「マイルス・デイヴィス完全入門」読んでみた。

マイルスデイヴィス完全入門

ビートルズとデイヴィスとディランを語らせたら、右に出るものがいない中山康樹。デイヴィスのおっかけが高じて、スイングジャーナル編集長までなった人です。図書館にあるジャズ本はたくさん読みましたが、口語体で笑いがあって一番読みやすかったのが中山康樹の本です。

ぼくはジャズ初心者で、音源はたぶん200枚ほどしか持ってないし、デイヴィスに至っては15枚ぐらいしか聴いてません(デイヴィスの作品は300枚以上あるそうです)。

なんでこんな古い本を借りたかと言うと、かの有名な※マラソンセッションのデジタルリマスター5枚組みボックスを1200円で買ったから。

(※マラソンセッション:ジャズ専門のレーベルPrestige からメジャーなレコード会社 Columbia へ移籍したのだが、Prestige との間に残っている契約を履行するため1956年5月11日と10月26日のわずか2日間でアルバム4枚分の演奏を録音した。これらの演奏はほとんどがワン・テイクで録音され、4枚の LP レコードに収録されて1年に1枚という間隔でリリースされた)



デイヴィスを何から聴くか? いろんな人がいろんなアルバムを推してます。

ジョニミッチェルやジャクソンブラウンは、無人島にもって行きたい作品として(1人5枚のチョイス)、イン・ア・サイレント・ウェイを挙げていました。

村上春樹は「これを境に自分の中で何かが変わってしまうことだろう。そしてたぶんもう二度ともとの自分には戻れないだろう」と感じた「失われた一日」に、フォア・アンド・モアを聴いたそうです。

スイングジャーナル読者が選ぶジャズ名盤ベスト100の2位には、カインド・オブ・ブルーが入っています。20世紀の必聴盤でしょうか。

デイヴィスをデイヴィスたらしめているのは、革新性が第一に挙げられますが、ぼくはリアルタイムに聴いてないので、そこは響いてきません。

個人的には二つです。まずはノンヴィブラート奏法。多くのトランペッターが吹く音に対して、まったくといっていいほど「震えて」いません。この独特の奏法が最大限に光るのは、ゆったりとしたテンポにのってバラードを吹いたときであり、その繊細な演奏からは、次のような有名な形容詞が生まれることになります。「卵の殻の上を歩く男」「クロゼットの中で泣きじゃくる小さな子供」

これは1938年に中学に進学したデイヴィスが、スクールバンドに参加し、ブキャナン先生に週に1回指導を受けたことによります。ブキャナンのデイヴィスへの指導で伝説となっている言葉です。「そんなに音を震わせることはない。いずれ年をとったら震えるようになるさ」

二つ目は「気品」です。肌が黒いというだけで受けた人種差別、それに対する怒りは彼の革新性に対する原動力になりましたが、当時の黒人としては例外的ともいえる裕福な家庭に生まれたことが、彼のサウンドに「気品」をもたらせます。

まず彼の祖父は黒人でありながら、いまでいう会計士・税理士のような仕事をして成功をおさめ、のちに60万坪(甲子園球場150個分くらい)もの土地を所有する大地主になったといいます。また父親はノースウエスタン大学を卒業した後、歯科医院を開業し、大きな成功をおさめます。

マイルスの父親の趣味がゴルフであったことも驚かされます。1930年代に白人の社交場であるゴルフ場への出入を、許されるくらいの立場であったことを物語っています。セントルイスなので境界州とはいえ、南部では「奇妙な果実」の時代です。

ジャスというヤクザな音楽の中で、デイヴィスのサウンドがクールさや理知的なものを感じさせるのは、こうした家庭環境からの影響が考えられます。

その後デイヴィスは、16歳のころ地元のダンスバンドで演奏をはじめます。教会やビアガーデンなんかで演奏し当時6ドルももらっていたそうです。ここでのポイントはバンドで最年少のデイヴィスが、音楽監督を任されたことです。中山康樹によると、譜面が読めて、音楽理論がわかっていたからだと。

18歳のとき名門ジュリアード音楽院への入学を条件に、父親からニューヨークへ進出することを許可されます。しかしクラシックしか音楽じゃないと思っている白人教師から学ぶべきことは無く、毎晩のようにジャズクラブに通ってチャーリーパーカーや、ディジーガレスピーといった偉大なミュージシャンと共演します。

40年代の中期、ビバップムーブメントに最年少で遅れてやってきたのです。遅れてきたがゆえに、客観性をもちえたデイヴィスは、ビバップの渦中に身を置きながら、ビバップに代わる新しいジャズを模索すべきだと考え、その役割を自分に課したのです。

ワーキンの1曲目。美しいなぁ♪ ノラの新作の1曲目Good morningに雰囲気が似てます。
Miles Davis – It Never Entred My Mind (1956)with the Miles Davis Qiuntet. Miles Davis (trump)Philly Joe Jones (drums) Red Garland (piano) Paul Chambers (bass)

Miles Davis – It Never Entred My Mind (1956)

Good Morning – Norah Jones Lyrics

レスポンシブ広告

シェアする