイク 103億円
3) ジェイ・Z 46億円
4) ドクター・ドレ 38億円
5) チャンス・ザ・ラッパー 36億円
6) ケンドリック・ラマー 33億円
7) ウィズ・カリファ 31億円
8) ピットブル 30億円
9) DJキャレド 26億円
10)フューチャー 25億円

チャンスすごいよね。音源タダで配信して1年でこんだけ稼ぐんやから・・
1位の人はラッパーというより、もはや実業家。

まあ英語は第一言語4億人、第二言語4億人、話せる人が8億人なので(合計16億人)、単純に日本の10倍以上のマーケットがあって恵まれています。音楽だけでなく、ライターもそうなんでしょうけど。

トラップ、サウス、ヒップホップ。ぼくにとっては新世界。だから最近ちょっと調べてる。聴くだけじゃなく、すこしは言語化したいので。

最新情報は単行本より雑誌が早い。ミュージックマガジンの特集から要約読書メモを以下に。



トラップ・ミュージックとは何か?

トラップとはヒップホップのサブジャンル。アトランタに代表されるアメリカ南部(サウス)で生きる男のブルースであり、普遍的なポップミュージックの役目も担っている。

もともとトラップとはジョージア州アトランタにおいて、ドラッグの売人、ドラッグを売買する場所、ドラッグを売ってカネを稼ぐことを指す隠語。

トラップが1つのジャンルとして大きく認知されるようになったのは、00年代になってから。03年アトランタのTIが「トラップ・ミュージック」をリリースする。トラップハウスで稼ぎながらクールにラップをキメて、自らをサウスのキングだという。その後アトランタラッパーたちが次々とヒットを飛ばす。

彼らがヒットを放つことと並行して、サウンドの特徴も出来上っていった。通常の2~3倍の速さで鳴るハイハット(チキチキ)や強調されたヘヴィなドラム。派手なシンセ、遅めのテンポ。

やってる本人はイケイケのものを作ってるつもりなのに、部外者には暗くて、内省的なものに聞こえちゃう。閑散とした盆踊りに迷い込んだ気にさせられる。閉塞感がすごい。

トラップビートを量産するビートメイカーも名をあげる。ゼイトーヴェンやレックス・ルガー。10年代に入ってからはサウスサイド、メトロブーミン、TM88、ソニー・デジタルたち。10年代からの若き担い手こそ、今のブームを作りだしている旬なビートメイカー。彼らはアトランタを拠点に活動する。

なかでもズバ抜けているのがマイク・ウィル。13年にリアーナをプロデュース、マイリーサイラスも手掛ける。ポップディーバでさえアトランタ産のトラップに乗せてリスナーを躍らせる。ビヨンセが16年のスーパーボウルで披露したFormationも彼のビート。

全米でムーブメントになったマネキンチャレンジ。テーマ曲のブラックビートルズもマイク・ウィルの手による。ヒラリークリントンや、本家のポールマッカートニーまでが彼らの楽曲に合わせてチャレンジ。

こうしてアトランタのトラップはどんどんビルボードの上位に送り込まれ、カニエやドレイクなどのサウス以外のスターラッパーもこぞって南部産のビートを欲しがった。

17年に入ってもミーゴス、フューチャーと快進撃は続く。フューチャーは2週連続で自身の異なるアルバムがビルボード1位を獲得した、史上初のアーティストとなる。

最近ではリル・ヨッティによってバブルガム・トラップという新ジャンルも確立された。よりポップで、ファンタジーめいた内容のラップ。

トラップのメッカ、アトランタ。ここは全米でも所得の差、貧富の差が激しいことで知られる。そのギャップは13年、14年と連続してワースト1位になったほど。金持ちとビンボーがはっきり分かれ、肌の色でも分離される。彼らにとって身近な成功への道は、イリーガルなものを売りながら日銭を稼ぐこと。そしてキャッチ―なラップヒットを産み、一獲千金のチャンスを狙う。その魅力の根源には、ブルースにも似た精神性が宿る。

ケンドリックのA&R力

ケンドリックはラッパーとして一流だけど、実はA&R力が優れてる。1stがサウスで、2ndでサウスのビートをやめた。3rdでマイクウィルでもう1回サウスに戻した。A&R的なセンスが働いて、ちょっとU2呼んじゃった。U2が入ることで台無しになるかと思ったらならなかった。ぜんぜんボノ節じゃない。

ケンドリック=ショートケーキのイチゴ論。ヒップホップをケーキとすると、ケンドリックは頂点に乗ってるイチゴで。それは素晴らしいものだけど、イチゴだけでこれがケーキだと言われても困るという話。スポンジの部分はアトランタ。

ケンドリックのマッド・シティ♪  狂った警官を告発する詩。和訳付き。もうね、歌詞がロックすぎて、チャラいバックバンドはいらない。

カニエウェスト工房

最近もやっぱり面白い人。もう自分では詩も書いてない、音も作ってないというすごい人。工業製品みたいな、カニエウェスト工房。カニエウェストというブランドを持ってる人。専属デザイナーがたくさんいる。ソングライティングリストみると20人もいる。日本のマンガ家に近い。さいとうたかおプロダクションとか。目に瞳だけ入れるとか。

エミネム以降ではもっともロックファンに愛されたラッパー。じつはものすごくアウトソーシングしてる事実は、あまり知られてない。

カニエの3億回弱再生のストロンガー♪ カニエというよりダフトパンク。

さいきんのジェイZ

新譜が出た。「ブループリント」みたいなのをやると、おっさん扱いされるからものすごく考えて作ってる。お母さんがレズビアンだったと告白してて。フランクオーシャンのカミングアウトのとき、なぜ即支持を表明したか謎が解けた。

不倫の件もビヨンセに謝った。謝って、俺はもう少しでハル・ベリーと別れたエリック・ベネイになるとこだったと言って。いまエリック・ベネイが怒ってる。とんでもない流れ弾。

エリック・ベネイはプリンスの元奥さんと再婚して、キャリアがまた上向いてるのに、そんなこといわれたら腹立つ。

たぶん前後の「アウェイ」と「セイ」の韻を踏むために「ベネイ」って名前をだした。しかしジェイZは影響力がある。60年代生まれでトップに留まってるのは、ジェイZしかいない。
70年代前半も、シーンから追い出されてるのに。

とくに巧くはないけど、何をやってもジェイZになる。演技は巧くないけど、なにをやらせてもキムタクみたいな。

ベッキーと浮気したジェイZ。ビヨンセに「sorry」でディスられた。ジェイZは17年7月27日公開のキル・ジェイZで、上記バースで釈明。さらに、自分が一番悪い♪ 世界で一番クールな女の子を逃すとこだった♪まあ・・浮気がばれたら、平謝りしかないでしょ・・しかしビヨンセは許すのかな。



ドレイクは底辺からじゃない

ドレイクはトロントというより、子役上りということが一番重要。ビバリーヒルズ高校白書みたいなドラマで、体育会系の高校生役をやってた。ドレイクのプロデューサーのノア40も子役だった。2人ともジューイッシュ。ぜんぜんStarted from the bottomじゃない。

スポティファイに最適化された音かも。80年代の音はカセットに最適化されてた。スカスカでエコー感のある音楽って、カセットでコンプかけて再生すると際立つ。ベリーゴーディみたいに、わざとスポティファイで再生して「いいな」とかはやってないけど。

ドレイクとトロントってアトランタみたいな地元感がない。むかしは地元の仲間をフックアップするやり方が主流だったけど、それをやるとスタイルが似てしまい、縮小再生産のラッパーしかいなくなる。徒弟制の限界が出てくる。

それである時期からリル・ウェインが、カネで自分にない才能を手下に引き入れた。カナダから女子ウケのいいドレイク呼んだり、ニッキーミナージュ呼んだり。

やっぱStarted from the bottom♪ 個人的には一番サウスっぽいイメージ。

チャンスザラッパーのビジネスモデル

ストリーミング限定作品ではじめてグラミー候補になった。タダで音源を配って、ライブの宣伝にしてる。Kポップとかもそうで、ユーチューブで人気を集めて東京ドームを埋めちゃう。ビジネスモデルとしては近い。

日本だけが握手券とかやってるけど、アメリカのヒップホップで握手券はできない。死人が出る。ラッパーが何人も死んじゃう(笑)。恨みがあるやつとかビーフをやってる奴がくる。

やっぱ彼はこの歌かな。祖母を歌うクリスチャン・ラップ♪ 和訳付き。

フューチャー的なもの

ケンドリックがいてドレイクがいて。ここ5年の中心はフューチャーかもしれない。フューチャーというかフューチャー的なもの。フューチャーが使ったトラックメイカーが売れる。トレンドセッターになってる。ケンドリックもチャンスもカニエも個が立ってるけど、フューチャーは個よりフューチャー的な何かが増殖してる。

リル・ヨッティとか。あの髪にビーズとかしてる人たちは、みんなゆとりっぽい。アメリカにゆとり世代はないけど。

次から次に髪の毛にビーズしてるのが出てくる。なぜかギャルに近い色彩感覚をしてる。アトランタは南部なのに非アーシ―な文化がアウトキャストの頃からあって。アンドレ3000の変なセンスとか、エリカ・パドゥ曰く、あれはアトランタの男の美学。ヤングサグの女装もそうだし傾奇者。

フューチャーでYou Da Baddest ♪ ニッキー・ミナージュもいるよ。ドレイク(30歳)はミナージュ(34歳)となら結婚してもいいそうです。

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