もはや暴力団には人権がない。
ヤクザになると銀行口座は持てず、保険にも入れず、公営団地からは追い出され、賃貸物件も借りられない。生活保護はもらえず、児童手当も対象外なので偽装離婚がやたらと増えてるそうです。
久々に読んだ鈴木智彦の本。以下に5つだけ読書メモを。
タピオカはなぜ増量無料なのか?
ブームの影にはフロント企業あり。ぼろ儲けできる商売にフロント企業は群がる。
「原価は1杯で20グラム使うとして6円。これほど楽に始められる商売はない。技術が不要だし開業コストもかからない。店舗は5坪程度あれば十分でジューススタンドほどの広さで足りる。乾燥タピオカを戻したり、牛乳や紅茶を沸かすためのスペースや道具さえあればいい。200万程度の資金開業できる」
タピオカはネットを使い海外から調達。主力商品のミルクティは最初、格安のイオンオリジナルブランドを使っていたという。
「ミルクティは1杯15円程度の原価。今は繁華街はどこも激戦区なので、ちゃんとした茶葉を買ってミルクを注いで、それなりの手間をかける。それでも原価は30~40円。茶葉よりタピオカが安いのでタピオカ増量無料をアピールしてる。客の9割は増量を選ぶし、店は茶葉の節約になって一石二鳥」
今はブームも落ち着きトレンドではなくなったが、ヤクザ系タピオカ屋はしぶとく生き残っている。
ヤクザと外国マフィア、どちらが強い?
総じていうと、現在は両者の間に共存共栄の取り決めがなされている。
だが、ひとつの組織が一帯の縄張りを独占しているような地方都市では、マフィア勢力との交わりを厳禁としている組織も多い。
たとえば九州の某独立組織では、どんな形の交流でもマフィアとの接触が発覚すれば絶縁処分になる。強硬派の主張は、マフィアたちを許せばいずれ母屋を取られるというものである。そのため縄張り内では強硬な手段でマフィアを排除している。
「だまっていれば、あいつらはのさばるだけだ。もちろん実力行使。死体があがれば別だが、あいつらをいくら痛めつけても訴えられることはない」
だがその一方でこうしたマフィアと密かに連携している人間がいる。
外国人犯罪の現場に直接タッチしていなくとも、二次的にヤクザが絡む。カード詐欺、故買、盗難、オレオレ詐欺など、今までのヤクザなら恥とするようなシノギでも、間接的にしか関与していないため、感覚が麻痺するのかもしれない。
こういった形でマフィアとつながりのある人間たちの主張は、いたってシンプルだ。「じゃあ、どうやって食っていけというんだ。俺たちは盗みをやってるわけじゃねえ。ヤツらの持ってきたものをさばいてるだけだ。それがどんな素性のものだろうと関係ない。 綺麗事をいう ヤツらは、太いシノギを持ってるんだろうよ。だが、そうじゃない人間もたくさんいる。余計なお世話だ」(都内の盛り場に中国系グループと深くつながっている広域組織三次団体幹部)
不良外国人たちの「食うためなら何をしてもかまわない」という考えに共通している部分があ り、他人を養分としか思っていないサイコパスのような暴力団も多いので、大同小異だろう。
外国マフィアによって、ヤクザ社会は真っ二つに分断されている。 強硬派と共存派の双方にそ れなりの理屈と譲れない大義があって、両者の考えはどこまでいっても相容れないのだ。
外国マフィアたちは、これまで表面化しなかったヤクザ社会の構造的な矛盾を浮き彫りにした。 表社会同様、裏社会も外圧によって構造改革を迫られているのである。
なぜ日本で覚せい剤はつくられないのか?
現在日本で流通している覚せい剤は100%海外からの密輸品だ。精製にはそれほど高度な化学知識は必要ではない。しかし大がかりな設備が必要になるからやっかいだ。
とくにその過程で発生する熱と悪臭の対処は難しく、一般の住宅で行えばすぐに悪事が露呈する。昭和50年代ヤクザたちは独自の精製工場を作ろうともくろみ、人里離れた場所で実際に精製を試みたが、田舎になればなるほどすぐに噂のタネになり、どうしても中途半端な施設しか作れず、計画のすべてがとん挫した。
国内製造に見切りをつけたヤクザたちは、海外ルートの開拓に力を注いできたのである。
ソープランドとヤクザの親密な関係
「悪いことして稼いでるんだから”カスリ”は払ってもらいますよ、ということ。用心棒ってこ とじゃない。 ソープが合法なら、ヤクザの博打だって認められて当然なわけで、同じ穴のムジナ なのに、片方が合法で、もう片方が違法という不公平がまかり通っている。だったらソープの上がりは、ワリを食ってる者で分配するのが道理ってもんだろう」(広域組織二次団体総長)
ソープランドにはこうしたイチャモンをはねつけられない弱みがある。明らかに管理売春を行 なっているからだ。 ヤクザの独善的論理からすれば、寄生して当たり前の対象といっていい。
カスリは店の料金によって違うが、入店料とサービス料の合計金額のざっと1割がヤクザの懐に入るという。総額2万円の大衆店なら2000円。5万円の高級店なら5000円。 街頭で客を拾う街娼、俗にいう「立ちん坊」は、上がりの半分をヤクザに持っていかれるから、それと比較すればずいぶん安い。
「こういう仕事をしていれば、しかたないことだと思ってる。私たちが直接払うわけでもないし、 普段は特別意識したことなんてない」(東京・吉原のソープ嬢)
歌舞伎町などでは、自転車に乗って立ちん坊から所場代を徴収して回るヤクザの姿をよく見か けるが、売春婦に聞いてみると、店にガジられるか、ヤクザにガジられるかの違いで、特段、ヤクザに搾取されているという意識はないらしい。
最近では、警察の圧力は強くなる一方で、合法のファッションヘルス店などは、かなりの者がヤクザにミカジメ科を払わないようになっている。ただし、ソープランドのように実態が非合 法の業種は、完全にはヤクザとの縁を絶ち切れないだろう。また、表面上は禁止されているはずのヤクザによる売春婦のスカウト・斡旋も、現実にはいっこうになくなっていない。 ヤクザが女を世話した場合、その女が売春を続けている間は継続して一定の金がヤクザに入る。
もっとも、ヤクザにはかなりの危機意識があって、今後は警察の圧力がいっそう厳しくなると 見ている。経営者たちも、暴力団と手を切りたいので警察と連携するようになっている。
ヤクザの入れる保険とは?
車の任意保険は、ヤクザであっても問題なく加入できるという。全国で暴力団排除条例が施行された直後は、暴力団員の加入を断ったらしいが、交通事故を起こしたときに被害者が困るので、暴排条例の適用外となったらしい。ただし、実際に事故を起こした場合は、厳重なチェックが入る。今は少なくなったらしいが、事故をシノギにするのは、ヤクザの定番収入だった。保険会社もヤクザは怖いが、あまりに怪しい事故が多いため、今は弁護士を雇い入れ、専門の暴力団対策部をつくっているという。
『気に入った車でも、数年乗ってりゃ飽きてくる。昔の親分たちはたいてい保険をかけ、海に沈めていた。ヤクザがこぞってベンツを沈めるため、そのうち、うちの近所の岸壁は「ベンツ海岸」なんて呼ばれたもんだ』(広域組織幹部)
科学の進歩もあり、今はかなりの確率で故意に起こした事故を見破ることができるうえ、相手がヤクザだと、裁判所が無条件で保険会社の主張を支持するようになった。
もはや今までのような無軌道は通らず、相手の過失がチャラになってしまう事例が増えたため、ヤクザたちも車両保険の利用には慎重だ。
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