「獺祭」飲むんだったら、読んだほうがいい本がある。

「獺祭」が好きなので読んでみました。社長の書いた本です。

正直まったく期待してなかったのですが、かなり面白かった。

山口県岩国市で4番手メーカーの酒蔵を、父親の急逝により引継ぎます。前妻の息子で勘当された身だったため、孤立無援で経営を始める。

つぶれそうになり、杜氏に逃げられ、社長みずから酒造りをはじめて、今日の日本酒トップの位置をつかみました。

2013年「獺祭」の出荷数量は1万1400石(日本酒は一升瓶100本で一石)と、純米大吟醸という酒別で全国トップとなり今も増えているそうです。2014年は1万6000石を生産予定で、実に日本全国の4分の1以上の山田錦を仕入れる予定であると。

「獺祭」を飲まれたことはありますか?

山口の人から、この酒は美味いからと頂いて飲んだのが初めてでした。純米大吟醸は、日本酒バーで月1回ペースでいろんな種類を飲んでたので、だいたい味の想像はつきます。で、獺祭を飲んでみると、あきらかに他の大吟醸と違う。これは別物やなぁと。

過去に何度か酒で驚いたことがあります。ビールではスーパードライ、ウイスキーでは山崎12年、焼酎では赤霧島、そして日本酒ではこの獺祭です。新酒の時期の「あらばしり」を除くと、一番好きな日本酒です。

経営者が現役のときに会社の本を出すと、会社は傾くと言います。

それはこの人の場合は当てはまらないんじゃないかな。攻めまくっています。2013年9月期の売上が39億円(前期比56%増)の会社が、2010年~2014年末までに50億円の投資をしています。2014年の生産量1万6000石を2015年に5万石に増強する計画です。

問題は山田錦が手に入らないこと。2013年は発注した山田錦4万3000俵に対して、4万俵しか入らなかった。

2014年は増築で1万6000石の獺祭をつくるために8万俵の山田錦が必要で、2015年にはさらなる増築で5万石の獺祭生産が可能になります。日本全国の山田錦の生産量が32万俵なので、かなりの見切り発車です。

山田錦

獺祭の社長は農水省の減反政策を批判し、農家が山田錦の生産に復帰することを訴えています。今のままでは獺祭が増産できない。

何というか有言実行タイプですね。スケールは違うけど、ヤマト運輸の「小倉昌男経営学」のように戦っている。

変に脚を引っ張る人さえいなければ、増産したいのに原料がないというような悲痛な願いは、成就すると思います。みんな前向きな話は必死に助ける。

以下に読書メモを。



日本酒需要の縮小

第一次オイルショックの年の最高980万石(一升瓶100本で一石)をピークに、現在は340万石まで縮小している。

獺祭をつくってるところ

旭酒造のある周東町獺越は山奥の過疎地。JR岩国駅から1~2時間に1本しかない岩徳線に乗り40分の周坊高森駅からさらに車で15分かかる。酒蔵のある地域の人口は戦後の3000人から500人程度まで急減している。

酒のありがたみは変わっている

1960年ごろの一升瓶は約500円した。大工さんの1日の日当でやっと2級酒が一升買える。今なら1日の日当分があれば、ディスカウントストアなら安い酒なら30本は買える。

世の中も変わった。宅配便とIT。むかしは一升瓶なら最低でも1500本積んでコンテナで送っていたが、今は1本でも全国に宅配できる。中小企業にとってはITの発展も画期的だった。ネットを通じて海外の個人客へも直接発信できる。

獺祭の由来

獺祭とはそもそも、書物や参考資料を広げて、詩文を練っている姿を意味する。その姿が、捕獲した魚を河原に並べる獺(カワウソ)の習性を思い起こさせるから。

正岡子規の別号のひとつが「獺祭書屋主人」(獺祭の社長は子規の進取の精神に共鳴している)。病の床につき身の回りのものを手の届くところに並べている自分を、カワウソに見立ててつけた号。また旭酒造がある獺越という地名の一字とも同じだから。

正岡子規



獺祭は四季醸造方式

日本酒を冬しか造らないという考え方は、技術・設備面が劣悪だった時代の慣習。近年までそれが受け継がれてきたのは、季節の出稼ぎである杜氏・蔵人が本業の農業が忙しくなって故郷に帰ってしまうことに加えて、酒蔵側にとっても、蔵人は酒造りに一番効率のよい冬季以外は帰ってくれたほうが人件費を安く抑える効果があったから。労使双方の利害が一致していた。

冬と比べて夏に仕込むと少し苦労はするが、それ以上に優秀な製造担当者を正社員で年間雇用できる。もしくは設備の稼動率が飛躍的に向上するため原価率が下がる、といった優れた面が四季醸造にはある。

補助金より行政にお願いしたいこと

台湾で獺祭を販売する人が「日本酒の関税をワインと同率まで下げれば、今の倍は獺祭を売れる自信がある」と。

台湾の日本酒輸入時の関税は40%でワインは10%。台湾の政府関係者曰く、台湾政府はワインも日本酒も一律に40%の関税を要求した。するとフランスからはすぐに減率の申し入れがあって、ワインは10%まで下げた。イギリスはもっと強く要望があり、スコッチの関税は0%になった。だけど日本は何も言ってこなかったので、40%のままだと。

フランスについては、「日本は本当に日本酒を売る気があるのか?」と。

「ワインは1本100円ほどの関税と酒税で日本に入る。同じ容量の日本酒は270円以上の関税と酒税を払わなければフランスに入れない。日本はちゃんと交渉してるのか」

父との確執で悟ったこと

人を傷つけることでなければ、できるだけ本音で話すことが大事ということ。

(追記)2020年社長のインタビュ

獺祭2020社長インタビュ

獺祭2020社長インタビュ

「獺祭」飲むんだったら、読んだほうがいい本があるよ。

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