読むと、新庄を阪神の監督にしたくなります(笑)。
「わいたこら」。北九州の方言。「なんじゃこりゃ」みたいな意味だとか。
驚いたり、あきれたりしたときに、思わずでる言葉。
スーパースター新庄剛志の著書です。
本書によると新庄は字がちゃんと読めないので、ライターに話をして書き起こした本だそう。
「僕は文字をきちんと読むことができない。読もうとすると、文字が’’もわーん‘’となって頭が混乱してしまう。たった1p読むのにものすごく時間がかかる。マンガをちゃんと読むこともできない。漢字なんて読めなくてもプロ野球選手にはなれる」
新庄の生い立ち、大きなしくじり、現役時代の逸話が楽しく語られてます。矢沢永吉の本みたいなかんじ。大金を詐欺されたのも同じ。
そういえば矢沢永吉は子どもに対して、「お前たちには敵がいる。それは苦労したことがないこと。そいつは後で牙をむいて来るぞ」といいましたが、新庄の子ども時代は超貧乏だったそうです。家の窓ガラスが割れても冬はビニールを貼って窓をふさぐ。車の窓も同じようにビニール貼ってたと。お父さんは造園の仕事してたけど、夜は居酒屋を飲み歩いてたそうです。
大きなしくじりとは何か?TVでも語ったそうですが、お金を使い込まれたこと。お金の管理を知り合いに任せていた。その人が20億円ほど使い込んだという話。
新庄は生涯で50億円ほど稼いだ。半分ほど税金で持っていかれて、フェラーリやカウンタックや豪邸で使っても、20億円ほど残ってたはずだった。
2006年34歳で新庄は引退します。2010年38歳で新庄はバリ島移住を決意。お金の管理を任せてた人に、「今までありがとうございました。今後お金はこっちで管理することにします。今いくら残ってるんですか?」「2200万円」「わいたこら」・・
弁護士を通じて話して結局8千万円が返ってきた。そのお金でバリに移住。2017年「しくじり先生」でこの話をする。人にこの話ができるようになるのに7年かかったと。
交通事故みたいなもんです。その人は母方の知り合いで、会社を何社も経営してるお金持ちの偉い人。18歳のころから応援してもらってた。
阪神に入団して4年目、活躍して年棒が2千万円を超えた。母ちゃんに言われた。「たくさんもらったお金をちゃんと管理しないといけないよ。Aさんに任せなさい」。Aさんなら大丈夫と思った。それから17年間一度もチェックせずに預けていた。
「芸能人が事務所の人にお金を持ち逃げされた話は知ってた。だけど自分はAさんとは家族のようなつきあいだった。MLB行きをたった1人相談したのもAさんだった。家族みたいな人を疑うという発想はこれぽっちもなかった」
Aさんは会社をいくつも経営して赤字になっていた。新庄のカネをその穴埋めに使っていたようだ。
以下にその他の読書メモを。
MLBでのいじめ
「今だから言えるけど、アメリカに行った最初のころ、僕はなかなか友達ができなかった。ロッカールームでも仲良く話をする選手はいなかった。でもテレビカメラの前では僕は選手と仲がいい感じに見せていた。日本のみんなが見てると思うと、一人ぼっちの姿なんでみせられなかった。日本で応援してくれてる人たちに勇気を与えたかったから。
あるとき試合が終わって自分のロッカーを開けると、汚れたスパイクが詰め込まれていた。英語もしゃべれないし、体も細いし、はっきりいって見下されていたんだろう。最初はそういうちょっかいも無視していた。1人でロッカーと向き合って、ずっとイヤホンをつけて。でもしばらくして、これじゃダメだと思った」
「僕は考え方を変えた。ちょっかいを出してくるということは、僕に興味があるからだ。おちょくられるのは、仲良くなれるチャンスだ。ぼくはいじめられたらリアクションを仕掛けた。汚れたスパイクを投げつけられたら、前の日から準備していたブラシを使って磨きまくる。からかってきたらカタコトの下ネタを言い返す。相手のお知りに指を突き立てて「カンチョ―」をやってみる。
だけどこういうのは相手を選ばないといけない。ぼくは考えて狙いを絞りに絞った。なんといってもラテンの選手はやりやすい。ノリがいいし楽しむことを知ってる。ラテン系の中でも一番体格がよくて、みんなから尊敬されてるタイプがねらい目だ。それで周りに認められるようになる」
「そうしてコミュニケーションを取り始めたら、チームの人気者になった。一緒に食事に行くうようになって、トレーニングで遅れると、席に着くまで待ってくれるような関係になった。こういう仲の良さは、野球をするとき必ずつながる。やっぱり明るく行動した方がいい。絶対にいいことが起きる」
バリーボンズを叩いても怒られない信頼関係は、どうやって築いたのか?
ある日試合の10分前になっても、ロッカールームでバリーが寝たいた。そこにマイナーから上がってきたばかりのルーキーがトコトコ歩いて行って、バリーに「サインプリーズ」と声をかけた。
周りのみんなは「おいおい、マジで起こすの?」みたいな顔で2人を見ている。バリーは気むずかしいタイプで、チーム内でちょっと浮いていたし、そもそも寝起きで機嫌がわるい。
案の定ボンズは起こされたことを怒って、周りの椅子を蹴散らしてすごい音を立てた。ぼくはそれが頭にきて、ボンズの後ろから頭を思いっきりはたいた。ボンズはあわてて、「どうした、シンジョ―?」「ザッツ・ノー・グッド」チームの若手からサインを求められただけなのに、あの態度はなんなんだ。そのマナーが許せなかった。
バリーはこれを怒るどころか逆に面白がってくれた。バリーにマジで説教をするやつなんて1人もいなかったから、彼も本当は1人ぼっちで孤独だったのかもしれない。そのときから「俺のバディ(相棒)」といってくれるようになった。
なぜ僕だけバリーを叩けたのか?それは普段から野球のプレーで信頼関係をつくっていたからだ。シーズンに入る前に、ぼくはバリーに約束した。「お前の左に飛んだ打球は全部俺がキャッチする。お前は右方向だけを追えばいい。あとは打つことに集中しろ」
一度レフトに高いフライが上がったときバリーを見たら、全然動こうとしない。ボールの軌道はバリーの一歩左に落ちる打球だった。僕は必至でダッシュして彼の真横でキャッチした。約束だから守らないわけにはいかない。その年、バリーは自身初の首位打者を獲得した。
シーズンが終わってバリーはマスコミにこう言った。「俺がタイトルを獲得できたのはジャック(新庄のこと)のおかげだ。あいつの守備を見てみろ。俺の左の打球は全部とってくれる。彼のおかげで俺は打席に集中できた」
つまり明るくすることも大事だけど、真剣に約束を守ることも大事。人から信頼されるようになれば、何をやってもうまくいくうようになる。
センスがないから野球を辞める、といったのは何故か?
阪神で5年目、突然引退表明をした。一番の理由は監督との対立だった。あの年ぼくは足首を痛めて二軍落ちした。事件があった日はランニングもできない状態だった。グラウンドには出ず室内でトレーニングをする予定だった。その予定が首脳陣に伝わってなかった。
練習開始時間にトレーナー室に行くと「どうしたんだ。みんなグラウンドに集合してるぞ」という。わけがわからないままグラウンドに出ると「お前、遅刻だ」とカミナリが落ちてきた。僕は二軍監督だった藤田平さんから、グラウンドの真ん中で正座するように命令された。1時間あまり正座して釈然としない気持ちになってきた。
そもそも足首を痛めてる選手に正座はないんじゃないか。足が使い物にならなくなったら、誰が責任をとってくれるんだろう。いいプレーをして勝つという目標のために、なぜ正座が必要なのか?
その後藤田さんが一軍の監督をするようになり、僕との溝は深まっていく。ひじの痛みを訴えるぼくに、黒潮リーグ(秋の教育リーグ)への参加を強制されたとき、とうとう気持ちの糸が切れてしまった。それは僕がひじが壊れてまでやるべきことなのか?
ぼくは契約交渉の場で不満をぶちまけた。「どうしても納得できない。監督が辞めるか、僕が辞めるか、はっきりして欲しい」そうまでいっても球団の態度は煮え切れない。我慢の限界で「じゃあ僕が辞めます」と宣言した。
「センスがないから野球を辞める」
考え抜いての発言だった。「監督ともめたから辞める」とコメントすれば球団のイメージが悪くなる。監督にも言い分はある。辞めるのを誰のせいにもしたくない。だからといって「体力の限界」とか「成績不振」は年齢から無理がありすぎる。だったらセンスということにすればいいと考えた。僕にすれば球団への最大の礼儀だった。
親父は「もうちょっとがんばれ」とかいろいろ言った。最後は「お前が好きなようにしろ」と。しばらくすると母ちゃんから電話があった。「お父さんが倒れたよ」。僕のせいで親父が倒れた。あのころはまだ親父のためにプレーをしてるという意識があったんだと思う。「俺が間違っていた。もう一度タイガースでプレーするから、体を早く治してほしい」
実家にそう連絡すると、ぼくは球団にもう一度プレーさせてほしいと謝りに行った。
じつは親父の体調が悪いのを、母ちゃんが「倒れた」と大げさに言って、引退を思いとどまらせようと芝居を打ったらしかった。わいたこら。
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新庄さんがお金を使い込まれていた事は、
先日ネットで読みました。
俳優の穂積隆信さんも、
似たような形で、
全財産を失ったようですね。
お金は人に預けない、
預けるとしても、全部ではなく一部、
そして、マメにチェックするが鉄則だと思いました。
(人にお金を預ける事など、生涯ないとは思いますが(笑))