私小説のような短歌。というより短歌は私のことを詠むものかもしれませんが。
父親は明かされていませんが、シングルマザーの俵万智は現在石垣島に住んでいます。そういう背景を知って読むと、ぐっとくる歌が多い。不倫の歌、子どもの歌、シングルマザーの気持ち。あとがきによると足かけ9年の第五歌集だそうです。
教科書で正岡子規と同列で扱われているらしく、若い人からは故人と思われてる^^。短歌の流れを変えた、現代の与謝野晶子だと思うし、50年後は与謝野晶子のように扱われてるでしょうね。生き方が歌人です。
全341首の中から個人的に気に入った27首を以下に。
・冷蔵庫にオリオンビールある日々を悪くないさと過ぎる四十代
・一人では飲まぬ酒なりワインとは和飲あるいは輪飲と思う
・「鳴かぬなら鳴かんでええわホトトギス」平成の世を生きる息子は
・「ケンカしちゃダメ」と言いつつおさな子は蝶の交尾をほぐしておりぬ
・抱っことは抱きあうことか子の肩に顔うずめ子の匂いかぐとき
・本名とペンネーム並ぶ投稿歌ほぼ100%本名がよし
・連休に来る遊園地 子を持てば典型を生きることの増えゆく
・観覧車のぼりゆく午後 簡潔に母と子という単位を乗せて
・父親を兼ねたる我はゴーカートの運転をする葉桜の下
・子を抱き君の悪夢に出るという私は夜叉かマリアか知らず
・パパの波寄せ来るファミリー芋煮会 子は一日を泳ぎきったり
・「父の日の参観日には行くから」と言ってくれたじゃないの、おじおじ
・振り向かぬ子を見送れり振り向いたときに振る手を用意しながら
・この人の何を私は知っていて何を私は知らないでいて
・「オレのこと好きだったのか死ぬ前に言ってくれよ」と言われそうになり
・「このおじちゃんまた来る?」と子に聞かれおりミスターIはアルバムのなか
・火曜日の午前五時半永遠の着信履歴残して人は
・このメール読んでもらえたと思いたい「雨ですねまた来てくださいね」
・紫陽花の季節に逝けり返信のついになかりしメール一通
・いのちとは心が感じるものだからいつでも会えるあなたに会える
・性欲のこと聞かれれば女にもあると答えて時計をはずす
・潜水服脱いで我らは愛しあう即物的な生き物として
・レギンスに透ける素肌がいいと言う床を磨いている背後から
・我らいかなる対(つい)と見なされマスターの饒舌すぎる観光案内
・愛よりもいくぶん確かなものとしてカモメに投げるかっぱえびせん
・宿帳にしるされていし本名の君と見ている松島の月
・観覧車の歌口ずさむ秋の空 思い出じゃない一日(ひとひ)が欲しい
思い出のなかに byリトルリバーバンド
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