『人間の価値は、誰かに「あなたはかけがえのない人だ」と言ってもらえるかどうかで決まる。人との絆を回復することで、そして自分を生かしてくれる自然の恵みとのつながりを回復することで、ようやく「自分は自分でいいんだ、かけがえのない自分なんだ」ということを実感できる。
そのとき初めて人は、心の底から子どもが欲しいと思うようになる。自分にも子どもがいていいのだと思えるようになる。なぜなら子どもは、自分と同様に、そこにいるだけでかけがえのない存在だからだ。この自分の幸せを、生きている幸せを、子どもにも味わって欲しいと心の底から思うとき、ようやく人は子どもを持つ一歩が踏み出せる。』
この本によると、田舎は出生率が高くて、都会は低いそうです。田舎暮らしの方が幸せを感じることが多いということなのか。。
田舎のハンデは働く場所が少ないことだけど、今は都会も就職難や低収入になっています。あるレベルの仕事の収入が、都会も田舎も大差がないなら、ストレスの少ない田舎のほうが平穏に暮らせそうです。多くを稼ぐ才能のある人は、都会で生活したほうがいいとは思いますが。
田舎の収支が大赤字なのは、エネルギーや加工した二次産品を外から買っているからです。里山資本主義とは、林業を復活させて、木質バイオマスエネルギー発電でエネルギーを自給自足する。木造建築の強度を高める新技術もあるので、美しい木造建築へ日本を回帰させる。そうすると林業を中心とした雇用も確保できるし、田舎は外にお金を出さなくなるので豊かになる。という仕組みです。
他にも田舎には耕作放棄地や空き家がたくさんある。これも使い道はあるはず。日本の食料自給率は39%しかないのにもったいない。カネにはならないかもしれないけど、楽しんで畑をやって自給自足をしていると、何かしら商売になるものも見つかるかもしれないし、実際にそれで成功してる人もいると。
本書では林業の復活に成功したオーストリアや、岡山県の真庭市の実例を丹念に紹介しています。なかなかに示唆に富む素晴らしい取り組みです。これが全国的に展開できるかと言えば、う~ん。。ジョンレノンのイマジンのようなものか。やってみないとわからないし、言い続けるべきだし、そうあるべきだ。とは思いますが。
共著者の藻谷氏は、ベストセラー「デフレの正体」に寄せられた反論にかなりの悔しさがあるようで、続デフレの正体を書いて、言い返したいみたいです。
いわゆるケインズ的なバラマキには副作用がある。日本経済はダメダメじゃない。ゆっくりと里山資本主義的な要素を少しずつ取り入れていけば、生活上はそんなに困ることはない。円安、インフレは怖いと。
う~ん。。製造業で働いてるものの実感としては、あのまま円高が続いていれば、三期連続の赤字になって減損処理する会社が続出したと思います。そうすると自己資本比率が大幅に下がり、銀行がカネを貸してくれなくなり。。。
相当やばいところまできてました。藻谷氏はそこらへんの現場の感覚をわかった上で、イマジンのような牧歌的なことを言われてるのでしょうか。
補助金を使って里山資本主義を導入すれば良いと思います。太陽光発電への補助金(レントシーキング)よりは、田舎が雇用で潤い少子化脱却にも繋がるかも。
何事も中庸が一番です。
以下に読書メモを。
新しい集成材CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)
木なのにコンクリート並みの強度を誇る。通常の集成材は繊維方向が平行になるように貼る。CLTは板の繊維方向が直角に交わるよう重ね合わせる。CLTは2000年ごろにオーストリアで生まれた技術。
同じサイズの自然木はもちろん鋼材に比べても、曲げる力に強く、何百年経っても腐食しない。鋼材より軽いし、防火性も高い。多量の空気を含んでいて断熱性が高いので、炎にさらされても片面が焦げるだけでもう片面は常温のまま。間に集成材が入っている建物では火が燃え広がらない。
⇒価格はどうなんでしょうか。ビジネスモデルは描けるのか。
木質バイオマスエネルギー
オーストリアで木質バイオマスエネルギーが急速に普及してるのは、ペレットにできる製材屑が豊富にあるためだ。つまり集成材による建築が急速に広まっているからこそ、エネルギーのシフトも実現できている。最近は9階建ての木造マンションもできている。だから林業が復活し、大量の木屑も発生する。日本の法制度の下ではその実現はまだまだだ。
新製品の寿命
発売から2年以内に消えるヒット商品の割合は52%。世に新たに登場した商品の半分以上が発売から2年を待たずに消滅している。1990年代まではこの数字は8%だった。9割以上が発売後2年以上市場に残り続けていた。
新しく発売された商品が利益を得られる期間は1.5年。1970年代までは開発後25年ぐらいはもったという。当時は開発者として1ヒット商品を生み出せば、定年まで食べていけた。
エネルギーの輸入/オーストリアの市長の話
「エネルギーの輸入は、私たちにとって何の利益ももたらしません。毎年数百万ユーロがこの町から消えてしまうだけです。利用されないまま、何千トンもの木材が廃材として森の中で朽ちていくのに、なぜわざわざ数千キロも離れたところから天然ガスや石油を運んで家やアパートを暖かくするのか」
⇒伐採をせず放置された森林。日本は森林が多い。切って植えて循環させる、林業が成り立つような市場ができて、その廃材をエネルギーとして利用できるビジネスモデルが、補助金なしで日本でもうまく完成するといい。しかしそんなことは可能なのか?安価な外材との競争に勝てるのか?高価なものは一部のマニアには売れるけど、みんなが食べていける量ほどは売れません。