・子を連れて西へ西へと逃げてゆく 愚かな母と言うならば言え
仙台に住んでいたシングルマザーの俵万智は、3・11のあとに7歳の息子を連れて、沖縄の石垣島へ引っ越しました。どこに住んでいても仕事のできる作家なら、そういう選択はありなんでしょう。思わずグッとくる歌です。
280万部売れたサラダ記念日は、今の40代以上は多くの人が読んでると思います。口語短歌が多くの人の共感を呼びました。
・この曲と決めて海岸沿いの道とばす君なり「ホテル・カリフォルニア」
・「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの
・ひところは「世界で一番強かった」父の磁石がうずくまる棚
彼女のお父さんは希土類の世界的な学者で、一時期世界で一番強い磁石を作ったそうです。前に読んだ「理工系のための明日への教科書」に、彼女のお父さんの偉大さが書かれていました。ところで娘さんは歌人でとか続いて、え、そうなの~という展開だったような。
彼女は30代で不倫をし、その気持ちをチョコレート革命で歌っています。
・水蜜桃(すいみつ)の汁吸うごとく愛されて 前世も我は女と思う
・一枚の膜を隔てて愛しあう 君の理性をときに寂しむ
・抱かれることから始まる一日は 泳ぎ疲れた海に似ている
芸術家には、不倫も芸の肥やしになりますね。
「3・11短歌集あれから」から他に気に入った歌を。
・空腹を訴える子と手をつなぐ 百円あれどおにぎりあらず
・ゆきずりの人に貰いしゆでたまご 子よ忘れるなそのゆでたまご
・まだ恋も知らぬ我が子と思うとき 「直ちには」とは意味なき言葉
・世話になる人に頭を深々と 下げる七歳板につきたり
・「家」という漢字を使う例文に 「じぶんの家に早くかえりたい」
・近海もの国産ものを避けながら 寂しき母の午後の買い物
・今のおまえをとっておきたい 海からの風を卵のように丸めて
・「オレが今マリオなんだよ」島に来て 子はゲーム機に触れなくなりぬ
この前尾崎豊の「NOTES 僕を知らない僕」という、尾崎の膨大な創作ノートの本を読みましたが、芸術家と言うのは日常を感性というフィルターを通して、芸術(この場合は詩)に昇華させることができるんですよね。
俵万智の場合も、青春、不倫、子育て、災害を芸術へ昇華させています。
彼女のあとがきから「あの日以来、多くの人が考えたことだろう。自分にとって、一番大切なものは何なのかと。母親である私には、少しでも安全な場所へ子供を連れていきたいということしかなかった」
西へ行こう そこは平和な土地♪
西へ行こう そこは自由な雰囲気♪
西へ行こう 君と僕とで♪
西へ行こう それが僕たちの運命♪
原曲はヴィレッジピープル。ゲイムーブメントのさなか、西とはサンフランシスコを指しています。この前カラオケで歌ったらエライ盛り上がりました。
ペットショップボーイズでGO WEST♪