最近のバズワード「メタバース」。
本屋に行くと、たくさんの本が出ています。
べつに本読まんでも、あれでしょ?
「ポケモンGO」とか「どうぶつの森」とか。映画でいうと「アバター」の世界。あとVR(バーチャルリアリティ)。
本書によるとVRがそのままイコール、メタバースではないそうです。
『メタバースとは、コンピュータによって計算された世界で過ごす生活スタイルのことである。その観点から言えば、メタバースの世界が実現された世界は、現存するVRデバイスの利用は必須ではないというのが僕の考えだ。しかしメタバースという概念を生んだ土壌に、VR技術があることは疑いようがない。その技術の歴史や発展を知ることで、現在のメタバースについてより深く考察できる』
著者は1988年生まれ。京大卒。VRプラットフォーム「cluster」を2017年に公開。クラスター株式会社代表。世界を変える30歳未満の日本人に選出されたこともある加藤直人。
ぼくの人生はメタバースとは全く関係がないのですが、息子がVR好きで、プレステが安価なVR出す前に自作でVRやってたので、興味深く読んでみました。
息子は一時期「VRchat」に入り浸ってました。そのおかげでTOEICが900点超えて。外資系企業の開発エンジニアとして就職しました。新卒年収が日本の約2倍です。米国系企業は新人でも給料高い。いつクビになるかわからんけど。
本書ではメタバース市場のプラットフォームとして、フォートナイト、ロブロックス、レックルーム、VRchat、ゼペット、クラスター(著者の会社)などが紹介されています。
著者は「VRchat」はローンチ版を触ったことがあるとのこと。どんなものか詳述がなかったので、息子に2017年ごろヒアリングした内容を以下に。前ブログからのメモ。
「VRchat」が面白いらしい。いるのはほとんど外人。日本人はあまりPCゲームしないので、「VRchat」にはいないらしい。たまに迷い込んだ英語できない日本人の通訳する。時間帯によってはロシア人だらけ。
むかし「セカンドライフ」っていうのが話題になりました。あれのVRボイスチャット版です。声は地声、姿はアバター。
手にもセンサーつけるので、身振りもできる。ルームには32人ぐらい入るので、ガンガン話しかけてコミュするらしい。カクテルパーティみたいにいろんな人と話すときもあるし、1人と2時間以上話し込む場合もある。
いるのはほとんど男だそう。それでゲーム、映画、下ネタ、音楽、マンガなんかの話する。
外人に人気あるマンガは何か?いまは「ワンパンマン」と「ヒーローアカデミア」。ジャンプ読んでると、この辺の話で優位に立てる。
なんていうか、フィリピン英会話も英語学校もいらない時代になりました。パソコンとネット環境の恩恵で英語がしゃべれる、最初の世代やね。
「せっかくやから、TOEIC本で勉強して、もっと点数上げれば?」
「いや、ええわ。これ以上点数上げても実際の英語力には関係ない」
「900点超の友達といっしょにVRchatやったけど、そいつはあんまり話せんかった」こういうのは英語力というより、話題がどんだけあるかという。20年近く「少年ジャンプ」読んで、その辺の話ができるとか。そういや我が家はマンガだらけ。最新のゲーム情報とか、NVIDIAの革ジャンおっさんの話とか。相手が喜ぶネタじゃないとトークは続かんもんねえ。
今年の正月に息子が帰省したので、「最近VRchatやってるの?」と聞いてみました。
しばらくやってなかったけど、最近彼女と別れてまたやってるみたいです。仕事は思ったよりホワイトで、在宅勤務なんかもあるみたいで残業は20時間/月程度らしい。なので心おきなくVRchatに入り浸ってるそう。VRchatの近況を聞いてみました。
・VRchatにいる中国人や韓国人はいい人ばかり(ぼくが韓国の悪口ばかり言うので 笑)。
・1センテンス聞いたら、イギリス英語かアメリカ英語か豪英語かわかるようになった。自分でも各国英語のイントネーションでしゃべりわけることができる。母音の違いらしい。
・英語がネイティブ並みに話せる日本人がほぼいない。毎回どこで英語覚えたの?と外人に聞かれる。ツイッチとVRchat。
・英語で情報交換がちゃんとできる日本人がVRchatにほぼいないので、毎日3人以上、外人から友達申請が来る。本人曰く日本の文化が語れる、貴重な日本人枠だそうだ。
・20代前半ぐらいの人が多い。若者中心。
・なぜか英語のしゃべれない64歳の日本人もおった。ちょっと話した。
以下に読書メモを。
なぜメタバースなのか?
・どうしようもない現実から解放されるため。
・ネットビジネスは大半が広告とEコマース。広告ビジネスで大きな要素は何か?そのサイトにどれくらい長く滞在してもらえるか。どれくらい多くの広告枠を確保できるか。フェイスブックはニュースフィードにおいて、ユーザーに画面をスクロールさせればさせるほど広告枠を生み出すというマジックを発明した。しかしテキストや写真、動画ぐらいではユーザーの滞在時間は伸びない。どうしたらユーザーに画面を見続けてもらえるか、その解答がメタバース。
ゲーム業界の現状
全世界のゲーム市場。2019年は15.7兆円。2020年は20.6兆円。今現在、全世界のゲームユーザーは30億人を超えている。全人類の40%以上が何かしらのゲームで遊んでいることになる。
ぼくたちがゲームを好きなのは、その世界に楽しいものだけがあるからだ。面倒くさいものを省いて、面白いものだけがあり、遊ぶことに集中できる。負荷が高いと不快に感じるのが人間だ。
メタバースで教育が変わる
「百聞は一見に如かず」という言葉がある。松下幸之助は「百聞百見は一験に如かず」という言葉を残している。何度も見たり聞いたりするよりも、一度体験して味わってみるのが物事の本質をつかむのに手っ取り早いという意味だ。
メタバースは教育のあり方を変える。一大産業であるアメフトにおいて、トレーニングにVR技術が駆使されている。
クォーターバックの練習は非常にむずかしい。百を超える作戦の中から適切なものを即座に選択する。そんなシチュエーションは従来のトレーニングでは再現しにくい。VRで試合の状況を何度も反復して体験することにより、新しいアプリをダウンロードするかのようにインストールしていると関係者は語る。
米スタートアップのストライバーラボは、スポーツだけでなく他にも教育や研修用プログラムを手掛けている。
ウォルマートも取り入れており、100万人の従業員に向けて「体験のインストール」を行うため全米4500店舗にVRデバイスを導入した。
VRインターフェースの発展予想
個人的にはコンタクトよりライトなメガネがいいです。
各章のまとめ
第1章
■ 「メタバース」という言葉はSF小説『スノウ・クラッシュ』が初出だが、様々なフィクションやゲームでそれに近い世 界が描かれてきた。
■メタバースの条件は ①永続的に存在する、 ②リアルタイム性、 ③同時参加人数に制限がない、 ④経済性がある、 ⑤体験に垣根がない、 ⑥ 相互運用性、⑦幅広い企業・個人による貢献、の7つだと言われている。
■それだけではなく、リアルな身体感覚を感じることができる⑧ 身体性、運営側がコントロールしなくとも秩序が生まれていく ⑨自己組織化も重要なファクターである。
■現在のメタバースの主要企業は、「フォートナイト」を運営するエピックゲームズ、 MAUが2億人近くいるロブロックス、フェイスブックからグループ全体の名称を改めたメタの3社である。
■世界的な企業がメタバースに注力する理由の1つは、どれくらいユーザーのアテンション (注意)を集められるかという戦いにおいて、滞在時間の点で非常に有利だから。
■AR(拡張現実)にはないVRの魅力として、土地・環境・身体の呪縛から解き放つという側面があり、 その点でVRのほうが大きな市場になると考えられる。
第2章
■ゲーム業界・SNS業界・XR業界・クリプト業界は、メタバース市場に対して各々異なる思惑と課題を持ってビジネスを展開しようとしている。
■デジタル資産NFT (非代替性トークン) が空前の大ブームとなった結果、その活用先としてデジタルな生活環境であるメタバースも大きな注目を集めた。
■メタバース市場は、①体験、②発見、 ③クリエイター・エコノミー、④空間コンピューティング、 ⑤非中央集権化 ⑥インターフェース、⑦インフラの7つのレイヤーで成立して いる。
■メタバースにおける様々な 「体験」は、リアルが「主」でバーチャルが「従」の第1フェーズから、バーチャルが 「主」でリアルが「従」の第2フェーズに移行するであろう。
■レイヤーの中でクリエイター・エコノミーが最も大切な要素である。 あらゆる人間が「自分が思い描く世界」を作れるエコシステムをめざさなくてはならない。
■非中央集権化したオープン・メタバースの実現には、アバターなどの相互運用性が重要。 フォーマットなどの統一規格はもちろん、アイデンティティと結びついたアバターを適切に扱うための倫理的なルールも必要である。
第3章
■人間の指が10本であるがゆえに十進法が使われてきたように、計算という営みは人間の身体と深く結びついている しかし、アラン・チューリングによるコンピュータの基礎となる発明以降、計算は人間の心身から切り離され、無関係に成長していった。
■ノーバート・ウィーナーが創始した「サイバネティクス」 という学問分野は人間と機械が融合する社会像を提示し た。人間および人間が住む世界が機械に計算されることがメタバースの本質である。
■現実世界を完全にシミュレートすることは不可能だが、そもそも人間の認識はヒューマンセントリックに「圧縮」されており、人為的に「デフォルメされた世界こそがメタバースと言える。
■産業革命以降の人やモノが移動するモビリティの時代から、人類が物質 (アトム)から解き放たれるバーチャリティ の時代に移行することが予想される。 モビリティの時代の主役はアトムだったが、バーチャリティの時代の主役はデータである。
■人類がエネルギーを使わず炭素排出量を最小限にする一番の方法は 「移動しない」ことであり、その意味でメタバースの実現はサスティナブル。
第4章
■VRの発展フェーズは、 黎明期 (1960年代) ・第1次VRブー ム (1990年代) 第2次VRブーム (2010年代以降)の3つに分けて整理することができる。
■CGの基礎を作ったアイバン・サザランドは、「究極のディスプレイ」という論文で人類が至るべき魔法のような生活スタイルを提示し、そこからVRの原型とメタバースの土台となるビジョンが生まれた。
■「バーチャル・リアリティ」という言葉を現在の意味で広めたジャロン・ラニアーらによって第1次VRブームは始まったが、 ①ディスプレイ、 ②レンダリング、 ③トラッキング の技術的な壁が大きく停滞してしまった。
■オキュラスを設立した天才ギーク、パルマー・ラッキーはVR技術にブレイクスルーをもたらし、誰もが開発しやすい環境と安価なVRデバイスが生まれた。
■2020年に発売された「クエスト2」が全世界で1000万台以上売れるなど、VR市場は成長を続けている。
第5章
■過剰な期待と急速な幻滅期を緩やかに経て一般化する 「ハイプ・サイクル」同様にVRの普及も進行している。
■VR市場において非日常体験としてのゲームイベント。 エロにはお金を動かす力がある。 しかしミーティングなど現状VRでやる必要がない事業を行う企業は多い。
■クラスター社は、現実の代替物ではなく、それ自体が独自の魅力を持つバーチャルイベントを多く実現することで利益を生み出している。
■バーチャルイベントのアーカイブ機能は一種のタイムマシンであり、過去の自分に出会うなどの現実では不可能な体験ができる。 メタバースで世界のすべてをアーカイブすることで新しい価値が生まれるだろう。
■現実同様メタバースも第1次産業 (アバターや3Dオブ ジェクトの制作)、第2次産業(第1次で生まれた価値の加工)、 第3次産業 (第1次と第2次に含まれないすべて)で分類できる。そのすべてでクリエイターの経済圏を発展させる必要がある。
■NFTによって実現したGameFiというジャンルのオンラインゲームでは、 Play-to-Earn (遊んで稼ぐ) ムーブメントが生まれた。 これがメタバースと掛け合わさったとき、現実世界の価値が地に落ちる可能性がある。
第6章
■コミュニケーションや情報発信は歴史的に見ても労力がかからない方向へ発展してきた。その最終形態が存在する だけで発信されるメタバースである。
■メタバース時代には身体表現もデフォルメされ、表情や全身の態度にもフィルターがかかるようになる。礼儀作法などの常識も塗り替えられていると予測される。
■メタバース・ファーストな都市において、リアル世界はメタバースで暮らすためのバックヤードとなり、都市ごとに機能は分化されているだろう。
■メタバースの本質的価値は現実世界で不可能なものを作れることにある。 メタバース上で他者との創造的なコラボレーションを学んだ子どもたちが活躍する時代がやっ てくる。
■メタバースにおける日本のストロングポイントは、 ①ゲーム産業のスキルセットを転用できる、 ②IP(知財)の強さ、③魂が遍在する日本特有のカルチャーである。
■モビリティの時代からバーチャリティの時代へ進み、石油からデータへと資源が移行した際、 データを生み出す源泉としての想像力・妄想力の価値が高まる。
新作って今年出るんかな。前作は2019年だった。