【申し訳ない、御社をつぶしたのは私です】要約まとめ

原題もそのまま「I’m Sorry I Broke Your Company」。

訳者がいいのと一般向けということで、とても読みやすくストンと腑に落ちる本です。

下のフォトは正しい方法を見分ける「真偽判断表」。本書を1pの表に要約しています。

申し訳ない御社をつぶしたのは

目次は以下です。
第1章 「戦略計画」は何の役にも立たない
第2章 「最適化プロセス」は机上の空論
第3章 「数値目標」が組織を振り回す
第4章 「業績管理システム」で士気はガタ落ち
第5章 「マネジメントモデル」なんていらない
第6章 「人材開発プログラム」には絶対に参加するな
第7章 「リーダーシップ開発」で食べている人たち
第8章 「ベストプラクティス」は“奇跡”のダイエット食品

以下に読書メモを。



経営コンサルの流行

外的要因に対応する「競争戦略」のあとには、内的能力にもとづく「コア・コンピタンス戦略」が登場。トップダウン型で進める「ブルーオーシャン戦略」のあとには、ボトムアップで市場に対応する「適応戦略」が登場した。

各戦略はその前の欠点を補うものではあるが、やがてその戦略自体の欠点が浮かびあがってくる。その結果ダイエットとリバウンドを繰り返すのと同じ悪循環に陥り、健康状態が悪化する。健康でいるためには、いろいろな食材をバランスよく適量とり、体をよく動かし、睡眠をたっぷりとる必要がある。痩せる秘訣は昔から誰でも知っている。つまり秘訣などないのだ。

ポーターの競争の戦略とは

1980年、マイケルポーターの「競争の戦略」が出版されると、戦略コンサルタントの時代が幕を開けた。ベインやボストンコンサルなどの専門特化型のコンサルファームは60年代から存在したが、おもに資金管理を扱っていた。

「競争の戦略」によって、ポーターは企業人の頭に「競争優位性」という言葉を植え付け、有名な2つのモデルを提唱した。ひとつは「ファイブフォース;5つの競争要因」で、業界の競争をめぐる3つの内的要因(競合企業の競争、顧客の交渉力、サプライヤーの交渉力)と、2つの外的要因(新規参入の脅威、代替品の脅威)からなる。これは業界分析を行なうためのフレームワークであり、第1章で紹介されている。

第2章ではその次に有名な「ポーターの3つの基本戦略」、すなわちコストリーダー戦略、差別化戦略、集中戦略が示される。業界における自社の立ち位置によって3つの戦略のうちどれかを選び、競争優位性の確立を目指す。

あとの章は、競合分析、競合の反応予測、代替戦略決定のための業界構造分析などを扱っており、項目ごとに膨大な数のチェックリストがついている。みんな読むのに挫折する部分で、この本のうち「5つの競争要因」と「3つの基本戦略」だけが経営用語として定着したのは、おそらく挫折しないで第3章以降も読みきった人がほとんどいなかったからに違いない。

コアコンピタンス経営とは

ポーターの真逆の理論。企業は業界の将来を予測し、コアコンピタンス、すなわち他社にマネのできない自社の中核となる能力を開発することによって、業界の将来をみずから切り拓いていく必要があるということ。

たとえばキャノンは、精密機器、精密光学、etcなどの得意分野を生かし、カメラに始まった製品ラインを、コピー、ファックス、プリンターにまで広げ、各市場をリードするまでになった。

「コアコンピタンス経営」はさまざまな意味において、マイケルポーターとその「戦争のパラダイム」に対するアンチテーゼとして待ち望まれたものだった。

ポーターは、企業がどんな戦略をとるべきかは市場動向と業界によって決まると言ったが、ハメルとプラハード(コアコンピタンス経営の著者)は、企業自身の能力が戦略を決めるだけではなく、業界の将来をも決定すると言った。

戦略策定の問題点

戦略策定の実行における問題点は、今後の経済状況、業界の変化、競合他社の動向、顧客のニーズを予測できることが前提となっている点だ。そんなことがまともに出来る人間はいない。だからこそ金融の専門家はインデックスファンドへの投資を勧めるのだ。

ジャストインタイムはアメリカじゃムリ

JITの原則のいくつかは適用可能だとしても、実際アメリカでJITを完璧に実施するのは無理だ。日本は小さな国だから、仕入先のサプライヤーとの距離もそれほど離れていない。原材料の調達に2週間もかかるアメリカで、たった1日や2日で在庫をぜんぶ回転させるなど、どう考えても無茶な話だ。



評価基準の弊害

・従業員は評価基準に合わせようとする。評価基準を操作してしまうことすらある。
・指標スコアカードは自動車のダッシュボードと同じ。ダッシュボードだけ見て道路を見なければ、衝突してしまう。

業績管理システムは逆効果

評価基準や目標を使って社員を統率する方法は逆効果であることが証明されている。

多大な時間とカネを費やして、職務等級のレベル感を統一し、パフォーマンス基準や必要とされるコンピテンシーを設定し、評価スケールやボーナス目標や給与目標を取り決め、所定の書式とプロセスを設けて自動化し、必要事項を記入したら、それをもとに会議で全体のすり合わせを行なって社員を通常の分布曲線に当てはめ、評価スコアをめぐって議論し、評価スコアに応じて報酬を分配し、社員と面談を行なって各自の長所と短所について話し合い、総合評価と報酬を通知するという一連のプロセスは、社員のモチベーションにも会社の業績にも、有害な影響をもたらしている。

グーグルによる優れたマネージャーの8つの習慣

グーグルが独自の研究プロジェクトを立ち上げ、何千例もの業績考課やフィードバック調査を分析して独自のモデルを構築し、2011年3月に発表した。
①優れたコーチであること
②ある程度はチームのメンバーに任せ、細かく管理しないこと
③部下の成功と幸せを気にかけていることを態度で示すこと
④生産的で成果志向であること
⑤コミュニケーションをよく取り、チームの意見に耳を傾けること
⑥部下のキャリア開発を支援すること
⑦チームのための明確なビジョンと戦略を持っていること
⑧チームにアドバイスできる重要な技術的スキルを持っていること

受けたくなる研修しか意味がない

社員には研修の機会を与えるべきだが、「社内研修」「社外研修」「自分で自由にみつけてくる研修」という選択肢を用意する。社内研修では、すべての社員が身につけるべきスキルは5つぐらいまでに絞り込む。

コーチング、フィードバック、対立解消、などのコミュニケーションスキルは妥当だろう。ブレインストーミングや問題解決、クリエイティビティツールなどもよいだろう。新任マネージャー研修も必要である。それ以外では社員自身が興味のある研修や会議を自由に見つけて参加できるようにし、誰も聞いたことすらないようなことも学べるようにする。そして面白いことをを学んだら、それを社内で共有する。

著者がキャリアを振り返り、良い人間に、良いリーダーになるために役立ったことは何だろうと考えると、その多くは会社とは関係のないことだった。一番は子育て。親になってマネージャーとしてずっと成長したと。

シカゴでHard To Say I’m Sorry♪

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