ウクライナの人って、日本に来てやっていけるのかだろうか?
文化があまりにも違いすぎる。上表を見てください。
横軸が簡単にいうと国民のき真面目さ。ルーズかタイトか。左によればルーズで自由、右によれば秩序的でタイト。後述するので詳細はそちらで確認ください。
縦軸はウェルビーイング。持続的な幸福のこと。身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念。上のほうは幸せで下のほうは不幸。有名なのは国連調査、他にはギャラップやNEFの幸福度調査がありますが、別の調査機関によるもの。なぜか日本は上位です。
この表自体は、自由でルーズすぎても、秩序的でタイトすぎても不幸だ。中庸が幸せ。ということを示しているのですが、ぼくが引っ掛かったのは、ウクライナ。
あまりにも自由過ぎる国でした。かつて世界一美人の国とか、キエフは世界一の美人都市とか言われていましたが…
こちらの表の方がわかりやすいか。2011年「サイエンス」誌の7000人調査。
ウクライナがダントツのルーズな国でした。自由すぎるフリーダムな国。
「あなたの国には従うべき社会規範がたくさんありますか」などの質問に対する回答から。
タイトで有名なのはシンガポールですよね。ガムをシンガポールに持ち込んだだけで1300万円以下の罰金。路上に唾を吐いたら13万円以下の罰金、公衆トイレで水を流し忘れたら13万円以下の罰金。他にもいろいろある。
ルーズで有名なのはブラジルとかスペインとかオランダとかニュージーランドとか。自由過ぎる感じ。日本人としては憧れるけど。
文化というか国民性があまりにも違う人を入れると、失敗すると思う。
有名なのはダイムラーベンツとクライスラーの大合併失敗。
『クライスラーのアメリカ人社員は仕事のやりとりをしてる時は手をポケットに入れないというドイツの儀礼を学んだ。ベンツのドイツ人は敬称をつけたラストネームじゃなくファーストネームで呼ばれるのを不快に思った。ドイツ人は会議に事前に分厚い資料を求めて明確な議案を求めるのに対し、アメリカ人は会議はブレインストーミングや自由な対話をする場だと思っていた。9年間にわたって株価と社員の士気は下がり続け、2007年にこの「国際結婚」にピリオドが打たれた』
ウクライナの人に同情はしますが、彼らが長くやっていくためには、同じようなルーズな文化の国を選んだ方がうまくいくと思います。
タイトな文化 vs ルーズな文化の違い
国や文化は「タイト」か「ルーズ」かという観点でとらえることができる。
タイトな文化
社会の結束が強く、人が規範にきっちりと従う。秩序が保たれて犯罪が少ないが、社会が硬直しがちで多様性を受け入れにくい。
ルーズな文化
秩序を欠くが、社会が柔軟で多様性を受け入れる寛容さがある。
タイトな文化はイノベーションが育たない
アメリカの50万人規模の調査。タイトな州は発明が少ない。人口一人あたりの特許取得件数。
ルーズな州のほうが新発明が多い。
下記表を見ればルーズな文化でイノベーションが育つのがわかる。
ロシア国民は、なぜプーチンを支持するのか?
一言でいうとタイト⇔ルーズ文化の揺り戻し。ソ連崩壊の反動。1991年に過酷なまでにタイトだったソ連が崩壊。当初は国民の51%は民主主義を支持し、53%が国家の非介入、自由を支持した。ところが2011年の調査では、ロシア国民の68%が国家の介入を支持した。
なぜこうなったのか?
ソ連崩壊から1998年まで。ロシアのGDPは30%減少。とめどないインフレに悩まされ、犯罪が急増した。ウォッカやヘロインへの依存が急増。男性の平均寿命は1990年64歳⇒1994年58歳まで下がった。主因はアルコール依存、殺人、自殺。ロシアは崩壊しつつあった。
そこへプーチンが登場した。プーチンはタイトな秩序を取り戻した。2000年から2015年にかけて国民一人あたりのGDPの伸び率がEUは17%だったのに対し、ロシアは70%に達した。失業率は11%だったものが6%まで下がった。
プーチンの独裁による強権的手法。たとえば2013年の同性愛宣伝禁止法。LGBTQの権利を擁護する活動家や、ただ手をつないだだけの同性愛者が刑務所に送られるようになり、同性愛嫌悪による暴力は広まった。しかしプーチンのとったタイト化の方針は広範な支持を得た。
タイトな文化の揺り戻し。これはロシアに限ったことではない。エジプトの「アラブの春」。ムバラクの30年にわたる独裁を国民が叩き潰したが、現在はまた独裁に戻っている。
なぜか。エジプトは自由になって社会の状況が悪化したからだ。ムバラク失脚後犯罪率は200%に上昇し、株価は40%以上下落、GDPはほぼ横ばい、国の蓄えは1兆円以上減少、エジプト国民の44%が極度の貧困状態になった。
ムバラクのトップダウン型の統治が崩壊した後、社会の中で調整や規制のための仕組みがなく、最低限のことを満たす手立てもなかった。その結果ムバラク独裁時代にそっくりな状況に回帰したのだ。
自由か制約か?
プラトンは「国家」において、「哲人王」の治める家父長的な都市国家を支持した。表現の自由より秩序の方が重要とプラトンは厳しい施策を求めた。それは市民に害を及ぼすと思われる作家、詩人、美術家、思想を取り締まること。
孔子も同様だ。「論語」の中で秩序を求めた。皇帝は父親的に臣民を保護し、臣民は皇帝に忠誠を尽くす。孔子は「孔」の教えを重視した。「孔」は社会の秩序を維持する手段として、各個人にいかなるときも適切にふるまうことを求める。
17世紀のトマスホッブスは「リヴァイアサン」の中で絶対君主による統治を擁護した。「人の一生は醜悪で残忍で短い」から。
もちろん自由への擁護もたくさんある。
自由か制約か? 答えはアリストテレスの「中庸」かもしれない。
ランディニューマンがプーチンになりきった歌です。
本記事は以下の本からの抜粋を元にしています。
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面白いデータだと、
興味深く見ました。
確かにウクライナと日本は、
性格的に、対極の位置な感じですね^^;
ウクライナがこんなにルーズ(自由)な国とは
知りませんでした。
難民の受け入れは、私も色々思うところありますが、
何より、戦争が終わってほしいです。