モノの値段って、なんでこんなに違うんだろう。
ワインなんか典型ですよね。本書には出ていませんが。
500円のアルパカと3000円のシャブリ。この1年で2回ほど家族で、シャブリとアルパカを飲み比べた。たしかにシャブリのほうが、酸っぱくなくて美味しい。みんな同意見です。飲み比べても間違わない。
だけどそこに6倍の価格差はあるのか?
客観的には2倍ぐらいが許容差ではないのか?という結論になりました。シャブリは美味い。だけどそれは、あるわずかな違いで、そこに6倍の差はない。500円ワインの品質が上がったから、そういうことが言えるのかもしれませんが。ユニクロが高品質だから、それでいいや!というのと同じかも。
ちなみにワインの価格差は「テロワール」が原因です。「テロワール」とは、ワインだけじゃなく、ぶどうを生みだす土壌とか気候みたいなものも、ボトルの中に封じ込められているという意味。
舌から伝わってくる味の先には、ぶどうを生みだした土壌である砂利、粘土、火山灰はもちろん、周辺に住んでる動物とか、土に棲息する虫とか細菌、その土地の人の性格など、あらゆるものが絡んで、複雑な味を形成する。
たとえばそのぶどう畑の周辺にキツネが棲んでいたり、鳥小屋があったりすると、意図せずとも土にキツネやニワトリのふん尿がまじる。またぶどう畑にハーブが生えてるとか、オリーブの木が植わってるようなこともある。そういうものすべてがワインの味に影響する。
一般的には「水はけがよい、やせた土地」が良いブドウ畑です。よいブドウ畑によいテロワール、限られた希少な土地で生産されるものは、希少であるがゆえに高価になる。
以下に本書から4つのモノの値段の違いについて。バナナ、万年筆、靴、ギター。
バナナの値段はなぜ違う。その理由は?
バナナの味と価格を決定するのは、栽培された標高の違い。
高地で栽培されたバナナは、寒暖差によってでんぷん質を豊富に含み甘く美味しい。これはバナナの大きさにも反映され、高地のものは張りがしっかりして太い。低地のものは短期間で収穫できるが、どうしても細くなる。高地で栽培されたものは、輸送費、人件費がかさむので、価格も高くなる。
一房100円のバナナはフィリピンの低地で栽培されたもの。一房298円のバナナは同じフィリピンでも高地で栽培されたもの。これにエクアドルなどの南米で栽培された198円ほどの価格帯で売られている3種が、現在の日本のバナナ市場の大半を占めている。
なおバナナは害虫を上陸させないため、青く熟していない状態で輸入するよう定められている。日本で黄色く熟成させてから店頭に出荷させる。急加温と急冷蔵によって5日で出荷する業者が多いが、美味しさを引き出すため7日かけてじっくり黄色くするものもいる。高地のフィリピンバナナも美味しいが、酸味のある中南米のバナナも美味しい。
1000円の万年筆と1万円の万年筆の違い
ステンレス製のペン先が1千円。金(au)製のペン先が1万円。筆記具のなかで、万年筆だけがもつ特性である「弾力」。この弾力を生み出しているのがペン先の形と素材。
万年筆が登場した当初、その素材は鉄が主流だったが、当時のインクがもつ「酸」によって、腐食するという問題があった。この腐食問題を解決し、しなやかな弾力を生み出すのがペン先の「金」。今に至るまで広く使われているが、どうしても高価になり、新たなユーザーを開拓しずらい状況にあった。
この点を解決しようとパイロットが開発したのが、ペン先がステンレス製の1千円の万年筆「カクノ」。パーツも限りなく少なくすることで値付けに成功し、新たな愛好者を開拓している。
エントリーモデル。「キチンとした安いもの」には、「高いものを買ってみたい」という気持ちを喚起させる力がある。「下手な安いもの」には、この力がない。
1千円の万年筆「カクノ」は「キチンとした安いもの」。著者いわく、本書で紹介されてる安価品ではベストだと絶賛。著者も本書の企画で知って、愛用はじめたそうです。
「カクノ」の中字。買っちゃいました。著者があまりにもほめるんで、つい買っちゃった。人に影響うけやすいタイプ(笑)。20年前の安価な万年筆に比べると、ペン先がしっかりして硬い。万年筆初心者は、細字より中字がいいようなので中字をチョイス。ジェットストリームでいうと0.7~1.0ぐらいの太さ。
インクは赤にしました。業務連絡を赤ペンで書いて渡すことが多いので、よく使います。ラッションペンとか赤えんぴつ使ってましたが、万年筆に昇格です。なんか優雅。
黒の筆記具はたくさん持ってる。黒インク買ってもたぶんつかわない。いまは、えんぴつは「ハイユニ」、シャーペンは池上彰絶賛の「プレスマン」、ボールペンは老舗の「モンブラン」、お手軽ボールペンはみんな大好き「ジェットストリーム」。その時の手の疲れによって、ジェットストリームとモンブランを使い分けてます。重みや摩擦がほしいときはモンブラン、軽さと滑らかさがほしいときはジェットストリーム。選び抜いた筆記具なんですが字はミミズ。後で読めないことがおおいです(笑)。
3万円の革靴と6万円の革靴の違い
日本製の革で作れば3万円の靴。フランス製の革で作れば6万円。革靴の価格を決定づける最大の要因は、素材の革にある。1足6万円の靴には、3万円の靴にはない「つや」と「きめ」の細やかさがある。これは革の質の差。
革靴には繊維がしっかりして「きめ」が細かい「カーフ」と呼ばれる仔牛の皮が最適とされるが、この良質の原皮は、皮革業が地場産業であるヨーロッパのタンナー(なめし業者)が買い占める。
そのため、どうしても西洋の革で作ったものが上質になるという。
ギターの価格差
1本4万円と60万円のギターの違いの一つに、ボディを形成する木が「合板」か「単板」かが挙げられる。
木を重ねてつくる合板のボディは安価で丈夫だが、接着剤の影響もあって弦から出た音の伝導が損なわれてしまう。一方単板は高価だが、このような音のロスが少ない。
また4万円のギターは大量生産されているのに対して、60万円のギターは職人によって細部まで作り込まれており、この人件費の違いも価格差の大きな要因。
高価なギターはボディや指板の素材はもちろん、ペグと呼ばれる弦を巻くパーツも上質。ギターを見慣れた人は、このペグの品質だけで価格の見当がつくという。
スティーリー・ダンでペグ♪
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