さっきアマプラ見てたら「ナラタージュ」が見放題になってました。
松本潤と有村架純。2017年の映画です。旧サイトからリライト引っ越し。
『物語は、大学2年生の春、主人公・工藤泉のもとに高校時代の演劇部の顧問・葉山貴司から電話がかかってくる所から始まる。高校時代、学校に馴染めずにいた泉を助けてくれた葉山から、演劇部の後輩の為に、卒業公演に参加してくれないかと誘われる。
卒業式の日の葉山との誰にも言えない思い出を胸にしまい、彼を忘れようとしていた泉だったが、一年ぶりに再会し、押さえていた気持ちが募っていく。叶わないとわかっていながらも、それでも抑えきれない葉山への恋心。葉山もまた泉への複雑な感情を抱えていた。やがて、大きな事件が起こり、ふたりの想いがぶつかりあったとき、それは痛みすらも愛おしい、逃れることができない恋となっていた』
結婚を前にした主人公の回想録です。
主人公の工藤泉(有村架純)は、人生で3人の男性と付き合います。
狂おしいほどの恋心を抱いていた高校の先生、葉山(松本潤)、泉のそういう気持ちを知りながらつきあい、苦しむ大学生の小野君、そして就職先で知り合って結婚することになった彼。
著者の島本理生は本作「ナラタージュ」を若干20歳で執筆しています。ナラタージュとは「回想録」のことです。
発表と同時にスキャンダラスな内容が話題となり、23万部を超えるベストセラーに。また2006年版「この恋愛小説がすごい」第1位、「本の雑誌」が選ぶ“2005上半期”第1位の作品。20歳でこんな恋愛小説が書けるのか。
ナラタージュ(小説)から気に入った部分
どこかで耳にしたことがあると思ったらシンディ・ローパーの「タイム・アフター・タイム」だった。「小野君、タイム・アフター・タイムって日本語でどういう意味だっけ」忘れてしまったような口調で尋ねたけれどじつは最初から意味など知らないくせに。黒川ならそう抜け目なく突っ込むところだろう。「何度も何度も、ていう意味だよ」「ありがとう」何度も、何度も。それはなんだか今の私みたいな言葉だ。
「僕は君が好きだ」絞りだすような声で彼は言った。「私も好きです。どうしようもないほど、あなたが好きです」今さらなにを言ってるのだろう。もうずっと、私は胸の中でそう言い続けてきた。「本当は、ずっと君のそばにいてあげたかった」私はふたたび彼の体を強く抱き寄せ「それが聞けただけでも十分です」
もっと好きに動いて、そう頼むと、彼は素早く首を横に振って「まだ、だめだ。もっと僕の知らない君を見てからだ」彼は私の腎臓、胃腸や心臓、そういった体に抱いたすべてが1つになってしまえばいいとでもいうふうに、強く体を合わせてきた。見上げていた白い天井から視界が一転して、枕に顔が押しつけられた。
強い前歯に背中のあらゆる部分を噛まれると、そこにも神経は通っていることを思いだす、胸や腹よりはずっと強いはずの場所、だけどかんたんに負けてしまう。
私はふいに怖くなる、この先もう誰と寝ても同じように満たされることはないのではないか。それとも今日この午後がすべてとなって、その余力で残りの一生を、セックスをもちこたえていくのではないか。・・・
「これしかなかったのか、僕が君にあげられるものは、ほかになにもないのか」「あなたはひどい人です」私は叫んだ。「これなら二度と立てないぐらい、壊されたほうがマシです。お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務がある」
MDコンポからはさっきからニール・ヤングの曲が流れている。彼の好きな1枚だった。音楽は部屋中に満ちて、気まずい沈黙の上に柔らかく覆いかぶさる。小野君はじっとうつむいていた。
⇒小野君との別れのシーンで、ニールヤングが流れます。ものがたりのクライマックスの1つです。むかし村上春樹の「ノルウエーの森」の最も印象的なシーンには、ビルエバンスのワルツフォーデビーがBGMとして流れていました。あんな感じのシーンです。個人的には、小野君の繊細さや別れのシーンには、ニールヤングの声質はあうと思う。
ナラタージュ(小説)の感想
ナラタージュの主人公は恵まれてますよね。結婚までに3回も大恋愛してる。
『生涯で3回大恋愛したら、ものすごく幸せな人生』とは誰の言葉だったか。吉本ばななか、林真理子だったか。20年ぐらい前に何かの本で読みました。この意味は昔はよくわからなかった。暖かい思い出がたくさんある人は、金持ちと同じぐらい満たされてるということか。
ヒトの遺伝子は、金銭の多寡によって幸福が決まるようにプログラムされていません。人が幸福を感じるのは、愛情空間や友情空間でみんなから認知されたときだけです。
お金を使って自分を磨いたり、みんなに与えたりして、まわりから認められ尊敬される。そういう場面を想像して楽しんでいる。
ノスタルジアについて。頭の中で過去に戻る能力は、人がアイデンティティを確立するうえで重要な役割を果たしています。人は過去を振り返り、それをよりどころにして個性を形成し人生の意味を見出す。
人は過去を振り返ることで自尊心を高め、自分の現状を受け入れる。ノスタルジアは安らぎをもたらす。
アメリカ・デンバー大学の研究。「10代でステキな恋愛を経験すると、精神的に安定した人生を送ることが、追跡調査で分かった」と。
お金がたくさんあると、楽しいことを想像して精神的な余裕ができます。
恋愛経験を中心としたたくさんの暖かい思い出は、これも精神を平穏に保つ。
金持ちと暖かい思い出いっぱいの人は、同じように心が満たされているのかもしれません。
コロナで恋愛の難しい時代になりましたが、みなさんも久しぶりに小説で恋愛を追体験されてはいかがでしょうか?