毎年読んでる長谷川慶太朗の「大局を読む」、今回は2019年版です。
ご高齢になって、ここ数年はなんていうか足で稼いだ情報が少なくなってます。
「へ~、そうなん」ていうライブな情報が少なくて、分析っぽく。
「大局を読む」は世界情勢の分析です。今回のもくじは以下。
第1章 米中覇権戦争の展開
・覇権戦争のきっかけは中国製造二〇二五
・関税以外に中国を締め上げる方法
・米中覇権戦争の勝者はアメリカ
・多国間交渉と二国間交渉の違い
・NAFTA新協定は何をもたらすか?
・自由貿易体制は絶対に阻止できない
・絶好調のアメリカ経済
⇒トランプの次でグローバリストは復活して自由貿易は止められないと。
第2章 中国の習近平体制は存続できるのか?
・借金の削減から財政出動への転換
・資本主義自由経済を発展させていく
⇒10年後には中国でも指導者を選挙で決める時代が来ると。
第3章 日本を変える「人手不足」&「キャッシュレス」
・外国人労働者の受け入れと働き方改革
・官民それぞれの力で活性化する日本経済
・キャッシュレスで時代は大きく変わる
⇒世界の先進国は人手不足になるので移民の奪い合いになる。日本も良い条件を提示しないと労働力不足になる。
第4章 経済が停滞し続けるヨーロッパ
・トルコ・ショックの及ぼす影響
・ヨーロッパ経済と難民問題
⇒人手不足の深刻化で難民問題は雲散霧消する。
第5章 朝鮮半島・中東・新興国の動向
・米朝首脳会談と韓国経済
・地政学的な重みを失った中東
・BRICSの現状と展望
⇒北朝鮮は詰んだので南北統一に向かう。その際日本の支援が必要で拉致問題の全面解決が大前提になる。拉致被害者は警察庁集計で860人。大変な国際法違反なので北は最後まで抵抗する。トランプが相当なプレッシャーをかけて、金正恩に拉致問題の全面解決を受け入れさせることができれば成功。しかし日本は北に対して多額の資金を出さなければならない。拉致問題の全面解決の代償が賠償金なので、日本は北朝鮮との間で1965年の日韓基本条約と同等の条約を結ぶ必要がある。当時日本は5億ドル(1800億円、日本の国家予算の5%)を援助した。
以下に読書メモを。
目次
キャッシュレス化で日本のATMは消えていく
日本では現在20万台を超えるATMが設置されている。そのためボストンコンサルの試算によればATMの管理や現金輸送のため年間2兆円のコストをかけている。
以前は窓口やATMしかできなかった振込も、現在はネットバンキングで簡単にできる。手数料が無料の場合もある。今後日本もキャッシュレス志向の人がどんどん増える。
三菱UFJは2023年までにATMを2割減らす予定。三菱UFJではネットバンキング利用者は過去5年で4割増えた。ネットバンキングがさらに増えれば、店舗の統廃合も加速が必要。現実には2023年までに4~5割の店舗を減らす必要があるかも。
キャッシュレス化はクレカよりQR決済になる
クレジットカードは普及しにくい。読み取り端末の設置費用(10万円~20万円)やカード会社に払う手数料(決済金額の5%)も高いため、敬遠する小売店や飲食店が多い。
その点「QRコード決済」はその費用が安い。様々な企業がQRコード決済に乗り出したが、ほっておくとたくさんのQRコードの規格ができてしまう。そこで18年7月に「キャッシュレス協議会」が経産省の音頭によって発足した。メガバンク、携帯各社、コンビニ、電子部品メーカー・・・など145社と20の業界団体。
ビジネスの競争は激しい。手数料の値下げ合戦が熱を帯びている。当初は3%ほどだったが、18年6月にメタップスが0.95%の手数料を提示。その直後にはLINEが2018年から3年間手数料を無料にするという方針を示し、他社に衝撃を与えた。
ちなみに経産省調べの2015年の各国のキャッシュレス決済の比率は以下。
韓国89%、中国60%、カナダ55%、イギリス55%、オーストラリア51%、スウェーデン49%、アメリカ45%、フランス39%、日本18%。
⇒ペイペイの100億円プロモーション、やっぱ孫さんは陣取り合戦が上手い。ペイペイ、LINE Pay、楽天ペイ、Origami Pay、QRコード決裁の覇権はどこがにぎるかわかりませんが、ユーザーに支持されれば加盟店はそちらに流れるでしょうね。
日本の銀行はクレジットカードが大きな収入源(加盟店の手数料)です。QRコード決裁とは食い合うので、本気でQR化を進めるとますます減益になる。3大メガバンクの「BankPay」は2019年度からって・・行動が遅いよね。自社収益源のカニバリズムを避けてる間に、孫さんに先に食い散らかされちゃった。もうぺんぺん草しか生えてへんわw
(国内の主なキャッシュレス決済手段 / 日経ビジネス2018年12月3日号より)
5G技術の中国ファーウェイへの流出阻止
5G分野の特許を10%保有している中国のファーウェイとシンガポールのブロードコムはつながっている。ブロードコムがカリフォルニア州サンディエゴのクアルコムを買収すれば5G技術がファーウェイに流れる。となると5G技術をファーウェイが牛耳ってアメリカは軍需用を含めた通信機器をファーウェイから調達せざるを得なくなる。5G技術の中国企業への流出はアメリカの安全保障上の脅威となる。
カリフォルニアのクアルコムはスマホのプロセッサで世界最大のメーカー。4Gの多数の技術を保有し、5Gにも莫大な研究開発費を注ぎ込んでいる。
クアルコムに対してシンガポールのブロードコムが13兆円の買収提案をした。これをクアルコムは拒否。18年2月には買収額をさらに上乗せ提案した。
トランプ大統領は18年3月、国家安全保障上の理由からこの買収提案を永久に禁止する大統領令に署名した。
アメリカの日本車シェアとトランプ関税アップの影響
2017年のアメリカの自動車販売台数は1723万台。そのうち日本車は677万台。39%のシェア。677万台のうち345万台はアメリカで現地生産。残る332万台の内訳は177万台が日本からの輸出、155万台がカナダやメキシコなど日本以外からの輸出。
この332万台に対する自動車関税が2.5%から25%に引き上げられると日本の自動車メーカーには大打撃となる。トランプが25%に自動車関税を上げると日本のカーメーカーはアメリカの現地生産を増やさざるを得なくなる。そうなると日本からの輸出が減って日本国内の雇用が失われる。
本書執筆段階では、トランプと安倍首相の話し合いでペンディングとなっている。
⇒別記事からの転記ですが、世界の生産台数は9700万台(2017年)。中国が2900万台(構成
比30%)とダントツに多い。米国1100万台(同11%)、日本969万台(同10%)、ドイツ564万台(6%)。中国の生産は米国、日本、ドイツの合計台数を上回っています。国内の需要も3000万台と、日本の6倍も大きいから(日本の需要は517万台:2018年)。中国は米国車に対し25%の報復関税を課している。
「チャデモ方式」での日中協力
日本独自の充電規格の「チャデモ方式」。EVの充電規格はチャデモ方式のほかに欧米で普及するコンボ方式、アメリカのテスラ方式、中国のGB/T方式がある。チャデモ方式とコンボ方式が二強で、両者は世界で激しい規格争いを繰り広げている。急速充電器の設置数は4千基のコンボ方式より1万8千基のチャデモ方式のほうが多い。
次世代充電規格の話を持ち込んできたのは中国側。日本の充電技術を高く評価したから。GB/T方式では限界があってチャデモの技術が不可欠だった。
2020年に次世代規格を策定する計画だが、中国側が規格策定を主導して日本側は充電器の技術やノウハウを提供する。これでコネクターや制御するソフトを統一して、能力的には現行の急速充電器の10倍の出力500キロワット超までの対応を目指す。実現すると充電器1台で10台近くの充電が同時にできるという。
次世代規格になれば日本と中国は同じ充電規格でEVを生産できる。部品の共有化でコスト削減ができ、日本は中国市場でのEV販売がしやすくなる、現在世界で使用されている急速充電器はGB/T方式とチャデモ方式を合わせると9割のシェアになる。次世代規格は世界標準になる可能性は高い。もちろんコンボ方式も巻き返しを図ってきている。
長谷川慶太郎の移民に対する考え方
「文化摩擦を恐れて外国人労働者を入れずに経済の衰退を招くのか、外国人労働者を入れて経済を維持成長させていくのか、どちらを選ぶのか」と問いたい。
言い換えれば、文化と経済のどちらを取るかだが、この結論ははっきりしている。取るのは経済しかない。外国人労働者を入れないと日本経済は崩壊してしまう。
今回はミュージックマガジン11月号ネタで。今年は毎号読んでるのですが、アマゾンミュージック聴き放題会員になったので、レビュー読みながらどんな音楽も瞬時に聴けるようになりました。ネットの新譜紹介サイトをそれなりにチェックしてますが、やっぱ毎月1冊の本になると感覚的に情報量が10倍は違います。コンパクトで読みやすいし。有料だけある(笑)。
11月号はコステロ、ポールウェラー、ビルチャンプリンとかマーカスキングの新作が目立ってましたが、個人的にツボで、何度も聞いたのは青葉市子5枚目の新作です。ハイトーンヴォイスとガットギターのみのアルバム。
アマゾンミュージック会員は、クリック即再生です。アルバム1枚ぜんぶいいよ。もちろんスマホにダウンロードしてオフラインで聴けます。
関税以外に中国を締め上げる方法? サンフランシスコの日中文化戦争で、中国に負けない事です..