サイコパス=精神病質。パッと思い浮かぶのはハンニバル・レクター博士でしょうか。
本書によると、スティーブジョブズ、ジェームズボンド、聖パウロなんかもサイコパスだそうです。サイコパシーは極端に高水準でも低水準でも適応性がなく、中間レベルが最も適応性があると。高水準のほうは不安ゼロでトラブルに巻き込まれやすく、低水準のほうは強い不安で衰弱する。
CEO、精神患者、犯罪者を対象にした2005年の心理プロファイルテストによると、いくつかのサイコパス的特性⇒表面的な魅力、自己中心性、説得力、共感の欠如、独立心、一点集中力は、じつは精神障害のある犯罪者より企業のリーダーのほうによく見られ、両者の主な違いは、違法行為、身体的攻撃、衝動性だったようです。両者は質的に違うのではなく、同じ神経心理学的連続上にあるけど、その度合いと組み合わせが違うだけという。
やっぱりキチ○イと天才は紙一重なのか。
著者はケヴィンダットン。67年ロンドン生まれ。オックスフォード大学実験心理学部教授。この分野の第一人者のロバートヘアの元を訪れたり、凶悪犯の収容されている施設に行き第一級のサイコパスと対面したり、経頭蓋磁気刺激法(TMS)と呼ばれる技術の力で短時間サイコパスに変身したり(万能感のようなものを味わえるようです)、体当たりの一冊です。
以下に読書メモを。
目次
人口の14%は人格障害抱えている。
人格障害を話題にするときは慎重を期す必要がある。誰だってひとつくらい抱えてるはずだから。人口の14%が人格障害を抱えているとみられるため、そもそも「障害」と呼ぶべきかどうかという疑問が生じている。実際には「多様な人格のひとつ」と言うべきではないのか。
チンパンジーと藤原道長は同じだった。
チンパンジーの世界では「優位にあるものが取り分で突出するのではなく、仲間に分け与えるもので自分の地位を主張する」自分がしとめた獲物を気前よく仲間に分け与え、仲間がしとめたものを取り上げ再配分する。
⇒藤原道長がそうでした。貢物が彼に集中する。それをいろんな関係者に再配分する。その配分が絶妙。こまかく数量や色まで指示する。
リーダーの特質とサイコパス特質の相関関係
(リーダー的特質) ⇒ | (サイコパス的特質) |
カリスマ性 | うわべの魅力 |
自信 | 誇大妄想 |
影響力 | 他人を操る能力 |
説得力 | 詐欺のテクニック |
先を見越した考え方 | 込み入った作り話を考える |
リスクを負うことができる | 衝動性 |
行動本位 | スリルを追い求める |
難しい決断ができる | 感情に乏しい |
リヴァイアサンは性悪説か。
1651年トマスホッブスが著書リヴァイアサンで最初に、人間はトップダウン式の国家がなければ、大して苦もなく残忍な野蛮人集団になる、と主張した。
⇒ホッブスは性悪説ですか。
サイコパス度が高い職業とは?
サイコパス度が高い職業 | サイコパス度が低い職業 |
1CEO | 1介護士 |
2弁護士 | 2看護士 |
3報道関係 | 3療法士 |
4セールス | 4職人 |
5外科医 | 5美容師 |
6ジャーナリスト | 6慈善活動家 |
7警察官 | 7教師 |
8聖職者 | 8クリエイティブアーティスト |
9シェフ | 9内科医 |
10公務員 | 10会計士 |
魅力とは何か? サイコパス犯罪者へのインタビュー
魅力とは、
「我慢ならないやつを丁重にもてなして、一気に、順調かつ効率よく自分の思い通りに動かせるようにする能力」
「こちらの出方次第で相手はいくらでもいい人になり、そうなれば相手をかなり意のままに支配できる」
勇気とは何か? サイコパス犯罪者へのインタビュー
みんな勇気が必要だと思ってるが、それはおれが自然にやってるレベルに達するためじゃないのか。それを美徳と呼びたけりゃ呼べばいい。でもおれに言わせりゃ、生まれながらの才能だ。勇気なんて単なる感情のドーピングだ。
成功するサイコパス要因
非情さ、魅力、一点集中力、精神の強靭さ、恐怖心の欠如、マインドフルネス、行動力
聖パウロはサイコパスだった。
イエスが処刑されたあと、無数のキリスト教徒の殺害に手を貸した。現在だったらジュネーブ条約の規定で大量虐殺の罪に問われるレベル。その後ダマスカスに向かう途中、幻視のなかで(てんかんと考えられる)交わした会話が、パウロを残忍で無慈悲なテント職人から、西洋史上最も重要な人物のひとりにした。パウロは新約聖書の半分を書いた(新約聖書を構成する27の書簡のうち14の書簡がパウロのものとされる)。
パウロは間違いなくサイコパスだった。地中海で三度も難破を経験し、一度は24時間も漂流している。自分の身の安全にまったく無頓着な男だ。自分の過ちに気づかない(気にかけない)常習犯。
布教活動中に何度もとらえられ投獄された期間は6年。鞭打ち刑を5度受け、3度は棒で殴られた。一度は石を投げられ死んだものと思われ、風習どおり都市の外に引きずり出された、その後パウロは起き上がり再び街に入った。普通だったらたった今殺されかけたのに、再び平然とその町に戻っていけるだろうか。
全英オープン優勝の秘密
2010年セントアンドリュースの全英オープンで、南アフリカ出身のルイが優勝した。決勝ラウンドのプレッシャーをはねのけた秘訣は意外なほど単純だった。グラブの親指の付け根のすぐしたのところに、小さな赤い点が目立つように打ってあったのだ。
これを思いついたのはスポーツ心理学者カールモリス。モリスはルイに請われた。結果に執着するのではなく、そのときの一打に意識を集中できるようにしたいという。モリスはこれからスイングするというとき、冷静沈着に、かつ着実に、赤い点に注意が向くようにした。ルイの赤い点はスポーツ心理学でいう「プロセス目標」の典型的な例。どんなささいなことでもいいから何かに集中させて、選手にほかのことを考えさせないようにする。
ゴルドベルグ変奏曲のアリア。レクター博士はグールドの55年版が好みだろうと勝手に推測。手元のグールド、55年版と81年版を聞き比べてみました。あれ?どちらとも違う。サントラの演者を調べるとJerry Zimmerman という人だそうです。