100年以上前に書かれた、ニーチェの「アンチキリスト」の現代語訳。ふつうニーチェの本なんか、精神を集中して精読しても意味がわかりにくいです。
宮崎哲弥いわく、西尾幹二翻訳版よりすらすらよめる。理解の速度が違う。内容も大きく逸脱してないとの事。
お〜。すらすら読める。いわゆる超訳というやつですね。
簡単に要約すると。。
イエスというのは、きわめてインド的でない場所に現れたブッダである。彼自身はユダヤ教支配者層に反抗した政治犯であり、弱小教団の教祖で、有名な「他人の罪のために死んだ」のではなく、自分の犯した罪により死んだ。
イエスの原像は、
・すべての嫌悪や敵対や感情の限界を本能的に排除する
・福音とはいかなる対立も無いということ
・天国は死後にやってくる何かではなく、今ここで実現される心の状態
お~。。求めてるところは、きわめて小乗仏教ですね〜。
しかしイエスは白痴であった。最後の最後に自分のやってることの無力さに気づき、神よ私を見捨てるのかと嘆きながら死んでいく。
ここでイエスの教えと反対の方向にいくのが、弱小教団のパウロである。神の裁きによる復讐を考えるのである。あるがままを受け入れ、心の平穏を求めるのがイエスの教えであるのに。。
天国や神やありもしないものを捏造して、イエスの本当の教えの、現在の心のありよう、精神の平穏が天国である、というものから逸脱していく。
信仰により、未来の楽園を約束するという空手形で、おもに弱者や現世がうまくいってない人々の支持を集める。
現世利益や権力の追求など、人として当たり前のポジティブな考え方が貶められていく。この世は弱肉強食であり、努力が必要であるが、なにもしない弱者が崇高であるような幻想をつくりあげる。
およそイエス教からかけ離れた、パウロと弱小教団幹部でつくり上げた宗教が、キリスト(=救世主)教である。
ニーチェは、仏教を持ち上げて、西洋は仏教を許容できるレベルにまだないと言ってますが、結局仏教も大乗になって法然・親鸞のころは、「なむあみだぶつ」と唱えれば、誰でも極楽浄土にいけるという宗教になってますからね〜。
科学に反する、ありもしない幻想を信じ込ませるという、弱者信者を集める方便は、おんなじですね。
ニーチェの最高傑作かもしれない、アンチキリスト。キリストの本場、西洋で、「王様は裸だ」と叫んだので、危険思想家と言われてます(ユダヤ人批判はヒトラーに利用された)。
結局宗教というのは、日本の葬式仏教もそうですが、宗教家が自分の利益のために、都合よく教えを捻じ曲げるという構図があり、これをニーチェは徹底的に批判してるのです。
で、彼の理想とする世界は、道徳や真理などの教えを、個人個人が考えて、自分の道徳をもって(自分で考えて)、宗教なんかに頼らない世界です。
そういう意味では、日本という国は、キリスト教は1%、仏教も単なる葬式仏教という、ほとんど無宗教で、自分で考える民族であり人類としては稀有な存在であるといえると思います。ちなみにアジアのキリスト教国は、フィリピンが90%、韓国が30%と、国民にしめる割合が高いようです。
僕自身は弱い男なので、宗教的ななにかを求めて、ついつい哲学、宗教、心理学本を読んでしまいます。
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