「CIA諜報員が駆使するテクニックはビジネスに応用できる」要約まとめ

交渉術の本かと思いましたが、どちらかというとリスク管理、コンプライアンス系の本でした。そういう部分で参考になる(個人的な感想です。交渉術に書かれてることは知ってることばかり。リスク管理系は得るものが多かったので)。あとはCIAの内部事情です。佐藤優の解説も含めて358pもあるので、長丁場、どうしてもCIAの話になる。

著者は元CIA諜報員の女性です。アイビーリーグを出て、IT系、スタバ、製薬会社などを経た後に、CIAに勤務。9.11の1年前です。1年間ファームで新人諜報員として厳しい訓練を終えると、すぐにアフガンやらイラクで諜報活動することになる。CIAには10年勤務して、普通の結婚生活がしたくなってやめたと。

どのレベルのことを言ってるのかわかりませんが、CIAは民間に比べたら給料は安いそうです。だけど仕事は他では経験できないことばかりで面白いと。

諜報の技法には、人的諜報、人工衛星や無人偵察機による画像諜報、通信傍受による通信諜報、公開諜報を分析する公開情報諜報があります。通信傍受などはNSA、スパイなどの人的諜報はCIAがやっている。スノーデンがNSA勤務時に年収20万ドル以上だったようなので、安いと言ってもかなり高給なのではと思います。

ただし採用時はもちろん、勤務してからも身辺調査が厳しくて、恋人ができると必ず報告しないといけないし、常に私生活も監視されてるし、定期的に様々なことをウソ発見器にかけられて質問されるそうです。自分だったらちょっと耐えられない^^



国家の諜報活動の目的は、突きつめると「戦争のコストを減らすこと」。

まず諜報活動は98%ハリウッド映画とは違うそうです。目立つと怪しまれるので、トムクルーズやショーンコネリーはいない。普通の外見の人ばかりだそうです。それとCIAの諜報員は厳密にはスパイではない。スパイというのは自国の機密情報を探り出して諜報員に提供する人のことを指す。いわゆる諜報員への協力者です。

諜報員は何をしてるのか。いわゆるスパイ=協力者を探し出し接触し、その人にさまざまなメリットを持ちかけて、重要な情報を引き出す。それを分析して国家の安全保障に役立てるという。

だから外交官と違って、交渉、いわゆる駆け引きはしない。外交官は相手の出方を見ながら押したり引いたりして妥協点を探ります。それに対して諜報員は、相手(協力者、スパイ)の弱みを知ったうえで、相手が断りたくても断れない申し出をする。ムチよりアメを使いこなし、相手とした約束は必ず守る。

どんな人がCIAに採用されるのか。一言でいえば「聞き上手」。隠密行動がとれる目立たない外見で、魅力的で、会話が巧みで、機転が利き、他人を説得する力がある。とても「いい人」で、誰もが好感を抱き、ユーモアもある。誰とでも気軽に会話ができ、無駄話をいつのまにか核心に迫る話に変えるのがうまい。かといってパーティで場を盛り上げるタイプとは違う。会話の中心で皆を笑わせるようなことはしない。ただ相手の気分をよくして、長く話をさせることがうまい。志願者の中から、そういう人を選ぶ。そのためにCIAは多数の性格検査や人格検査を志願者に受けさせ、心理学者にその結果を分析させる。そして採用後には、そうした特質をさらに伸ばす訓練を行う。

目次は以下です。

【第I部 CIA諜報員の基本テクニックを身につける】
第1章 CIA諜報員のテクニックはビジネスに活かせる
第2章 CIA諜報員が身につけている基本テクニック:話の聞き出し方、人物の見抜き方、信頼関係の築き方
第3章 内外の敵から情報を守る技術:スパイ行為にどう対抗するか

【第II部 CIAの組織能力に学ぶ】
第4章 CIAが実践している採用・人事戦略:なぜCIAは優秀な人を安い報酬で雇えるのか?
第5章 CIA諜報員が不要なウソをつかない理由:倫理的にふるまうことは自分に利益をもたらす
第6章 CIAが実践している危機管理術:なぜCIAは9・11直後から素早く、また柔軟かつ前向きに危機対応ができたのか?

【第III部 CIA諜報員のテクニックを応用する】
第7章 CIA諜報員が実践している説得術:人脈構築術から交渉術まで
第8章 業者に不祥事を起こさせないために:サプライチェーンでの諜報活動
第9章 敵と関わる技術、敵を味方にする技術:社内での競争、他社との競争にどう勝つか

以下にその他の読書メモを。



CIAの変化

何十年もの間、CIAでスターとされてきたのは、いわば冷戦の戦士だった。ロシア語を話し、KGBと追いつ追われつの日々を送る。ウォッカを好み平気で何杯も飲む。そういう諜報員が花形だった。ところが9.11以降、そうしたスキルが急に時代遅れに見えてきた。

では新たにスターとなったのはどういう人間か。まずアラビア語やペルシャ語、ダリー語などを話せる人間である。複雑な人間関係の媒介となるのは、ウォッカではなく紅茶だ。

CIA諜報員が駆使するテクニックはビジネスに応用できる

また以前は銃を実際に扱った諜報員は多くなかったが、突然銃の訓練は必要となった。

9.11以降、CIAでは特定の言語を話せる人材、民兵としても動ける能力をもった人材、特定分野のテクノロジーについて専門知識をもった人材への需要が急速に高まった。どれも従来のCIAでは希少なスキルだったため、いずれかをもった職員は即、リーダーの地位につけられることになった。危機的な状況においては、年功よりもスキルを優先させなくてはならない。

各国の提示条件

CIAの諜報員にも競争相手がいる。せっかく確保した協力者を横取りされる危機にも対処しなくてはならない。狭い世界で、協力者にふさわしい人物がそう多くいるわけではない。必然的にひとりの人間に何人もの諜報員が群がる。提示条件も諜報機関によってさまざまだ。

モサド(イスラエル)は金銭的な報酬がほかより高い傾向がある。イギリスのMI6は、協力すればイギリスの市民権を与えるという条件を提示することが多いようだ。

CIAが協力者を得るステップ

候補者数名に狙いをつける⇒評価する⇒人間関係を築く⇒勧誘する⇒実際に動いてもらう、という5つの段階に分けられる。5段階すべてが数日で終わることもあるし、数年かかることもある。

組織の情報セキュリティ

組織の情報セキュリティを高めようとすれば、それは必ずコミュニケーションの阻害につながる。セキュリティは諸刃の剣ということだ。コミュニケーションとセキュリティの間をとることは難しい。情報を守るように求められる一方で、共有を求める声もあるという矛盾には、CIAも長年苦しんでる。

また、外部からの侵入に関してはコストをかけて対策しても、内部に入った人間への警戒を怠っている組織や企業は多い。

CIAのレッドセルという部署

あらゆる陰謀や不測の事態を想像し、その対策を考える部署。そこではあらゆる種類の突拍子もない陰謀を妄想することが仕事となる。ありえないような攻撃や大惨事を詳しく想定し、その場合にどう対応すべきかを検討する。時には「それはいくらなんでも非現実的だ」という批判の声が上がるが、摩天楼に飛行機が突っ込んだり、リーマンショックがおこったりするのが現実だ。

CIA諜報員が駆使するテクニックはビジネスに応用できる

レッドセルの手順

①競争相手を2社設定する。一方は保守的な相手で法律の枠内で動く。もう一方は何をするかわからない相手で、法律や倫理を無視した行動をし、欲しいものを手に入れるための手段を選ばない。

②自社の強み、競争力の源泉となっていることを列挙する。つまり競争相手の標的になりそうなことを列挙する。(優良顧客、低コスト高品質な外注先、優秀な技術陣、etc)

③次に自社の弱みとなりうることを列挙する。(問題を抱えた社員、脆弱なITシステム、etc)

④最後に、2社の競争相手はどのように弱みを突いてくるか、また強みをどうやって奪おうとするか、その可能性を考える。競争相手が使いそうな手段や方法をできるだけ多く考え、列挙していく。

この演習(ブレーンストーミング)で大事なことは、あえて妄想と言われそうなほど、とんでもない想像をするよう心がけること。2社の競争相手が想定通りの攻撃を仕掛けてきた場合、はたして身を守ることはできるのか。それともビジネスをするうえで必然的なリスクとして受け入れるしかないのか。



9.11後のCIAの危機管理

30p以上にわたって書かれている。詳細は本書にて、以下に項目だけ列挙する。
1.注意や行動が、組織の内側ではなく外側を向いた。
2.優れた功績を上げた者がいれば普段通り賞賛され、相応の報奨が与えられた。
3.幹部への連絡が通常よりはるかに容易になった。
4.命令がすべて明確で具体的だった。
5.権限委譲が行われ、下の人間にも大きな権限が与えられた。
6.資源の振り向け先が大きく変更された。
7.現場の職員を混乱から守り、仕事に集中できるようにした。
8.職員の士気を上げ、忠誠心を高める努力、組織への信頼を高める努力がなされた。

危機に陥った会社の経営者が社員と話す際に注意すべきこと

1.事態の深刻さを正直に知らせる。
2.現状でとりうる行動の選択肢を明確に示す。選択肢が少なくても、ありのままを伝える。
3.危機脱出のため、短期的にどういう戦略をとるかを知らせる。全社的な戦略だけでなく、各部署、各人がその中でどう行動すべきかも知らせる。
4.さらに話を広げ、中期的な目標も示す。
5.1~4を頻繁に繰り返す。

バズワードビンゴ

著者はいわゆるバズワード(特定の業界で一時的にもてはやされる流行語)が大嫌いで、大学院時代によくクラスメートと「バズワードビンゴ」で遊んだ。マス目にビジネスの世界のバズワードを書いたビンゴカードをつくり、講義中に出てきたものがあれば消していった。戦略的、とか、権限委譲、とか。権限委譲はたんなる掛け声に終わってはいけない。

⇒これ面白そう。

ランディニューマンで、You’ve got friend in me、 君はともだち♪
ランディにしてはめずらしく、明日にかける橋みたいに、直球で素直な歌詞です^^

レスポンシブ広告

シェアする