なんでしょう、とても読みやすいです。作者と深いところで繋がってるような気がする。親近感というか、村上春樹の文章に感じるような感覚です。
著者はマッキンゼーで17年間働き、採用マネージャーとしてマッキンゼー日本支社の採用活動を10年以上やってきた。守秘義務に抵触しない範囲で、情報を開示しています。
面接時に必ず聞かれるリーダーシップ体験は、べつに部活の部長とかの役職ではなくて、町内会でおかしが余り(人数分無い)、だれも何も言い出さないときに、「お子さんのいる方は、持って返って」というような、有用な意見を提案できる存在であることです。
子供のために読んだ本ですが、じつは後半が大人にも役立つリーダーシップ論です。知ってるつもりでも、言葉で再認識できると理解が深まるような気がします。
以下に読書メモを。
目次
ビジネススクールの目的
米国のビジネススクールの戦略は、日本の大学とは異なる。彼らは世界中から留学生を集めているが、それには2つの理由がある。1つは世界中のタレント(才能)を集めることで、大学の地位と評判を確固たるものにすること。2つ目の理由は「アメリカ人学生に世界を教える」という目的。数十カ国から集まった同級生とともに数年間の学生生活を送ることで、アメリカ人は、世界についてさまざまなことを学ぶ。
世界各国からの留学生は、いわばアメリカ人にとっての「外国人サンプル」。最近はどこのビジネススクールも日本人学生の数が減っているが、「今後はインド人や中国人との働き方を、しっかりアメリカ人学生に教えておく必要がある」と考えた学校側が、新興国の留学生に一定の入学枠を与えたため、日本人の枠が減った。
コンサルファームのケース面接では何が見られるか
面接担当者が知りたいのは「その候補者がどれほど考えることが好きか」そして「どんな考え方をするか」という点。ところが候補者は例題集を覚えてきて、頭の中に蓄えた知識から、その問題の解放を取り出そうとする人がいる。「頭の中から知識を取り出すこと」と「考えること」はまったく異なる行為。候補者が知識を取り出すプロセスに入った瞬間に、「この人は考えるより知識に頼る人だ」と判断してしまう。
コンサルティング業務とは
根幹は、企業経営者向けのサービス業。
①経営課題の相談を受ける
②問題の解決法を見つける
③問題を解決する
それぞれに必要なものは以下。
①信頼感、包容力、リーダーシップ
②地頭
③人や組織に関する深い洞察や感受性、強靭な精神力、未知のものに対する楽観的な姿勢、粘り強さ、リーダーシップ
思考力とは
思考スキルではない。スキルは後から学べる。思考意欲と思考体力が面接時に確認される。考えることが好きで、半端でないレベルまで考えつくすことができる人。
マッキンゼーの採用基準
①リーダーシップがあること
②地頭がいいこと
③英語ができること
日本支社の場合は、④日本語ができることが加えられる。
日本の優秀な人は①と③は絶望的に欠けている。その一方で中国などからの留学生には、①~④まですべての条件を満たすものが現れはじめている。
面接で問われる重要事項
欧米企業や欧米の大学は入試や面接においてすべての人に、過去のリーダーシップ体験を問う。問題がおこったときに、どう対応すべきか、組織を束ねるためにはどのようなコミュニケーションが必要なのか、リーダーにはどの程度のプレッシャーがかかるものなのか。そういったことを実体験として理解してる人だけでチームを組み、問題解決に当たらせたい。
⇒べつにクラブ活動の部長が、リーダーシップというわけでもない。とくに理系の学生は忙しく、たとえば後輩を実験で指導したことなどが、リーダーシップだと認識してないだけ。この本を読んだぼくなりの理解では、リーダーシップとはわかりやすくいうと、仕切り屋の事。
学歴偏重なのか
スクリーニング(ふるい)基準と採用基準は違う。当然一定の学力はコンサルには必要。その学力に関する効果的な情報が、日本では大学名しかない。米国では入学時の統一テストの点数や、大学での成績が指標として使われている。日本でもセンター試験のスコアが学力基準として使用できるようになれば、大学名ではない基準で学力を判定する企業が増えるだろう。リーダーシップポテンシャルは重要な採用基準であるが、ふるいにかけるのは現状は大学名。
リーダーとは救命ボートの漕ぎ手
嵐でクルーズ船が遭難したときに、あなたと家族はどの救命ボートを選ぶか。当然湖でのボート遊びの場合とは、異なる基準で漕ぎ手を選ぶ。命さえ助けてくれるなら、漕ぎ手の性格が強引で人当たりが悪くても、無口で自分とは合わない性格であっても、そんなことは気にしない。
海の上を漂流して助けを待つ間には、数多くの状況判断や、乗員の統率が必要になる。時には厳しい判断や、リスクをとった決断もできる。真のリーダーを選ばないと命が助からない。
成果目標のないときに選ばれる「あいつはいい奴」とか「いつも一生懸命で好感が持てる」「一緒にいて楽しい人」「優先順位をつけずすべてを完璧に処理するよくできた人」などとはまったく違う概念。このリーダーシップと成果主義の概念が、日本では十分に理解されてない。
マネージャー、リーダー、コーディネーターの違い
マネージャーの業務は部下の労務管理、組織内の個々の仕事の進行管理や品質管理、予算管理。3名の組織ならマネジャーは不要。しかし3名の組織でも成果目標があればリーダーは必要。一方構成員の規模が一定範囲を超えると、とくに成果が問われる状況でなくても、管理者は必要となる。管理のために必要な役割と、成果達成のために必要な役割はまったく異なる。
リーダーシップのない人に成果目標を与えると、その人は結果を出すために無謀な方法に頼る。プレーヤーとしての自己の成功体験をメンバーに押しつけたり、根性論や精神論で乗り切ろうとする人もいる。部下や納入業者など力の弱いものをたたいて成果を上げようとする人も出てくる。チームのメンバーにとってはたまったものではない。
マネジャー向きの人は管理に適性がある。リーダーに必要なものはそれとは異なる資質。
また日本では調整役もリーダーと間違われている。なにか物事を進めるときに、利害関係の異なる人が多数存在する場合がある。そんな時にあちこちで話を聞いてきて、利害を調整するために足して二で割るような解決案を提示し「あちらもここまで譲ったのだから、こちらも一歩下がりましょう」といった交渉を仲介する人が調整役。こういう人が組織にいると重宝するし、もしそういう人が管理者のポジションに就いていれば、話がうまく進むことも多い。
しかしこの人はコーディネーターではあるが、リーダではない。なぜならこの人は、組織としての高い成果よりも、関係者の気持ちや組織の和を優先して行動しているから。リーダーとは「成果目標を達成するために組織を率いる人」だ。「成果目標に関しては妥協してもいいので、関係者全員に角が立たないようにする」のはリーダーシップではない。
調整役の人は、無用な摩擦を起さず、人当たりがよく、面倒見がよい人。清濁を併せ呑みながら、問題や摩擦を起さずに事を片づけることに才がある。しかし彼らは、成果を最大化するという目標を、必ずしも尊重してない。
リーダーの4つのタスク
①チームが目指す成果目標を定義する
②先頭に立って、リスクや責任を引き受ける
③リーダーとは決める人。情報がなくて決められない人にはリーダーシップはない。「A bad decision is better than no decision」十分な情報が得られるまで検討を続ける人は、誠実で善良な人なのかもしれないが、こんな(リーダーシップの欠如した)人に率いられる組織は、本当に災難。
④伝える。強いチームとは多様な価値観を持つ人が集まったチーム。そして多様な個性の 人が集まったチームでは、リーダーは常に「言葉で伝える」ことが求められる。
マッキンゼーの基本思想
①バリューを出す。
「何らかの成果を生む」といこと。会議で有益な発言をすれば、バリューを出したことになるし、ユニークな情報を入手しそれを分析した結果、画期的な洞察が得られれば、バリューのある分析、バリューのあるメッセージと呼ばれる。
よく言われる「会議で発言ゼロの人はバリューゼロ」とは、たとえ稚拙な意見でも何か発言をすれば、他の人の思考を刺激したりする可能性もあり、会議の成果物も変わるかもしれないが、発言ゼロでは価値が出る可能性は完全にゼロ。このバリューゼロはマッキンゼーでは最も恥ずかしいこととされている。
②ポジションを取る。
まず結論を出すこと。問われるのはプロセスではなく成果である。成果につながる可能性のある結論(メッセージ)が明確でなければ、「いったいなんの ために作業したの」「最終結論を左右しない枝葉末節の分析に時間を使うのはやめよう」反対に結論を左右する重要なポイントに関しては、入念に検証しなければならない。
早めにポジションをとることにより、さまざまな問題点が浮かび上がり、改善や修正をすばやく行なえるようになる。仮でもよいのでポジションをとって結論を出さないと、外部から反対意見さえ集めることができず、何を改善すればいいのか見えてこない。
スコットマッキンゼーでサンフランシスコ♪ ん、ちょっと違うか。