日本は富裕層の税金が安い。税負担率が先進国で一番低い。

現在の非正規雇用のほとんどは将来、生活保護受給者になる。

日本の非正規雇用者は2000万人を超えているが、この人たちのほとんどは、まともに社会保険に加入していない。彼らが高齢者になったとき、ほとんどの人の年金の額は生活保護以下だとみられている。

彼らは老後どうやって生活するのか?

おそらく生活保護受給者は、そう遠くないうちに1000万人を突破し、20年後には2000万人を突破する可能性もある。

これらを解決する手段はあるのだろうか?

ある。まずは以下の事実を国民が共有することが大切だ。

本当は日本にカネは十分にある

今の日本は1000兆円の財政赤字を抱えているが、2000兆円にもおよぶ巨額の個人金融資産がある。赤ん坊から年寄りまで、国民1人当たり1500万円以上の金融資産を持っている。4人家族なら6000万円だ。

「うちにはそんな金融資産はない」と思う人も多い。この2000兆円は、一部の富裕層が握っているからだ。

また企業は450兆円もの内部留保を抱えている。これはダントツの世界一。

つまり今の日本はカネのあるところと、ないところの差が極端なのだ。ふつうに考えて、「国はカネがないけど、富裕層や企業はたくさんカネを持っている。ならば富裕層や企業から税金を取ればいい」という話になるはずだ。

しかしそうなっていない。日本は国民全体に負担のかかる「消費税」や「社会保険料」などを上げてきたのだ。



富裕層の減税政策で、最悪バランスの国になった

この20年の間に高額所得者の税金はピーク時に比べて40%減税された。信じがたい。

所得が1億円の人の場合、1980年の所得税率は75%だった。86年に70%、87年に60%、89年に50%。そして現在は45%まで下げられた。

また住民税の税率もピーク時に18%だったものが今は10%となっている。

このため最高時に26.7兆円あった所得税収は、2019年に19.9兆円にまで激減している。

金持ちは元からいい生活をしているので、収入が増えたところでそれほど消費には回されない。だから減税されればそれは貯蓄に向かう。

だから財政赤字1000兆円、個人金融資産2000兆円という最悪バランスの国になってしまった。

富裕層の実質税負担率はフリーターより安い

日本の富裕層は優遇されてない、高い税金を払っている、というのは全くのデタラメ。

たしかに日本の所得税率は世界的にみて高い。所得税と住民税を合わせた富裕層の最高税率は55%。先進国ではトップクラスに高い。しかしこれにはカラクリがある。さまざまな抜け穴があり、名目は高いが実質的な負担税率は驚くほど安い。日本の富裕層は先進国でもっとも税金を払っていない。

年収5億円の配当収入者 年収200万円のフリーター
所得税、住民税 約20% 約6%
社会保険料 約0.5% 約15%
収入に対する消費税負担率 約1% 約8%
合計 約21.5% 約29%

日本には配当所得に対する優遇制度がある。どんなに配当所得があっても所得&住民税合わせて一律20%収めればよい。これは小泉内閣時代の経済政策。富裕層の収入は持ち株の配当が多いので、大半の富裕層が恩恵を受けている。

所得1億円までの人は税率が上がってが、1億円を超えると急激に税率が下がる。所得1億円の人の負担率は28.3%だが、所得100億円の人の負担率は13.5%だ。

社会保険料の負担でも金持ちは優遇されている

今、国民の多くは社会保険料の高さに苦しんでいる。社会保険料は年々上がり、税金と社会保険料を合わせた負担率は約50%にのぼっている。これは実質的に世界一高いと言える。

社会保険料は原則として収入に対して一定の割合。厚生年金の場合は約18%だ。

しかし社会保険料には上限がある。たとえば国民健康保険の場合は、介護保険と合わせて約100万円だ。いくら収入があろうが100万円以上の保険料を払わなくていい。

日本の金持ちの税負担はアメリカの半分以下だ

日米の税率比較

最高税率は上表の通り日本の方が高い。しかし実際に払われた税額を見ると、日本の所得税収はアメリカの10分の1以下しかない。

日本の経済規模はアメリカの4分の1なので、あきらかに日本の所得税収は低すぎる。経済規模を考慮しても、日本の所得税収はアメリカの半分以下と言える。

アメリカは収入のある人のうち46%は低所得ということで所得税を免除されている。日本は20%だ。貧者に厳しい。

またアメリカは、高額所得上位10%の人が税収の70%を負担している。約140兆円だ。

名目税率は日本の富裕層の方が高いのに、実際の税負担はアメリカの半分以下。

またアメリカは寄付文化。寄付金額は年間20兆円規模。20兆円というと日本の国税収入の約半分だ。それが慈善事業などにまわる。



もし日本の富裕層がアメリカ並みの税金を払えばどうなるか?

アメリカの所得税の収入はGDPの7%前後なので、もし日本もそれくらいの税収になれば、500兆円x7%=35兆円である。

今より20兆円も税収が増える

20兆円というのは、消費税の税収とほぼ同額である。

つまり日本の富裕層が当たり前に税金を払っていれば、消費税は不要なのだ

日本の金持ちの税負担率は先進国で断トツに低い

アメリカに限らず、他の先進国と比較しても、日本の富裕層の負担は非常に低い。

日本の税負担率。国際比較

国民全体の所得のうち、所得課税されている割合。

個人所得税というのは、先進国ではその大半を高額所得者が負担している。国民全体の所得税率負担が低いということは、すなわち「富裕層の負担が低い」ということを表す。

富裕層の社会保険料負担を増やせば年金問題はすぐ解決

富裕層の社会保険料の負担率を他の人と同じ率に引き上げれば、年金の財源などはすぐに賄える。

概算で5~10兆円は上乗せできる。現在の年金保険料収入は33兆円なので、一挙に2~3割増しになる。

豊かな生活を続けたいなら金持ちは多くの税金を払うべき

昨今の日本で言われる「自己責任」。

たしかに金持ちは努力しているが、自分だけの力で金持ちになったわけではない。日本の社会の恩恵をもっとも受けているのは富裕層だ。

社会のインフラが整い、質の高い労働力、豊かな中間層がいるからこそ企業は日本で発展することができた。勝手に起業して勝手に大儲けしたわけではない。

世界的、歴史的にみても、貧困者が増えると社会の治安が悪くなる。貧富の格差がエスカレートすると、紛争、革命、戦争に結びつきやすい。社会の安寧上いろんな問題が生じてくる。

だから富裕層に多くの税金を負担させ、それを貧しい人に分配することで、社会の安寧を保とうとする。このシステムは人類の長い歴史の中で経験則として作られたものだ。

これ以上貧富の格差が拡大し貧困層が増えれば、治安が悪くなる。

「富裕層の税負担率がフリーターより低い」というような現状は、貧富の差はさらに広がる。

富裕層は今の豊かな生活を続けたいのであれば、今の社会を守る努力をしなければならない。なぜなら富裕層は今の社会で誰よりもいい思いをしているからだ。

金持ちを食え♪

Aerosmith – Eat The Rich (Official Music Video)

本記事は以下の本からのメモです。日本が変わるには、日本の富裕層に先進国並みに税負担させる政党つくって、そこにみんなが投票すること。多数決したら絶対ぼくらが勝つんやけど。だれか志のある人で出てこんかな。

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