・これから15年で今ある仕事の49%が消滅する(野村総合研究所)
・近い将来、9割の仕事は機械に置き換えられる(オックスフォード大/フレイ&オズボーン)
15年の3分の1が経過したけど、世界中がかつてない人手不足に悩まされています。「AIで仕事がなくなるレポート」には決定的な「欠陥」があったようです。それは雇用現場を全く調べずに書かれているということ。機械技術的な可能性のみだった。彼らのレポートを現場にぶつけてみます。
「現場では1人の人が、こまごまとした多種多様なタスクを行っている。それを全部機械化するのは、メカトロニクスにものすごくお金がかかる」
「ある程度大量に発生する業務はすでに、オートメーション化している。残りの部分で自動化できるところは少ない」
みなさんが会社で感じてる思いも、同じようなかんじでしょうか。
2017年1月マッキンゼーのレポート「未来の労働を探求する」はもう少し精度が高いみたい。800以上の職業の2000以上の具体的なタスク(作業)を分析している。マッキンゼーのレポートはいいます。
「すべてが自動化の対象となる職業は全体の5%未満と非常に少ない。しかし60%の職業では3割程度のタスクが技術的に自動化可能」
自動化が可能なのは、データ収集、データ処理、予測可能な環境で身体活動を行って機械を操作する、など。
自動化が難しいのは、人材管理と育成。専門知識を使った意思決定、プランニング、クリエイティブな仕事。ステークホルダーとの接触、予測不可能な環境で身体活動を行って機械を操作する、など。
自動化が可能なものでもコスト的に見合うかどうかの検討はされていないので、マッキンゼーのレポートも不十分だ。
本書では事務職の未来はリクルート、流通サービス業の未来はスシロー、営業職の未来は広告代理店など、各現場の人に現状を確認してます。
以下に読書メモを。
事務職の未来
事務作業は効率化が図りやすい。多くがパソコン内で完結できる。機械化はAIまでいかなくともIT技術で十分効率化が可能。現状でも大手企業はIT化で事務処理要員は全社員比率で3%まで減らしている。人事総務系が1%、経理系が2%。社会全体として少なくともこのレベルまでは早晩いきつき、そこから先は費用対効果が落ちるので、効率化は徐々に進む。
事務職領域に従事する人は現在1295万人。985万人まで削減できる(詳細の計算式は本書にて)。310万人の雇用を減少させることができる。今後15年で労働人口は653万人減少する。人手不足が蔓延する。日本社会は事務職領域から創出される310万人を心待ちにしている。
ただし中小企業の事務職削減は、事務代行センターを設立し業務の集約が必要となる。5人の会社で経理担当が1人なら経理の社員比率は20%。そういう零細会社を100社集めて、経理担当100人を10人に減らすと社員比率は2%になる。
流通サービス業の未来
物理的な作業が多々発生する。「手足」となるメカトロニクスが必須となる。スシローの標準店舗は196席あって、それを多忙な時間帯でいえば、キッチンを24~25名、ホールを6~8名で回している。みなさんが思うよりかなり多い人数。おいしさを追求すると完全セントラルキッチン化はできない。店の作業をかなり残している。鮮魚は皮をはぐと鮮度が落ちる。皮をはぐのもネタに切りつけるのも店で行う(ほかにも諸々)。
AI(頭)が進化しても、メカトロ(手)が進化しないと実現できない。洗い場でもノウハウがある。回転寿司は皿がメチャクチャ多い。手の部分を洗浄ロボットにできそうになるのは今後15年ぐらいかかる。
流通サービス業の就労状況は1323万人。そのうち非正規が701万人と63%を占める。非正規の中核は「主婦パート」。昨今急激に主婦パートの新規参入が減っている。
高齢者と外国人だよりも限界、機械化も難しい。どうやって人手不足をしのぐか。サービスレベルの低減だ。セルフレジなど。
今後15年で地道なAI&メカトロ化しても、雇用の減少(省力化)は約1割の130万人程度。大規模店は2~3割減らせても、中小は各工程を1人で賄っているので機械化のメリットがない。多くの店舗で機械化は進まない。
営業職の未来
仕事形態は15年後もそれほど変わらない。省力化も効率化も進まない。営業の仕事は顧客のマインドチェンジ。それは人にしかできない。たしかにテクノロジーは営業を進化させた。資料はパワポ、AIでデータ分析、タブレットでプレゼン。しかし営業自体は人がする。
「昔は刀でチャンバラしていたのが、SFの世界では同じチャンバラをレーザーソードでしているようなもの」
顧客の信頼確保という前段が営業には必要。そのため儀礼的な接触(接待や御用聞き)を続ける。営業は機械化が難しい。
第一次&第二次産業系の未来
農林水産業、製造業、建設業の3業種で約1400万人ほどいる。AIによる効率化で可能な省力化は約1割の130万人が予想される。詳細は本書にて。
日本の産業構造転換の状況
少子高齢化で生産年齢人口はどんどん減っている。1996年から減っているが、この20年間は産業構造の転換期で、製造業の空洞化、公共工事削減による建設業の退潮、流通サービス業が大規模資本化して自営業の淘汰が進んだ。
産業人口は減ったが、一方では構造転換で人手が余るセクターが並存し、それなりに均衡していた。
2008年から2012年までの超円高で、空洞化や淘汰が完全に進み、産業構造の転換は一足先にほぼ完了した。2013年時点の産業構造は、製造業は15%、建設業は5%、自営業は12%。この先の低減余地は極めて少ない。製造業はピーク比(90年)の4割、建設業はピーク比(94年)の2割まで落ち込んでいる。
日本の移民政策の概要まとめ|人手不足を補う
現在日本国内には20万人の技能実習生がいる。受け入れられる人数の上限は1年度あたり企業従業員数の5%、期間は最長3年。
それが法改正により人数は毎年1割、期間は5年に延びた。単純計算で緩和により技能実習生は3倍まで増やせる。
受け入れ可能職務も追加された。従来は農林水産、製造、建設に限られていたが、介護も加わった。最終的には80万人(現在の4倍)まで人数を増やす。
6省庁で合議され、留学生は今後30万人まで達する。彼らは流通サービス業のアルバイターとして期待されている。
大学を卒業した留学生は、企業に新卒で総合職採用された場合、就労ビザが容易に取得できるようになった。結果、毎年2万人強の留学生が日本で新卒就職し就労ビザに切り替えている。彼らの多くは流通サービス業の幹部候補生になっていく。彼らは語学も堪能なので、店舗で通訳業もこなせて、インバウンドの武器になる。
さらに日本人と違い彼らはなかなかやめない。理由は明白で日本滞在10年で永住権が取得できるからだ。大学の4年にプラスし6年就業する必要がある。入社者の定着が低い流通サービス業で、「6年間耐え忍んでくれる」留学生は本当にありがたい。
6年後はどうなるか?彼らは統括役もできる。企業にとって彼らはアジア各地に海外展開するときの先兵役にうってつけだ。留学生にとっても現地採用の安い給与でなく、本社からの赴任で日本本社並みの給与で、母国に捲土重来できる。
このキャリアパスは多くの大規模流通業で整いつつある。ここまでたどりつく留学生は、新卒入社者(2万人超)の半分、たぶん年間1万人ぐらい。
彼らは永住権を有する「移民」になる。移民にはアレルギーを持つ日本人が多い。しかしその数は年間1万人程度であり、日本の大学を出て日本の企業に就くので、ジャパナイズされた人たちだ。
まとめてみる。
製造、建設、農水で年間80万人の技能実習生、流通サービス業で30万人の留学生アルバイターと年間2万人の留学生新卒採用。日本の採用困難領域に人材が供給される。AIとロボティクスの進化までのあいだ、こうした状態になる。
あと15年こうした構図が維持され、その後AIとロボティクスによる機械化の浸透により、少しずつ技能実習生や留学生需要が減じていく。どちらも期間限定の滞留資格なので日本に永住できない。なので雇用ニーズの減少とともに滞在者は減っていく。唯一残るのは10年以上滞在して永住権を確保した元留学生だが、その数は毎年約1万人程度であり、彼らはジャパナイズされ、日本社会とは軋轢をおこさない。
あまりにも日本に都合がよい予想絵図だが、少子高齢化で労働人口が急減するわが日本は、こんな気運が高まっている。
ドレイクはリアーナに未練たっぷりです。2人とも大金持ちですが。リアーナでワーク♪
フィリピンバーも、構造転換で女の子がAIに変更になっちゃう?
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2017-04-08