世界の3人に1人は精神疾患|「脳はみんな病んでいる/池谷佑二、中村うさぎ」より

世界の3人に1人は精神疾患だそうです。

世界63ヵ国での大規模なメタ解析調査によれば、生涯にうつ症状や不安障害、強迫性障害などの精神疾患を患う人は29%。その多くは適切な処置を受けず放置されている。

日本国内の調査によれば自閉スペクトラム症などの発達障害の児童生徒割合は6.5%。これは特別学級を含めない通常クラスに関する数値。

池谷佑二と中村うさぎの対談本。2人とも天才なんですが、新潮の企画で精神科の鑑定を受けたら「自閉スペクトラム症(アスペ)」でした。2人とも。診断書のコピーは本書についてます。



中村うさぎの「あとがき」が味わい深い。ざっとまとめると以下。

『むかしから精神の異常とかに興味があった。自分が正常か異常かわからなかったからだ。小学生のころ、ある女子グループから非常に嫌われてた。「あなたは勉強はできるけど頭はおかしい」。いろいろと指摘を受けたが、何がおかしいのかぜんぜんわからなかった。

中学から私立の女子校に入った。やはり自分は周囲とうまくやっていけそうにないと感じた。ただなんとか仲間に加わろうと「嫌われないスキル」を自分なりに体得した。その一つは「自虐」。自分の欠点や異常さを自らギャグにしてしまえば風当たりは多少やわらぐ。

以来、自虐は私の処世術のひとつになり、「社会性を欠いたバカキャラ」を笑いによって承認してもらうことで、皆さんからお目こぼしをいただこうという、きわめて卑屈な路線が確定したように思う。

買い物依存症、ブランドもの、ホストに浪費、税金や公共料金滞納…。ふつうなら許されないはずだが、「こんなにバカなんですよ。バカすぎて痛い目にあってますよ」と己を笑うことで、世間が私に優越感を持ち、面白がって受け入れてくれることを私は知っていた。

このような私の処世術は私が「自閉スペクトラム症」だったからだと今回発覚した。それが明確になる前から、自分が変だと気づいてはいたものの、どこがどう異常なのかわからず悶々としていた』

いや、みんなどこかおかしいでしょ。「なくて7クセ」って昔から言います。ぼくなんかも10年間書評サイト続けてる、たいがいおかしな人です。

以下に本書から3つだけ読書メモを。



一番長生きできるのは10月生まれ

10月生まれは他の月に比べて平均寿命が6カ月ほど長い。4月や5月は循環器系、心臓系の病気にかかりやすく、8月や9月生まれには喘息が多い。とくに喘息は生まれた直接の自然環境が関係している。夏には家ダニが増え、草木の花粉も飛んでいる。生まれた直後にそういう環境にさらされると免疫系が感作されて、その人の体質を決めてしまう。夏生まれの子どもの喘息は他の季節生まれの1.6倍にのぼる。ちなみにこれらの罹患率の傾向は、南半球ではほぼすべて反転する。10月生まれの人はオーストラリアでは一番短命になる。

冬は寒いので外出せず太陽にあたらない。なのでこの時期は妊婦さんのビタミンDは不足しがち。つまりカルシウム不足になり胎児の発達に影響を及ぼす。ビタミンDが不足すると生まれてきた子供は1型糖尿病などの自己免疫疾患委なりやすくなる。

精神系の疾患も月差がある。10月と11月生まれは寿命は長いが、一方でADHDが多いこともわかっている。

アトピーも原理的には喘息と同じで夏生まれに多い。これらの統計はコロンビア大学が180万人の膨大な電子カルテを調べたもの。

高血圧や心不全は3月4月生まれが圧倒的に多い。女性が生涯に子どもを産む数を調べると、7月や8月生まれの人は少ない。生涯に排卵可能な数は精子と異なり生まれた時点で決まっている。これが関係あるのだろうと言われてる。

ウイルス感染に弱いのは11月生まれの人。

あくまでこれらはビッグデータ解析なので確率論としての傾向。例外はたくさんある。

ただもしお子さんをプロスポーツ選手にしたいなら4月生まれがいい。野球とサッカーのプロ選手の登録者リストを見ると、4月~5月生まれは、2月~3月生まれの2倍以上の人数になる。

幼いころの1年の違いは体格や体力の差は大きい。その頃のコンプレックスがトラウマになり、その後一生にわたってパフォーマンスに影響する。

大麻と覚せい剤の違い。覚せい剤に絶対手を出すな。

大麻はダウナー系の薬物で、その意味ではお酒と似ている。気分としてはフワフワとした感覚で気持ちよくなる。オランダ、カナダ、アメリカ(州による)では合法。とくにオランダでは街中のカフェでふつうに嗜むことができる。慣れてない人にはごくわずかな量で効くので注意が必要。

精神的な依存症はお酒と同じぐらい。身体的依存症つまり手の震えや下痢や離脱症状などの禁断症状は比較的少ない。

大麻は食欲を亢進させるので、常用者は太ってる人が多い。

覚せい剤は大麻と反対で痩せていく。大麻に比べてはるかに危険。覚せい剤に手を出すと脳の回路が変性して一生治らない。再犯率は65%。この数値は再び捕まった人の割合なので水面下の再犯率はもっと高いはず。

脳の中で変性した神経回路は一生戻らない。脳回路に永遠に痕跡が残る。これは気合とか根性でどうにかなるものではない。報酬系つまりドーパミン系神経回路がシナプスのレベルで変化する。

最近ようやくネズミの実験で覚せい剤依存を治す方法が見つかりつつある。シナプスレベルで報酬系を書き換え、過去にネズミが薬物中毒になった記憶を消してしまう。この実験が進めば覚せい剤中毒の治療に役立つかもしれない。

東大生の3割は自閉スペクトラム症(アスペ)か

東大生の3~4割が自閉スペクトラム症だと主張する人がいる。(池谷佑二は東大出身。今は東大教授)。自分から見てもあながちオーバーと言い切れない。東大の周囲の先生方も実感としてこの数値に納得する。「そもそも大学教授は全員発達障害だよね」と笑い飛ばす精神科の先生もいる。

むかしの言葉では「アスペルガー症候群」。今は「高機能自閉スペクトラム症」と呼ぶ。精神医学の世界では2013年から「アスペルガー症候群」という言葉は消えた。ただ専門用語として使われなくなっただけで、一般的には今でも「アスペ」はよく使われている。

「高機能自閉スペクトラム症」は知的な障害はない。少なくとも人口の1%程度はいて、東大や京大あるいは医学部に限ると少なくとも10%、人によっては30%以上が該当すると主張する。

数字に関心を示すのは「高機能自閉スペクトラム症」の一つの特徴。文系でもオタクっぽい人は結構当てはまる。異様な読書好きとか。

自分が勝ってれば正しくて 負けてれば間違い♪

そんなんじゃ誰も 君のブルースを聞かないよ♪

なんで君は そんなにクレイジーになれるんだ♪

スーパートランプで、クレイジー♪

Crazy

個人的には82年のアルバムでベスト3。あとの2枚はボブシーガーの「ディスタンス」とドンヘンリーの1stソロ作。3枚ともポップでシリアスで佳曲揃い。

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